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ゲ謎考察 水木は戦友たちの亡霊を怖がっていた

こんにちは。あっかみんと申します。

私が最初に鬼太郎誕生ゲゲゲの謎を観てから3ヶ月半が経ちました。早いですね〜。

今回は水木が戦友たちの亡霊を怖がっていた、という考察です。当たり前かもしれないですが、私は気づくのにだいぶ時間がかかってしまったので書いてみることにしました。上手くまとまっているかわかりませんが、お付き合いください。


水木は戦友たちの亡霊にビビっていた

「当たり前でしょ?」と言われてしまうかもしれませんが、私は気づくのに三ヶ月ぐらいかかりました笑

正直、水木があからさまに戦友の亡霊を怖がっている様子がなかったので、映画の早い段階で戦友たちの存在を忘れてしまっていました。ただ、想像以上に水木の戦友たちはとても重要な存在だった。そんな考察です。

映画の名場面を紐解いていく

運命の出会い

水木と鬼太郎の父(以下ゲゲ郎)は夜間列車の中で出会います。

「お主、死相が出ておるぞ。」
「この先地獄が待っておる。」
「儂には見えるのじゃ。見えないものが見えるのじゃ。」
「現にそら、お主の後ろ大勢憑いておる。」

「バカな…」

普通に考えてみて、いきなり知らない人から「お主憑いておるぞ」って言われたら怖いはず。しかも憑いている幽霊が見覚えのある戦友たちなら尚更。そりゃ「バカな…」とこぼしてしまう気持ちもわかります。「戦友が俺に憑いているなんて」「恨まれているのか」「アイツどこに消えた」「幽霊なんているわけがない」と、さまざまな感情が入り混じってそうです。

ゲゲ郎が言っている「死相」とは実は戦友たちが水木に持っている恨みの念だと思っているのですが、これに関しては只今執筆中です。マジで長くなりそうです。書いていて終わりが見えません。

戦地を思い出す

次のシーンでは水木が夜行列車を降りて、タクシーに乗車。その時に南方での事を思い出します。

「死にたくない…」

そして、龍賀家で過ごす一夜目。水木は玉砕する夢を見ます。

「殺せ…俺を殺せえええ!」

この二つのシーンはゲゲ郎との出会いが水木に戦地を思い出させるきっかけになった事を示唆していています。

水木はモウレツサラリーマンとして身を粉にして働く中で、戦地や戦友たちを思い出すことはあまりなかったのかもしれません。もしくは思い出さないようにしていた可能性もあります。戦地での記憶から目を背けていた水木。そんな彼の記憶の蓋を開けるきっかけがゲゲ郎だったのかもしれません。

哭倉村での再会

ゲゲ郎の首が長田の部下によって撥ねられそうなところ、ゲゲ郎が水木を夜行列車で向けたあの洞穴のような目で見つめます。そして水木は戦地での出来事が走馬灯のように走り、自分でも気付かぬまま止めに入ります。

ここでもまた、ゲゲ郎が水木にとって戦地を思い出すトリガーとなっている事がはっきりとわかります。列車内で見た戦友たちの幽霊によって戦争での記憶の蓋が開きやすくなっているところに、幽霊を見た元凶の人物が出てきたらもちろん戦争での出来事を思い出すでしょう。

座敷牢で初めての会話

無事、ゲゲ郎の首が刎ねられることは避けた水木は長田にゲゲ郎の監視を命じられます。

「お前は何者だ。なんの目的でここにやってきた。」(うろ覚え。)

この話かけ方って不思議じゃありませんか?

水木はゲゲ郎が電車での人物だとわかっているはずなのに、それについては全く聞く様子がないんです。列車での出来事がなかったかのように水木はゲゲ郎に話しかけるんです。

これは、水木が妖怪や幽霊の存在を否定している事を表しているのではないか。

水木は戦友たちの亡霊を怖がりながらも信じたくなくて、真相をゲゲ郎に聞けなかったのかもしれません。もしくは、自分の見たものをなかった事にしたくて何も聞かなかったのかもしれません。

どちらにせよ、彼は戦友たちの亡霊の存在を無下にします。そして、それは水木が戦友たちの亡霊を受け入れていないことと同意です。

水木は戦争で失ったものから背を向けているのです。

水木の嫌がらせ

「いやだね。」

ネタにされている「いやだね」ですが、これは水木なりのちょっとした嫌がらせだったのかもしれません。 電車の中では変なもの見せやがって、みたいな。

その後、時ちゃんが座敷牢を訪れたあと、水木はゲゲ郎に「腹割って話そうや」と持ちかけ、ゲゲ郎は応じます。

妻を探していることを話しますが、水木は

「やっぱりこいつは負け犬だな」

とゲゲ郎を評します。

これは深読みのしすぎかもしれませんが、水木の強がりに聞こなくもないです。不思議なものを見せたこいつはやっぱりそんな特別でもなんでもない。ただの負け犬だと。そう自分に言い聞かせているような感じもします。

二回目の悪夢

二晩目の夢の内容はわかりませんが、起きた時の反応からして悪夢を見ていたことは確かでしょう。

温泉で見えない誰か

ゲゲ郎と縁ができて、水木に妖怪の姿がうっすらと見えてきます。ただ、まだ妖怪の存在を認めていないので完全には見えていません。

禁域に踏み込み、初めて妖怪を見る

ここで初めて水木は妖怪という存在に直に触れます。

耳鳴り、鼻血、失神。身体に影響するほどの妖気に触れ、岸辺に戻ると湖には河童。この段階で水木はまだ妖怪たちの姿がはっきりと見えていない可能性が高いです。ただ、確実に温泉の時よりは何かが見えているでしょう。

そしてなにより、謎の少年の「幽霊族」発言。

「幽…霊族?」

ここで水木の「ゲゲ郎は人」という希望が打ち砕かれます。

そして息をつく間もなく、二人目の犠牲者が出ます。

「妖怪はおるぞ」からの水木が気絶

丙江の死体を見てあきらかに動揺している水木。タバコで気を落ち着かせようとしますが、ゲゲ郎が「人間の仕業ではないのぉ」と告げると火もつけ忘れてゲゲ郎を問いただします。すると、ゲゲ郎が告げたのは聞きたくなかった真実。

「妖怪はおるぞ」

「やめろ…やめてくれ!」

真実に耐えられなかった水木が白目を剥いて倒れてしまう。

このシーン、水木が異常に怖がっていて、私は当初「なんで妖怪がそんなに恐ろしいのだろう?」と思っていました。怖いと言っても後退りして、気絶するほどか?と。

そして気づきました。

水木はここで「妖怪」の存在を怖れていたのではなく「戦友たちの亡霊」を怖れていたのだと。

それなら彼があれほど怖がっていた理由が少しわかる気がします。終戦から10年経っているのに、水木に大量に憑いている戦友たち。そしてそれを見てしまった水木。

「なぜ彼らが俺に」「生き延びた俺を恨んでいるのではないか」「褒められるような生き方はしてない」

他の人を搾取するように仕事についてでものし上がろうとしてきた水木。その自覚がありながらもやっていたのなら、それを戦友たちに見られていたと気づいた時は恐ろしかったでしょう。元は人を愛せる水木です。自分の悪事を一番見られたくない人たちに見られていた。そんな気持ちだったのではないか。

彼は島で妖怪を見て、丙江さんの人間にはなしえない遺体を見てしまいます。非科学的なものを見て聞いて、今まで頑張って否定してきた非科学的な「戦友たちの亡霊」が存在している可能性が水木の中で高まっていたのでしょう。

そして、ゲゲ郎の追い打ちがあり、妖怪の存在を否定しきれぬが、到底その事実を受け入れることもできず、気絶してしまったのでしょう。

(ちなみに丙江さんの○体にあれだけ動揺していたのはなんでなんでしょうね…?女性が殺されたから、カラスに食べられていたから?まだ考え中です。)

蛍の中での語り合い

ここで戦友たちの怨念を水木は受け入れたんじゃないか。

一つ気づいて欲しいのですが、ここから先、水木は映画内で悪夢を見なくなるんです。戦友たちの亡霊を受け入れることは水木にとって罪を受け入れるのと同等だったのかも。少しだけ救われた気分になったのかもしれない。

墓場で酌み交わす

戦友たちの亡霊を受け入れた水木。墓場では心の中で募りに募っていた焦りをゲゲ郎に打ち明けます。

なぜ人を蹴落としてでものし上ろうとしたか。それが理由で自分に人を愛する資格がないと思っていること。

それに対してゲゲ郎はいつか運命に出会える、と水木に告げる。水木はそれを馬鹿にすることもなく、いつかそんな人が現れたらいいな、というような反応を返す。そして、ゲゲ郎に心を許した水木は最後のタバコを渡します。

ここで水木が救われ、戦友たちも救われたのではないでしょうか。このシーンは水木がやっと本来の自分に戻る兆しが見えるとても大切なシーンです。そんな水木を見て戦友たちの恨みの念も少しは晴れたのではないか。

ただ、戦友たちの恨みが完全に晴れるのはあの「ツケハラ」だと思ってます。

水木 「ツケは払わなきゃなぁ!」

時貞翁に言っているだけのようですが、自分にも言っていたのでしょう。

水木にも払わなければいけないツケがたくさんあった。今まで蹴落としてきた人。貧乏人を搾取してきたこと。沙代さんを利用とした挙句、間接的に殺してしまったこと。

そんな水木が幽霊族を解放する事で自分のツケを少しでも払おうとしたのかもしれません。

そして、この行動によって戦友たちは水木をやっと許したでしょう。今まで自分を殺して、のし上がるために人を踏みつけて水木がやっと自分の本質を取り戻して他人のために身を張った。

しかも、それは戦地では叶わなかった「誰かを守る」夢。死ぬために戦いを挑むのではなく、自分含め、他人を守る前に戦った水木。それを見た戦友たちは水木がこの後の人生を正しく生きれると希望を持ったことでしょう。

記憶喪失になるが生存

他人を愛し守る心を取り戻した水木ですが、最後に記憶を失ってしまいます。

幽霊族を救うだけでは水木のツケは払いきれなかったのでしょう。ただ、疑問が残ります。ちゃんちゃんこを鬼太郎の母に着させてしまった水木はなぜ生き残れたのでしょう?

これは完全に妄想ですが、もしかしたら恨みの晴れた戦友たちが水木を守ってくれたのかもしれません。言葉通り、身を挺して。

彼らも戦争の被害者です。死ぬためだけに死ねと命令され、何も守れず散っていった。そんな彼らへの報いはまだ生きている戦友である水木を助けることだったのかもしれません。全ては守れませんでしたが、水木は命を落とすことなく生存します。

そして、水木は運命に出会うことができるのです。墓場から生まれた幽霊族の子供に。

最後に

いかがだったでしょうか。上手くまとまっているかわかりませんが、少しでも考察が伝わっていれば幸いです。

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」は水木が妖怪の存在を通して自分の罪を認識し、受け入れて、自分を改める話だったのかなとこの考察を書いていて思いました。そして水木の戦友たちが鍵となる存在でした。

4月にはアマプラでゲ謎が配信されるので、その時には戦友たちの事も考えながらみたいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました!



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