射的で高額景品を落とした時の話

お祭りには様々な屋台があるが、その中でも話題に事欠かないのがくじ引きと射的だと思う。
YouTuberの動画でくじの闇が暴かれたりした事はあったが、射的はどうだろう。置いてあるゲームハードや高額景品、落としたら貰えるのだろうか?

私がまだ小学生だった頃に連れて行かれた近所のお祭りの射的に、なんと“青眼の白龍(初代)・携帯ゲームハードのセット”が置かれていたのだ。
子供は5発300円。やるしかない、そう強く決意した私はお小遣いを全てそこで使う覚悟をした。
景品は普通に打っても微動だにしない重さであり、弾はコルク弾、銃身は少し歪んでおり、到底通常の手法でゲットすることは不可能に見える。
しかしその日は強い追い風が吹いていて、軽い駄菓子などは少し動いてしまうほどであった。
私の考えた作戦はこうだ、風が吹いた瞬間、コルク銃を前に突き出しながら撃つ。
風×前に突き出す力×コルク銃=青眼の白龍!
あまりにも馬鹿の考える発想だが、実践してみるとなんとほんの少しではあるが景品が動いたことを確認した。
そもそも景品の箱の中にゲーム機以外が入っていそうな異様な重さの物体を動かせたのも束の間、射的の店員は景品を元の位置に戻してくる。
「これな、1発で落とせないと無効なんだ」
絶望した。なら無理ではないかと思ったが、次はコルク銃とコルクの形ごとの球の強さを考えた。幸いなことに銃の変更は自由であり、コルクこそ交換はできなかったが最も威力のある銃を見つけ出し、そしてもっとも威力の出る形のコルクを見つけ出すことができた。
ここからはコルクガチャである。300円で5個のガチャ、目的は最強のコルク。
果たして手元には最強の銃と最強のコルクがあり、最後は風を待つのみ。
狙いをつけ、息を落ち着かせ、突き出す速度も考慮し。
そして、その時が来た。
突風、揺れる景品、そこを狙って私の最強の一撃が青眼の白龍を貫き────。
後ろに倒れ、落ちてゆく景品、なんかとんでもない重量を感じる音、たぶん砂がパンパンに詰まってる。
「あ、この景品ね、前側に倒れないと無効なんだ」
こうして私の祭りと、1800円と、大人への信用は消えた。

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