えんぴつぴえん
儚いです。えんぴつ
使えば使うほど、どんどん命が減っていく。目に見えて減っていく。
今の時代は文字を書くにしてもパソコン。紙に書くことがめっきりなくなりました。ただ僕はまだ紙のノートによく書きます。脚本のお話を創るとき、まずアイディアを出す作業はノートに書くのです。
だからペンも使います。ずっとボールペンで書いていました。しかし半年前にふと、1ダースえんぴつを買ってしまいました。それがえんぴつとの出会いです。
小学生以来でしょうか?久しぶりと声をかけてきたえんぴつは、あの頃と何ひとつ変わっていませんでした。びっちりと隙間なく箱に12本。その箱に窓が開いていて、そこから茶色の体が少し見えて。
箱から出してみると、あの懐かしい六角形が。転がらないように。持ちやすいように。ほんとにそうなのかはわかりませんが、そんなことはどうだっていい。僕は鼻と唇の間にえんぴつを乗せて、うーっと口をおちょこにして、えんぴつと戯れました。
久しぶりの再会を少し楽しんだ僕は、使用してみようと思いました。ポケットサイズのえんぴつ削りにさして、ゆっくり回しました。気持ちいい音とともに先端がやんちゃに尖ってきました。そこから黒い芯がひょっこり現れました。
書きました。
はっきり言うと扱いにくいです。落としたら芯が折れるし、まめに削らなきゃいけないし。
それに比べてボールペンはいいです。芯は折れないし、手のサイド側が汚れないし。高いものもあれば安いものもある。インテリア感も出せる。
でもえんぴつ。
芯が丸出しなので、その辺にポンと置いとくのがすごく気になってしまう。机から落ちやしないか。もう危なっかしい。でもそこがまた愛おしい。
そして名前が可愛らしい。
えんぴつ。
鉛筆よりえんぴつと書きたい。「ぴ」が可愛い。そうなると次の「つ」が「ぴ」の余韻をうまく引き継いでいる。そして「ぴ」の前の「ん」。これは「ぴ」に向けてジャンプする前のひざを曲げる感じの「ん」。「え」は割愛させていただきます。
このえんぴつが今、かなり短くなっている。もうそろそろ持てなくなってきそうだ。細くなってきたようにも見えてしまう。
もう削らないで置いておこうと思いましたが、やっぱり使われることがえんぴつにとって幸せなのかなと。
いつもよりゆっくり削ります。そしてあまり芯を尖らせないように。
寿命がはっきり目に見えるって悲しいですね。
えんぴつや、ろうそくもそうだし、線香なんかも、あと消臭剤の液。あと少しで終わってしまう時ってなんとも儚いです。
だからこそありがたみも感じます。
えんぴつを買って約半年。まだ11本もあります。まだ5年は使うことになります。そう思っちゃうとありがたみって薄れますね。
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