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徳川天一坊俥読みレポート 二日目

二日目の時点でこの状態なのはまずいなと思うのだけど、ちょっと疲れが出てきてしまいあまりちゃんと聴けなかった部分がある。とはいえ物語はまた大きく動き、もう一人の主人公である大岡越前守も登場した。あとの三日は体調を整えて来たい。というわけで二日目の感想はさらっと書きます。

「伊賀之亮の荷担」伯山

美濃の常楽院は豪奢な外観を晒し護衛を立て、物々しい雰囲気を放っていた。そこに天忠坊が唯一「先生」と仰ぐ伊賀之亮が訪れる。天忠坊は伊賀之亮に、実は吉宗公のご落胤をこの寺で育て上げたのだということを伝え、天一坊の家臣にならないかと持ちかける。伊賀之亮はその話に乗ることにしたが、天一坊の顔を見るや一転、偽物だと怒って帰ろうとした。赤川大膳と藤井左京は斬りかかろうとするが、伊賀之亮は気迫でそれを制した。帰ろうとする伊賀之亮に天一坊はこの策略に至った一部始終を話し、計略に力を貸すよう頼む。ついに伊賀之亮はそれを呑み、一同に加わることになる。礼儀作法もままならない天一坊であるから、そのまま江戸に行っては優秀な者たちに正体を見破られる可能性が高い。そのため江戸ではなくまず大坂に行くことを伊賀之亮は提案する。

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伊賀之亮が斬りかかろうとする浪人たちを気迫だけで制するというのが印象的だった。そんな人物が味方になればそれは心強いだろう。

「大坂乗り出し」阿久鯉

大坂に移った一同は調度付きの貸家に住み始め、常楽院のときのように葵御紋を戴いて天一坊旅館と記す。大坂の者たちは天一坊を召し捕ろうとするがうまくいかない。

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阿久鯉さんの大坂町人がリアルで軽やかな演技でよかった。伯山はだいぶシリアスでこちらも力が入ってしまうが、阿久鯉さんはリラックスして聴ける安心感がある。こんなに違うと思っていなかったので、俥読みの面白さを堪能できている感じがして嬉しい。

「伊賀之亮と土岐丹後」春陽

今回の俥読みのピンチヒッターでありこの席が初登場となった春陽さんは朗らかに登場して揚々と続きを読み始めた。

大坂城代を謀ろうとする伊賀之亮は、土岐丹後に呼ばれると大名行列を作って馳せ参じたが、門が片扉になっているのを見て、土岐丹後が通るときには両扉なのにご落胤が通るときには片扉なのはおかしいと主張してそのまま引き返した。先供の赤川大膳のみが門をくぐったことになり、天一坊の生い立ちについて訊かれる羽目になる。その後、大坂城代は江戸に使いを遣って証拠の品の確認をとり、天一坊をご落胤と認めるに至る。

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伊賀之亮は堂々たる頭脳派ぶりを発揮しているのだが、赤川大膳は春陽さん本人も言うように今までになく泣き虫でおもしろキャラになっていた。特に、土岐丹後の前でいざとなれば切腹しなければならないと説明する伊賀之亮と赤川のやりとりが滑稽だった。春陽さんも良い意味で俗っぽくて聴きやすいし素敵だったのであとの二席も楽しみになった。

「越前登場」伯山

大坂城代も京都所司代も天一坊をご落胤だと認めた。いよいよ江戸に向かった天一坊は伊賀之助、天忠坊、赤川大膳、藤井左京とともに老中らに会うことになる。そこには大岡越前守もいた。彼らの顔を見た越前守はそこに人殺しの人相を読み取ると、天一坊が偽物のご落胤であるという可能性を疑い始める。再度の取り調べを主張する越前守は四面楚歌となってしまう。

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裁きを生業とする優秀な越前守らしさがあるが、それでもやはり人相を読み取れるというのはすごい。でもそりゃあ、ここまで悪事を成してきているのだから顔に出るものは何かしらあるだろうなと思う。大岡越前守は戦隊モノならレッドをやりそうな、間違いない王道ヒーローの感がある。大岡越前守は吉宗の時代の人物でありながら他の時代の話にもお構いなく出てくるらしいのだが、そうなるくらい人気が出るのも頷ける。三日目以降の彼の活躍が楽しみだ。

二日目を終えて

令和の世の中はコンプラだとかが騒がれ、知らない人に責め立てられるのが当たり前になった。そんな世の中で、この講釈の場でだけは、周りのことなんか何も考えず好き勝手生きたアウトローな人間の話を思いっ切り楽しむことができる。そんなことを伯山は話していた。確かにその通りで、だから私はこの機会をこんなに楽しんでいるのだなと思う。そして、楽しめているのは講釈師たちの腕のおかげなのはもちろんだが、時代が隔絶していることで別世界として味わうことができているのだろうとも思う。

それにしても、アウトローな奴らのほうが楽しそうに生きている、というのはなんとも皮肉で、その真理にとても人間の不条理を感じる。

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