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20220920 somnia

 夢を見た。

 自宅にいた。母はリビングに転がっていた(これは日常の風景である)。
 夜中のようだ。窓から外を見ると星空だった。
 テーブルの上には私と母の好きな烏龍茶の茶葉と、コーヒー豆が散らばっていた。空いた急須が置いてある。
「ねえ、月に行ったらコーヒー飲もう」
 私は母に言う。月はここからだと少し遠いけれど、行けないことはない。車で山道を走れば着く。
「古いのも持っていってね。新しいのと飲み比べするから」
 寝そべったまま母はそう言うが、眠気が襲ってきたらしく、そのままこてんと眠りこけてしまった。月には行けなさそうだ。
 散らばっているコーヒー豆を集めて、ふと思う。
 コーヒーって、どうやって淹れるんだっけ。
 ぼんやりと考えた。
 キッチンの引き出しからティーバッグを取り出して、豆を中にじゃらじゃらと入れる。
 テーブルの上にあった急須の中に、それを入れた。入れてから気づいたが、烏龍茶の残りが入っていたらしい。
 苦い、という点では同じだろうと思った。
 湯を入れて、しばらく待って、カップに注いだ。なんだか変に濁った色だ。
 飲む。まずい。
 淹れ方が違うんだろうなぁと、漠然と思って、カップをテーブルに置いた。もう手はつけない。
 その時ふと、椅子に見知らぬ老婆が座っていることに気づいた。
 肩までの縮れた白髪。濃いめのピンク色の服を身に纏い、日に焼けて皺々の目元がこちらを見る。ゆるりと、同じく日に焼けた皺だらけの折れそうな手を、彼女は上げた。
「水を」
 そう一言言った。
 私は冷蔵庫を開け、水の入った容器を取り出す(我が家の飲み物は基本的に水である)。
 コップを出し、水を注いであげようとすると、老婆はハッキリとこちらに尋ねた。
「その水を三等分したら、どこまでが水ですか」
 あぁ、やっぱり気になるよね。と私は思った。
 容器を指差して説明する。
「水を、ここと、ここで三等分してもいずれも水なので、これは水ですよ」
 少し説明が苦しかったが、コップに水を注いだ。
「ほら。水です」
 コップを指差すと、老婆は頷くでもなく、ゴクゴクとそれを飲み始めた。

 目が覚めた。

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