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生命の庭へ

先月末、東京都庭園美術館で開催されている「生命の庭」展を訪れました。

青木美歌さんの、ちょっとナウシカの世界のようなガラスのオブジェの写真が気になって、「生命の庭」という名前や、「8人の現代作家が見つけた小宇宙」の副題にも心ひかれ、娘と二人で銀杏並木の中を美術館へ。

淺井裕介さんのちょっとアフリカのような東南アジアのような不思議な感じの絵が気に入って、「この場所でつくる」というタイトルの画集も買ってしまいました。絵具に鹿の血を混ぜているということで、不思議な茶色で少し呪術っぽい雰囲気の絵がとても素敵です。

志村信裕さんの映像にも心を惹かれました。
ある制度や習慣の中で忘却されゆく記憶や歴史…戦争でスペインからベルギーにわたって、そこで根付いて行ったあるお婆さんとその放牧民の家族。お婆さんは、手つむぎで刈り取った羊毛を糸にして編んで暮らしている。一転して日本の風景。成田空港のすぐ脇にある御料牧場の歩んできた明治期から現在までの歴史。空港の拡張工事との闘争、近い未来での終焉。羊を主題に現地で取材したフィルムのショットとショットをつなげて、一つの物語を紡いでいく。世間に知られることなく終わろうとしていく歴史、手仕事で作られる素朴だけど心のこもった素材、伝統について考えさせられました。その映像が歴史ある建物の中で、ひっそりと上映されていることにも考え深いものがあります。

他の作家さんの作品にも、一つ一つ想いが込められていて、その思いを旅するのも楽しいことではないでしょうか。自分から動くのか、動かされるのか、参加されている作家さんたちもこの展示会の「生命の庭」というテーマから何かを感じて参加を決めた方、そこから作品を生み出した方...様々です。

建物自体にも、素敵なストーリーがあり、立派な木々に囲まれた庭もあちこちに思いがけない発見に満ちていました。美術館としての空間を楽しんでいる人々と、日常の一コマとしてのピクニックに来ている人々の共存する空間。

幾重にも想いや時間の重なった空間で、あなたは何を想うのでしょうか。一つ一つは独立していながら、そこには全体としての大きな想いの空間が広がっていく不思議な世界を体験してみませんか?


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