no title2

「あっつい!」
真夏かと間違えるくらいの蒸し暑さ。その熱が、じりじりと私の全身を焼く。頬が真っ赤になると同時に、私が手に持っているソフトクリームが同じ速度で溶けていく。
「ほら、べとべとじゃん、早くしないと汚れるよ」
「もう汚れてるし、いいもん」
にやりと彼が笑う。彼のこの余裕のない表情がすごく好きだ。この顔がもっと見たい。が、今の私には、この今にも私の手に滑り落ちてきそうな真っ白いソフトクリームをどうしてやろうか、その方が先だ。液状になったソフトクリームが私の手につこうとした瞬間、私はソフトクリームを口いっぱい頬張った。ぬるい。真っ白いソフトクリームは、ぬるくなった途端にもったりとした甘ったるい液に変わる。
「もうやだ、いらない」
私はその甘ったるさにとうとう我慢できなくなった。
「お前が欲しいって言い出したんだろ、だから言ったのに」
確かにこのソフトクリームが食べたいと言い出したのは私だ。だってこんなにべっとりするなんて思わないじゃん。美味しそうに見えたんだよ、ちょっと前の私には。そんなの、食べてみないと分かんないじゃん。そう言ったら、お前らしいなと、またあの笑顔で笑った。それが嬉しくて、私はもう一度、少し白い液体が垂れたソフトクリームを口に入れた。
「お~、偉い偉い」
口の奥を流れるぬるい液体が口の中を支配していて、私はむせそうだった。それでも私は気づかないふりをして懸命に舐め続けた。舐めて、ソフトクリームの、私の唾液がべっとりついている箇所を口に思いっきり含んだ。彼がまた、にやりと笑みを浮かべる。
「食べるの、上手」
褒められた私は嬉しくなって、さらに勢いをつけてソフトクリームを頬張る。口の周りがべとべとする気がしたけれど、構わず食べ続けた。
「・・・口、ついてるよ」
私はソフトクリームから口を離し、でもしっかりと握ったまま、上目遣いで彼を見た。彼は私の口の周りについているソフトクリームを、ティッシュで拭き取った。
「どうせまた汚れるのに」
「・・・お前のそういうとこ好きだよ」
私とお揃いの、真っ赤になった頬を気にせずに、彼はにやりと笑った。
(あいみょん「満月の夜なら」から。)