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「美しい」の研究報告(2月)

見たり、触れたり、味わったり。日常の中で感じた「美しい」を掬い上げ、それについて研究した内容を綴る、日記に近い研究報告です。「美しい」ってなんだろう?そんな曖昧な感覚について深く考えてゆきます。


Taste

brutto

2月の週末、代々木八幡にある「brutto」に訪れた。そこはずっと気になっていたお店。お料理ももちろん美味しかったのだけど、空間がとても心地よかったのが印象的だ。「ライブキッチン」といって、同じテーブルでお客さんは食事をして、シェフは料理をする。そんな調理と食事の境界が溶けている空間が私にとってとても好みで、活気に溢れた雰囲気にその場にいるだけでワクワクする。ちょうど座っていた席が目の前で焼きたてのパンが焼き上がる席で、パンの美味しい香りに包まれながら過ごせて幸せだなあと噛み締めていた。ちょっぴり忙しかった2月。美味しい空間に癒やされた夜。

このオムレツの味が忘れられない…!

📍 brutto


Place

九段ハウス

東京・九段にある「九段ハウス」を訪れた。九段ハウスは、1927年に建築された5代目山口萬吉の私邸。2018年には「登録有形文化財」として登録され、現在は改修を経て会員制のビジネスイノベーション拠点となっている。通常は一般非公開の場所だが、展覧会により幸運にも訪れることができた。

九段ハウス

アーチ、スタッコ壁、スパニッシュ瓦など当時流行したスパニッシュの建築様式を施している建物は足を踏み入れた瞬間、異国の地の邸宅に訪れたような感覚になり心躍る。建物と同じ広さくらいの美しいお庭があったり、窓が大きくベランダが広かったり、この建物に住んでいた人は日本の四季の美しさを大切に味わい続けていたんだろうなと想像する。このような邸宅はもちろんのこと、誰かの住まいを訪れるのは昔から好きだ。住まいという自分に一番近い場所には、住む人の思想や哲学が反映されているように感じる。この人はこんなことを大事にしながら生活しているのかと、その人ならではの美意識を勝手に想像して、その人をもっと好きになったり。(変な意味ではないです)美術館に行ったり舞台を観たりすると、作家の頭の中に潜り込んでいる感覚になるのと等しく、住まいにも似たようなものを感じる。かっこつけなくても、上等じゃなくても、自分にとって心地よい住まいがあるって素敵なことだ。自分にとっての心地よい住まいとはどんな場所なのだろうか?とぼんやりと妄想をするなどした。

木漏れ日が美しい時間だった

📍 九段ハウス


Time

雨の日

雨の日が続いた2月。「雨やだ」「つらい」「帰りたい」雨の日は自然とネガティブな声が街に広がる。雨の日の良さってなんだろう?ネガティブな空気の街を一人歩きながらそんなことを考えていた。雨に濡れた道路が光に照らされるとキラキラ輝いてて美しかったり、傘に当たる雨の音って案外心地良い。いつも混んでいるお店は雨の日はすんなり入れるし、お気に入りの分厚いハンドタオルは雨の日こそ大活躍する。そんなこと考えて歩いてたら早咲きのミモザの木に出会った。雨に濡れてミモザの花が宝石みたいに光ってて、雨だからこれも見れるのかなあと写真を撮る。

ある雨の日の東京

過去に訪れたシアトルもロンドンも雨の街だった。シアトルは1年で55日しか晴れの日がないと当時教えてもらった。それでも、雨の日は全く嫌な感じがしなかった。街にいる人はみんな雨に慣れているからか、大雨でも傘をさしていないし、むしろ楽しそうで街にいるみんなが「どうってことないこと」として雨の日を受け止めていた。

歳を重ねるごとに、いつもと違うことへの抵抗がどんどんなくなってきているなあと感じる。いつもの天気、いつもの気温、いつもの場所。自分にとって心地良い、いくつもの「いつもの」を知り理解することでどんどん「いつもと違うこと」が受け入れられなくなる。それでも、いつもと違うものの中にある美しさに目を向けるとそこには奇跡みたいな景色が転がっていたりする。ちょっぴり不都合ないつもと違うを「どうってことないこと」に受け止めつつ、いつもと違わないと見れない奇跡を見つめていたいなと思う。


Book

未来をつくる言葉

「コミュニケーションとは、わかりあうためのものではなく、わかりあえなさを互いに受け止め、それでもなお共に在ることを受け容れるための技法である」(未来をつくる言葉/ドミニク・チェン)

人と人は完全にわかりあうことはできない、と私は思う。だからこそ、言葉があり、コミュニケーションを取ろうとする。人が好きだけど、周囲とどうしても馴染めなかった幼少期を経験したから、今でも言葉を大事にしているけど、言葉も時には凶器になりうる。様々な生き方や在り方が称賛されるこの世の中で、言葉をどのようにつむぎ私たちは私たち同士を受け入れていくのか。人との繋がりや、コミュニケーションについて改めて考えるきっかけをくれた温かな本でした。

📍 未来をつくる言葉


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