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ゆうらん船『MY REVOLUTION』雑感

今、私たちはきっと出口の見えない場所にいる。そもそも出口がどんな形なのかも分からない。ただずっと完全に晴れることのない霧の中を歩く様な日々だ。
深刻そうな顔をして、気軽に笑ったり、声をあげたり、誰かに触れたりしない様に気をつけながら生活する。それは自分や相手を守る為に必要で、そうして暮らしても問題は無い筈なのだが、静かに心や魂が死んでしまいそうだと思うことがある。

ゆうらん船が『MY REVOLUTION』という名前の新しいアルバムをリリースした。
彼らがLIVE中のMCで新譜のことを「踊れるアルバム」と話していたので、勝手に明るいイメージのアルバムなのかと思っていたが、発売直前の渋谷wwwでのLIVEでアルバム1曲目の『Waiting for the sun』を聴いて、それは恐らく間違いであると気付いた。
太陽を待つ曲であるのに、この曲自体が昇りゆく巨大な太陽の様だ。ずっしりとした質量を保ったまま、ゆらゆらと周りの空気を揺らしながら、徐々に徐々に幕があがっていく。ドキドキする。

この曲に限らず、今回のアルバムではひとつひとつの曲に沢山の音が重ねられている。
しかしながら、繰り返し聴いていても息苦しさは感じない。何故なのだろうか。
Waiting for the sunでも音の厚みや重みは感じるが、同時に風が通り抜ける様な感覚がある。
ピアノの音、掌が皮を弾くパーカッション、シェイカーのリズム、シンセの火花の様な瞬き、基盤となる音の上に散りばめられたそういう光る音たちが風となっているのだろうか。

2曲目の『Flag』を初めて聴いたのはイタルさんの弾き語りだった。その時はどこか若い、青い香りの曲だと思って聴いた。しかし、バンドアレンジになりアルバムに入ったFlagを聴いた時、この曲は私よりもずっと大人に思えた。
この曲を聴くと、何となく今の自分のことを歌ってくれている様な気がしてしまうのだけれど、もしかしたらこの先どういう状況で聴いてもそう思わせてくれる曲なのかもしれない。
背中にそっと手を置いてくれる様なボーカルと、下からそれを支えてくれる演奏が大丈夫だと教えてくれる。

私たちは誰かに自分を渡さなくていい。
どんな状況下にあっても自分らしく生きていい。
落ち込んでも、笑っても、愛してもいいのだ。
今の私にはそう聴こえた。

まだ2曲分しか書けていないけれど、多分全曲これ位の熱量で書いてしまうから、今日はこの辺りで終わりにします。 

素晴らしいアルバムをありがとう。
ゆうらん船の音楽は、私にとってこれから先出来るだけ長く一緒にいたい音楽です。特別。

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