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獄中記 #00|自己紹介

本当に初めての方はまずこちらから読んでください

こんにちは、初めての方ははじめまして、長嶺茜と申します…いや、長嶺茜と言う者でした、の方がいいかな。

というのも私は刑務所に収監されている受刑者。俗に言う女囚なのです。ここでは本名で呼ばれることはありません。735番という囚人番号が今の私の名前になります。

のっけから突拍子も無い自己紹介になってしまいました。今回は自己紹介も兼ねて私が刑務所へ収監された経緯についてご説明します。


順風満帆のOL時代

今でこそ刑務所に収監された女囚ですが、以前は犯罪とは縁のない人生を送っていました。学生の頃は成績は優秀な方でルールを重んじる真面目な性格。言い換えるとちょっとつまらない性格だったかもしれません。大学では商学部で学び、卒業後は都内の中堅商社で経理職を務めていました。

自分で言うのもなんですが仕事はできる方でした。上司からは厚い信頼を寄せられ、重要な職務も多く任されていました。私も自分の成果が認められることに充実感を得て仕事に没頭する日々を過ごしていました。


朝早く都心の洗練されたオフィス街に通勤し、清潔感のある事務服に着替えて、窓からの見晴らしが良い快適な職場で業務に励む。

昼休みは財布を片手に外に出て、会社周辺に集まってくるキッチンカーからランチを選り好み。テイクアウトしたコーヒーを片手に気持ちを引き締め、午後からの仕事にも精を出す。

残業することも少なくなかったけれど、やればやった分だけ成果が出せて達成感が得られるのが楽しかった。

そして夜遅くに一人暮らしのワンルームマンションに帰宅し、ゆっくりお風呂に使って体を癒やす。就寝前のひと時をリラックスして過ごし明日の仕事のために英気を養う。



このような毎日を過ごしていました。仕事が忙しそうで大変だねって言われることもあったけれど私自身はそんなに大変だという自覚はなかったし、この仕事が好きでした。

こんな事言うのはちょっと恥ずかしいけれど、仕事をしている自分が好きだったのだと思う。

仕事中心の生活ではあったけれど、私はどこにでもいるような普通のOLでした。でも、たった一つの過ちがきっかけで私の人生は一気に転落してしまったのです。

逮捕前の私。仕事が好きで充実感と自信に満ち溢れていた頃。ちょっとむっちり体型?気にしているのでそれは言わないで下さいね!

出来心で手を染めてしまった横領

会社に入って数年、仕事に没頭する日々を過ごしていると気づけば職場の女性社員では私が最年長になっていました。

自然と後輩たちの取りまとめ役も担うようになっていました。ただ、彼女たちに対しては厳しく当たることもあり、下からは煙たがられる存在だったと思います。仕事に取り組む以上厳しくせざるを得ない時もあるのですが、残念ながら後輩たちにはなかなか理解してもらえなかったようです。

真面目だけれども厳しくて近寄りがたい、上司からは気に入られているのが鼻につく少しお高くとまったお局OL。これが周りの私に対する印象だったのでしょう。

正直なところ職場では孤立気味でしたが、元々群れたり媚びたりすることを嫌う性格だったのであまり気にはしていませんでした。いや気にしていないつもりでした。

ふと周りを見渡した時、趣味を楽しんだり、恋人を作ったり、はたまた結婚したりする同僚たちが多くいる中、私はこのままでいいのかと疑問に思うことかあったことは否定できません。寂しい女ですよね…

そんな時、友人に誘われて嫌々足を運んだホストクラブに私はすっかりハマることになってしまいます。悲しいかな、男性慣れしていなかった私はチヤホヤされて勘違いしてしまったんです。堅実に貯めていた貯金はあっという間に使い果たしてしまいました。

ここで止めておけば傷は浅かった。でも止められなかった。

私の職権があれば会社のお金を流用することはできなくもない。頭によぎったがすぐに否定しました。そんなことして良いはずがない。そう、それはれっきとした犯罪。決して許される行為ではありません。

でも……そうなんだけれど……これくらい大丈夫。すぐに補填すれば問題ない。これまで会社に貢献してきたのだからこれくらいは役得のうち。

頭の中が愚かな考えでいっぱいでした。会社で認められていた自信が慢心に変わっていたなのだと思います。そして私は一線を越えてしまいました。

最初は恐る恐る手を出して、給料日を迎えたら一応補填はしていました。だけどすぐにまた手を出してしまい、そのうち補填することもしなくなり、帳簿を誤魔化しては手を出しての繰り返し。そのうち自分でも横領額を把握しきれない程になってしまい取り返しのつかない状態になっていました。

しかし、泥沼化していくプライベートとは対照的に仕事の方は順調でついには役職がつくことになりました。より責任の伴う立場になることもあり、このままではまずいとようやく我に返りました。そして昇進をきっかけにホスト通いと横領はきっぱり止めることができました。

仕事は増々忙しくなり、日々の業務に腐心していました。自分の過ちから目を背けるように……しかし、私の罪が闇に葬られることはなく、その報いを私は受けることになるのです。

ある日、なんの前触れもなく職場に踏み込んできた警察に私は逮捕されました。上司からは失望され、部下たちからは軽蔑され、マスコミにも晒され。私が積み上げてきた信頼と実績は一瞬にして崩れ去ってしまったのです。

逮捕されたときの私。この情けない姿を職場で晒しながら連行されました。このときの手錠の重さと冷たさは今でも忘れられません。

そして女囚へと堕ちた私

逮捕された私は激しい後悔の念に苛まれました。バレないはずないのになんであんなことしてしまったのだろう。こんな事を毎晩のように留置所や拘置所の独房で思い悩みました。でも今更悔やんでも事態は何も好転しません。後悔先に立たずとはこのことです。

罪が明るみなった以上私にできることはそれを認め、罪を償うことです。でも、ここでもつまらないプライドが邪魔をしてしまいました。

有罪はやむを得なくてもせめて実刑判決だけは避けたい。これまで曇りのない人生を送ってきたのに一つの過ちでどうしてこんな目に遭わないといけないの。私は刑務所に入るような人間じゃない。

そんな驕りが私の根底にありました。そして、そんな私を浅はかな想いを見透かすように、業務上横領罪で懲役6年の実刑判決が下されたのです。

そして今、私は刑務所で服役しています。


朝早く刑務官の怒号で叩き起こされ、サイズの小さいパツパツの見窄らしい囚人服を着て、高くそびえる刑務所の塀を臨みながら厳しいノルマが課された労役に就く。

昼休みは配給された質素な食事を短い時間内に口に注ぎ込む。鞭を片手に持った刑務官に脅えて気持ちを引き締め、午後からの労役にも精を出す。

ノルマが未達であれば懲戒と残業労役。プレッシャーに襲われながらノルマをこなす事にいっぱいで焦燥感に襲われる。

そして夜遅くに据えた臭いに満ちた独房に戻され、一息つく間もなく就寝準備。風呂は数日に一度しか入れず、心も体も癒すことはできない。明日の労役に備えて少しでも体力を回復しようとカビ臭い布団に潜る。


このようにOL時代とは対照的な毎日を過ごしています。これも全て私が犯した罪の報い。甘んじて受け入れるしかありません。

ただ、こんな事を考えてはいけないのかもしれませんが、今でもどうして私がこんな目に遭わないといけないかと思ってしまうことがあります。

似たような境遇であるにも関わらず、今でも平然と充実したOL生活を送っている同僚たちを妬ましく思ってしまうことがあるのです。彼女たちと私で何が違うのでしょう。寧ろ私のほうが会社に貢献してきたはずなのに…

これが今の私の姿。体型が強調され一目で罪人と分かる特異なデザインをした囚人服。受刑者に劣等感と羞恥心を与える屈辱的な服です。恥ずかしいのであまり見ないでください…

今後について

最後は見苦しくなってしまいましたが、これまでの私の経緯をざっくりとお話させていただきました。

私のことをもっと詳細に描いた『雨浦監獄物語』という小説があるのですが、今後その小説の振り返りや解説を通じて、私のことやこの刑務所のことをもっと深堀りしていこうかと思っています。興味のある方は直接原作の方も読んでくださると嬉しいです。

頻度低めですが現在も更新中です!(18禁の女囚モノ小説なので閲覧には注意してください)

また、小説解説とは別に私なり今の刑務所生活や過去のOL生活に対する想いも綴ってみようかと。うまく表現できませんがちょっと風変わりな獄中記、みたいなものにするつもりです。(余計わかりにくい?)

それでは私、長嶺茜…違った女囚735番の雨浦監獄獄中記を楽しんでください。

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