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20220624 somnia

 夢を見た。

 よく見る光景だったので「またか」と思った。
 ものすごく大きな旅館のような、それでいて学校のような、はたまた無機質な研修施設のような、そんな巨大な建物に一人で立っていた。
 廊下は長く伸び、薄暗い照明が点々と天井周りのみをゆらりと照らす。
 私は走り出した。行く当てはないけれど、「どこか」に行かねばならなかった。
 廊下を走り、曲がり角を曲がり、幅の広い階段を降りて、また廊下を走る。
 何度か細かい曲がり道を曲がると、鉄製の大きな扉が現れた。ぐっと手前に引く。
 薄暗い廊下に、刺すような昼白色の明かりが漏れ出る。
 中は研修室のようだった。
 そこに、ぎゅうぎゅうと知らないおじさんたちがいる。足にはサンダルを履き、水色と白の淡いストライプ模様の浴衣を身に纏っている。顔をほんのり紅潮させながら、思い思いに喋り、笑い、歌っている。どうやら酔っているようだ。
 宴会会場と化している研修室をぐるりと見回し、扉を閉めた。ここじゃない。

 教室に挟まれて薄暗い中廊下を通り過ぎると、旅館の縁側のようなところに出た。そこもまた曲がり角が多いのだが、ガラス戸越しに見事な庭園が見える。
 青々と繁った木々はぴたりと、一寸も動かない。風が無いのか、のっぺりと地面に張り付くような透き通った池ですら、漣一つ立てない。
 作り物のような空間は、まるで時が止まったようだった。
 惚れ惚れと見惚れていたものの、変化の無さに早々に飽きて、また走り出す。
 ぞわっと、首筋が粟立った気がした。
 思えば、いつもこの夢を見る。気味が悪い。
 私はどこかへ向かっているけれど、どこにも辿り着かず、外にすら出ることができない。
 一体この大きな屋敷は何なのだろう。

 目が覚めた。

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