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【館ハシゴ】中近東文化センターと古代オリエント博物館

ずっと行きたいと思っていた中近東文化センターに行ってみたのと、久しぶりの古代オリエント博物館を訪問した。午後からスタートしたので、2箇所巡るのはちょっと時間が足りなかった。それでも充実の一日となったので、気づいたことを少し書いてみたい。

中近東文化センター

中近東文化センターは三鷹市の西のほうにある。駅からも遠く、アクセスがよいとは言えないこの地に、急激にその建物は出現する。

「みたかむかしの中近東」なる看板がある。よく考えたら不思議な言葉だ

見学には予約が必要なので当日の思いつきで訪問することはできないが、予約自体は電話かメール1本でできるので難しくはない。入り口から「ルリカ」が出迎えてくれてかわいい。

入り口のガラスにいるルリカ

エジプトで出土した焼き物のカバが所蔵されていて、その愛称がルリカだ。濃い青色が美しい。ファイアンスという焼き物で、ガラス加工が発達する前から作られていたらしい。ルリカ含め、所蔵品の解説がホームページに充実しているのもよい。

受付で予約していることを伝えると、入館料支払いののちパピルスのしおりを記念にもらった。ガチパピルスにテンションが上がる。

展示室には地域と時代が分かる年表が置いてある。それと展示品を見比べていつのどこのものか照らし合わせながら見た。

麦を石で挽いてパンを作って食べていたということで、石挽き体験ができるコーナーがあった。平日昼間で予約制となると他のお客さんはほとんどいなくて、その日誰かが体験した形跡がなくやっていいのか躊躇してしまった。そこに書かれていた解説でアラビア語の地域差について触れられていた。同じ麦のことを言うにも、エジプトだとこう呼ぶとかあるらしい。広いアラビア語圏で方言があるのは当然だと思うけど、自分に近づけて考えるのが難しいほど大昔の世界でも現代と同じようなことが起こっていたと思うと面白い。

もう一つ驚いたのは、メソポタミアというと粘土板に文字が記されていたことが有名だが、それはもともとは一文字ずつ小さな粘土の塊に記されていたらしい。それをトークンという。それをまとめて粘土板に記すようになった。トークンってプログラミング用語でもあるから、こんなところで出てくるのに驚いた。世界は巡っている。

中近東文化センターは三笠宮殿下のご発意で作られたとのことで、三笠宮殿下の研究を特集したコーナーもあった。実際にアラビア語学習に使っていたノートが展示されていたり、海外の学者とやりとりして著書の翻訳権を手に入れるまでの様子とかが残されていた。三笠宮殿下のことはあまり知らなかったけど、この展示を通して中近東研究への熱い思いが伝わってきた。

最後に庭を少し散歩して、次の目的地へ向かう。

つつじ咲く庭
建物も素敵

古代オリエント博物館

JRに乗って池袋のサンシャインシティへ。その最上階にあるのが古代オリエント博物館だ。よしもとの学校が隣接していて、トイレに行こうとしたら生徒だと思われたのか挨拶されてしまいどぎまぎした。

井上靖の字が出迎える

立派な題字が壁に書かれているのを見つつ長い廊下を抜けると、受付とミュージアムショップがある。そのまま廊下を進むと展示空間に出る。

古代オリエント博物館も常設展示が充実している。大きいパネルでの映像展示が最初にあり、次に見えてくるのは実寸大の家の模型だ。中近東文化センターにもあった麦を挽く道具とかかまどとかがある。土で作られる家はやがて壊れてしまうので、その上に新たに家が作られる。これが繰り返されることで、後世に掘り出したときに地層のように異なる時代の遺跡が発掘されることになる。

パンを焼ける家
地層みたいなテルの解説

メソポタミアとかでは、スタンプ印章や円筒印章が用いられ、粘土に捺すことによって封泥としたりしていたらしい。スタンプ印章は普通に上から捺すタイプで、スタンプ印章は転がすように捺すことで絵柄を無限に繰り返すことができるという便利グッズである。これらを合体させたスタンプ円筒印章なるものも存在するというのが驚きだった。

分析中で展示していないものがあるってまさに研究がなされているライブ感があってワクワクする
スタンプ印章はそのものも捺したときの絵柄も様々でかわいい
円筒印章の図柄もめっちゃ色々あってそれぞれ意味がある
合体したさらなる便利グッズ

東西交易のことを取り上げているコーナーでは、地中海から発掘されたアンフォラという入れ物が展示されていた。これは中近東文化センターにもあった。はるばる海を渡る交易が行われていて、その一部が失敗に終わったから、こうしてこの資料が残っている。

表面のごつごつ感が、長く海の底にいたことを生々しく伝えている

円筒印章グッズ

各博物館で円筒印章のレプリカをゲットできた。あと円筒印章ペンは転がすようにスタンプを捺せて円筒印章を使っていた人々の気持ちになれるのでこれもよかった。

下の橙色のヤギっぽいやつが円筒印章ペンでコロコロやったやつ

まとめ

現代とは隔絶しているようにすら感じる古代の世界を垣間見るのは楽しい。この2館は展示解説も丁寧だし、楔形文字を粘土に書く体験ができるコーナーがあるなど、地理的にも時代的にも離れた文化を知って近くに感じられる工夫がある。

文字を持ちそれを残す手段を発明した人々がいたり、円筒印章が使われたり、海上輸送に失敗した人々がいたからこうやってかつての人間の営みの一端を知ることができるというのはすごい。かつての人間を知ろうと研究して明らかにしてきた人たちもすごい。歴史の大きな渦の端っこに自分がいることを知ることができるよい時間だった。

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