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神田伯山新春連続読みレポート 4日目(畔倉3日目)

新春連続読み『畔倉重四郎』2024に6日間通って感想を書く。畔倉3日目は友達を殺すところからお縄になるまで、劇的な展開が続く。3連休も最終日で、ゆったり会場に向かうことができるのも最後だ。

三五郎殺し

三五郎殺しを目論む重四郎は三五郎に、女郎屋の主をやらないかと言ってその女郎屋の下見に誘う。寄合があるから遅くなると言って待たせた挙げ句、夜道を行こうとすると土砂降り。鈴ヶ森の波打ち際に着くと、重四郎は三五郎に斬りかかる。一太刀で殺せず、三五郎は命乞いをするが重四郎は容赦なくとどめを刺す。

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他の殺しではさほど被害者に情が湧かなかったが、兄弟分ということもあって、かつ死に際に必死に喋る三五郎を見ていて、こちらも心をかき乱されるものがあった。やはり友達を殺すというのは他人を殺すのとはまた一つ違うという感じがした。そうでありながら、殺したあとの重四郎は「また一人いなくなっちまったな…」としみじみ言う。不思議なもので、講談を聞く身からすれば友達を殺すことは一線を画すように思われるのに、重四郎からしたらどうも他の殺しと並列っぽい感じなのだ。それがこの男のホンモノ具合というか、怖いところだなと思う。

おふみの告白

この物語の陰の主人公、城富が再び登場する。主の佐伯に付き添って大黒屋に泊まることになった城富は芸者衆の前で見事な浪曲を披露し、よきおなごを充てがえということになる。そこで選ばれたのが気立てのよいおふみだった。おふみは三五郎がいつまでも帰ってこないため、年季は明けているものの自ら大黒屋の遊女に戻っていた。素敵な一夜を過ごした2人。おふみは城富に、初めて会ったとは思えないと本心から告げる。この日のことが忘れられない城富は幾度となくおふみのもとに通うようになり、気持ちが通じ合った2人は大黒屋の後押しもあり夫婦になる。ある日城富が大黒屋の旦那に挨拶に行こうと言い出すと、おふみは沈んだ表情で大黒屋の旦那が怖いと言う。三五郎は生きているうちに、重四郎の殺しを全ておふみに話していたのだ。おふみは初めはばかなと思ったが、返り血を洗う重四郎の鬼のような面を見てしまった記憶と結びつくものがあり、紀州飛脚の下手人を殺したのも三五郎を殺したのも重四郎ではないかと思っていることを明かす。そして、日光街道幸手中宿の殺しも、と言いかけたところで城富は息を呑む。

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おふみ、よくぞ話してくれた、というラストである。この席、私は結構好きである。おふみと城富の夫婦がお似合いで素敵だ。城富を大黒屋に連れて行った佐伯の鷹揚な感じも好きである。この睦まじい夫婦が背負うものの大きさにドキドキしながら続きを聞ける、ほっこりしながらも次なる緊迫感の訪れを感じる回。

城富奉行所乗り込み

父の真の下手人が重四郎だと知った城富は、勇んで大岡越前守のもとへ向かう。自分は大岡様の首を預かっているのだと言って越前守の目通りがかなうと、おふみから聞いた仔細を語る。翌日おふみも全く同じ内容を寸分違わず語る。嘘を言っている様子ではなかった。越前守は重四郎に自白させるまでは首をつけておいてもよいかと城富に訊き、首をくれてやるのが楽しみだと呵呵大笑する。それを見た周りの者たちは越前守がおかしくなったのではないかと訝る。

重四郎召し捕り

大黒屋のある神奈川は伊那半左衛門が裁くことになっており、丁重な手紙を書いて許可を取った大岡は捜査に入る。ある日大黒屋に来た十数名の旅人は座敷での遊びに忙しい。そこで喧嘩が起こり、収まりそうにないそれを止めにかかった重四郎、耳元で「御用だ」と囁かれる。周りの者たちも御用だと叫び、旅人風情の者たちは皆役人だったと判明する。重四郎は逃げて刀を手に取ると役人たちを斬りに斬って外へと逃げ出す。追手はどこまでも迫っていた。屋根裏へと逃げるも、一斉に水をかけられ、さらにはそこに油も混ぜられて重四郎は屋根から落ち、とうとう捕まることになる。

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やっと捕まってスカッとする気持ちに、ちょっと寂しい気持ちが混じる。最後に派手な暴れ方をした挙げ句、すごい人員を割いてのダイナミックな召し捕りとなり、大悪人らしいクライマックスに聴き応えを感じた。


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