レヴュースタァライトを観ると緋田美琴の解像度が上がる

この文章は、元々あった文章に思いつくままに加筆を行っている怪文書です。
ご承知の上でお楽しみください。
また、性質上ネタバレを含みます。


レヴュースタァライトという作品をご存じだろうか?

アニメと舞台演劇を主軸としたメディアミックス企画であり、劇場版と舞台#3が公開され、物語の一区切りがついたところである。


緋田美琴とは

緋田美琴は、シャニマスに追加されたユニット『SHHis』のメンバーである。

彼女は他の事務所に所属していたことのある元アイドルで、「カミサマ」と呼ばれるカリスマアイドル斑鳩ルカと因縁がある。

「歌やダンスの実力」で認められたいと強く思っており、その実力は同業者からも太鼓判を押されるほど。

スタァライト文脈とSHHis(緋田美琴)

普通の喜び。女の子の楽しみ。全てを焼き尽くし、遙かなキラめきを目指す。それが『舞台少女』。

アニメ レヴュースタァライト 第一話『舞台少女』

彼女たちにとっては一瞬一瞬が自身の未来を決する時間であり、ひりひりとおのれの身を焼くものであるはずで、そうして必死に生きているということの証拠/記録として、彼女たちの切迫感はしっかりと伝えてあげたいなと考えていました

アイドルマスターシャイニーカラーズ シナリオブック 『ノー・カラット』に関するインタビュー

 己の存在の全てを焼き尽くすほどの情熱を持って、舞台の上で生きて死ぬ。そういった生き方を強く描かれているのが、SHHisである。
 私はSHHisの物語に舞台少女のような生き様を感じた。

緋田美琴は『スタァライト』できない

 私は高校時代に演劇論やら舞台のあれこれを軽くかじったくらいの人間であるが、舞台版スタァライトを観ていて思ったことがある。

アンサンブルの人たち、凄くね?

 アンサンブルとは、主役以外のある種「モブ」の役だが、その舞台上における効果は計り知れない。

 特に舞台スタァライトでは、キレのあるダンスとダイナミックな殺陣を行う「コロス」役としてレヴューシーンを盛り上げる重要な役割だ。こういった役にはダンサーがなることも多い。

 そういった人たちから

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ダンサーから絶賛される美琴

 こういうレベルで評価されているのが美琴である。

 しかしながら、「アイドル」としては知名度がない。むしろ失敗していると言っていい。

 簡潔に言えば、美琴は「技術」があっても「輝き」がない。

 仮に聖翔99期に美琴がいたとしたら。彼女は授業では天道真矢よりも高く跳び、レッスンでは極めて高く評価されるも、おそらくキリンの舞台には呼ばれない。

 理由はシンプルだ。「伝える」ものがない。

 「アイドル」の特徴としては、ファン側が読み取れるものがあれば伝えるものがなくともファンが勝手に解釈をする。浅倉透のGRADシナリオがまさしくそれで、レッスントレーナーから「多少下手でもそっちのほうが喜ばれるものね」と少し偏見の目で見られるほどだ。

 「斑鳩ルカ」は現代女子の代弁者と呼ばれるほどに、圧倒的な共感を与える。七草にちかは「話が面白い、生意気な子」というキャラで愛される。

 しかし、ノー・カラット本編で自動演奏を通じて言及されるように、美琴はそういった意味での「個性」が乏しい。観客が、彼女の中に見出すものがない。

 舞台版スタァライトでも、ある舞台少女が「演技から伝わるものが何もない」と指摘されるシーンがある。そのシーンを観たことが、今回の美琴に関する文章を作るきっかけであった。


にちかというルカの再演

 かつて美琴と組んでいたルカは、美琴の実力について行けていない自分に苦しんでいた過去が断片的に語られる。しかし、今や「カミサマ」と呼ばれる一流のアイドルである。
 七草にちかは、美琴に近付こうともがき苦しみながら、お茶の間の人気者というポジションを確立しつつある。

 この一致を見出すことは簡単であろう。かつてルカが辿ったスタァへの道程をにちかがなぞる。にちかの物語は、破局がわかりきった悲劇の戯曲のようにも思える。

 しかしながら、単なる再演ではない。ルカには出来なかったコンテンポラリーダンスは、異なるアプローチをすることで上演に成功している。

 プロデューサーが、にちかが、あるいはルカが。「再演」される物語を変えることができるのかも知れない。

美琴に救いはあるのか?

 私はあると信じている。


 「緋田美琴が伝えたかったもの」あるいは「緋田美琴の物語」。言うなれば華恋の「約束」、まひるの「目標」のような原体験――「なぜアイドルになろうと思ったのか?」を見つけることができれば、美琴はハッピーエンドに向けた一歩を踏み出せると思う。

 あるいは、プロデューサーが、にちかが、ルカが。緋田美琴の「物語」を見つけ出し、世の中に伝えることができれば、彼女の技術からきっと何かが「伝わる」。

 
終わりの言葉

 緋田美琴。

 彼女は情熱を燃やし続け、彼女の熱に当てられたアイドルはより強くキラめいていく。

 己すら燃やし尽くさんばかりに燃えるその先に、彼女自身のキラめきがあると信じたい。


 


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