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明日からできる、トレーシングレポートを使った処方提案

どこの町にもあるような薬局で働いている
ごく普通の薬剤師のあなたへ。

もっと対人業務を充実させたい。

もっと医師と連携したい。

何より、もっと患者さんに寄り添った医療がしたい。


そんなことを考えながら、毎日働いていませんか?

大きな設備投資も、新たな認定資格も必要なく、あなたと患者さんと医師が強い信頼関係で結びつく。それを叶える方法があります。

それは、服薬情報提供書(トレーシングレポート)を使って処方提案をすること。たった 1 枚の紙が、あなたの願いを実現します。 

【書けない。読んでもらえない。怒られる。】

「トレーシングレポートって言われても、どうやって書いたらいいのか分からない…」

「せっかく書いても、医師は忙しいからどうせ読んでもらえないよね…」

「たとえ読んでもらえたとしても、“内容がくだらない”と、怒られるのが不安…」

このように考えてしまい、やろうとは思っていても、最初の一歩がなかなか踏み出せずにいるのではないでしょうか。

実は、トレーシングレポートの書き方にはコツがあります

それをおさえられれば、薬剤師 1 年目の方でも、久しぶりに現場復帰するようなブランクのある方でも、医師に読んでもらえる、何より患者さんにとって有用なトレーシングレポートが書けます。


【処方提案数 300 件以上、採用率 80%】

私は、書面による情報提供という形で、様々な地域で複数の医師に処方提案を実施してきました。

現在までに提案総数は 300 件を越えており、その採用率は 80% 程です。(ただ、採用されるかどうかは、医師の性格や考え方に左右される部分が大きいので、それほど気にしなくても良いと考えています)。

都道府県内で最大規模の基幹病院の医師にも、地域のかかりつけ医にも、書面による処方提案は好意的に受け取っていただけました。この取り組みを始めた頃「これ凄くいいですね。薬剤師さん皆がやればイイのに!」と、言ってくださった医師がいたのですが、大きな自信になったのを覚えています。

【4つのポイント】

では、トレーシングレポートを使って処方提案をするときのコツを 4 つお話しします。医療機関によってはトレーシングレポートの書式が指定されていることもありますが、どのような書式であってもコツは変わりません。

【1. 患者さんの願いを聞き出す】

これが一番重要です。

なぜなら、医師は患者さんの願いを無視することは難しく、患者さんの希望をできるだけ聞いてあげたいと思っているからです。

実際、客観的に正しいと思われる情報を伝えるだけの提案は、あまり医師に受け入れてもらえません。しかし「患者さんの願いであり、しかも客観的にも正しいと思われる提案」であれば、受け入れてもらえる確率は大幅に上がります。

さらに、「薬剤師 = 自分」が患者さんの願いを叶えてあげたいと思っている、という “I message” を書くことも、当事者意識が伝わり効果的です。

【2. 患者さんの情報を集める】

提案内容に関連する情報を、必要に応じて患者さんから収集します。

たとえば、現在の症状、食事・睡眠・排泄・運動・認知の各状況、身長と体重、バイタルサイン(血圧・脈拍・呼吸・体温・尿量 etc)です。もちろん、すべてが必要なわけではありません。提案内容に応じて取捨選択します。

これらは提案を支持する根拠となるので、記載すると説得力が一気に増します。逆に、この部分がないと、患者個人に焦点があっていない画一的な印象の提案になってしまいます。

多忙な医師は、こちらが思っている以上に患者さんの詳細な症状や生活習慣を確認できていないことも少なくありません。そのため、たとえ提案が受け入れられなかったとしても、医師が把握しきれていない患者さんの状態を情報提供できれば、医師にとって有益な報告になります。それは、今後の医師との協働において必ずプラスになります。

【3. 最終判断は医師に委ねる】

最終的に処方する権利は医師にあります。

たとえ同一医療機関の医師同士であっても、処方内容に触れる提案をする場合は細心の注意を払っています。薬局薬剤師からの処方提案となれば、他施設の他職種が実施するのですから、よりいっそう注意する必要があります。

「わたしの提案を受け入れない理由がない!」と思えるほどの自信があっても、決して指示はしないほうがよいです。たとえば「〜に変更するべきです」「〜に変更してください」「〜への変更をお願いします」などの表現は避けます。かわりに、検討を依頼する表現や相談を持ちかける表現を使用すると、反発やトラブルを大幅に招きにくくなります。


【4. 論文やガイドラインは大切。ただ、必須ではない】

論文やガイドラインを引用し、客観的な根拠を示すことは大切です。可能であれば引用したほうがよいです。

しかし、トレーシングレポートにはそれらの記載が絶対に必要かといえば、そうではありません。むしろ、患者さんからの情報と、添付文書あるいはインタビューフォームの記載だけを根拠に提案する場合のほうが多いくらいです。なぜなら、あなたの目の前の患者さんに明確に当てはまる論文やガイドラインが、常にあるわけではないからです。

論文やガイドラインを引用せずに処方提案してもよいのです。

【おわりに】

今、あなたの頭の中には、ちょっと気になっている患者さんの顔が浮かんでいると思います。ぜひ、トレーシングレポートを使って処方提案をしてみてください。

疑義照会では、医師の医学と薬剤師の薬学は点でしか接することができません。疑義照会をしている時点で、診察はすでに終わっています。

しかし、トレーシングレポートを使えば、医療機関と薬局がスムーズに循環しはじめます。薬剤師の観点を踏まえて、医師が診察・診断することができるようになるのです。

何より、処方提案をすると患者さんは本当に喜んでくれます。

処方提案後の診察を終えて薬局に来た患者さんは、あなたを探します。

あなたを目当てに薬局に訪れるようになります。

あなたが処方の一元化を勧めなくても、今まで他薬局に渡していた別の医療機関の処方箋を、自分から持ってきてくれるかもしれません。

「私のかかりつけ薬剤師になって欲しい」と言われることもあるでしょう。

あなたのことを、医師としっかり連携しながら自分の健康を一緒に見守っていってくれる薬剤師だと判断し、患者さんは大きな信頼を寄せるようになります。

そこには、薬剤師が患者さんに寄り添った医療が、たしかにある。

私はそう思います。

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