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#2 邪視随筆 「墨の引力と真の効能」

拙作「邪視核臓図」も魔退治の為に朝のラジオ体操を始めていることでしょう。

インドでは厄除け用に墨が売られています。れっきとした邪視避けの御守り。国民に欠かせない化粧品です。

《白檀を浸した布を芯にして、ひまし油を燃やしたランプで出来た墨が原料。ムスリムからヒンドゥー教まで用いられる。アイライナー代わりになり、眼の健康に良いとされる。邪視に弱い乳幼児の衣服にも塗られる。》

墨が邪悪な視線を吸い取る、美しい瞳をわざと黒くすることで嫉妬を寄せ付けないという教え。
時折、あちらの乳幼児や女性の額に描かれた黒点が見られますが、この墨を使って魔除けを施していると思われます。

ラバーリィというインドの牧畜民に近代(~1970年代)まで、「幼児婚」という風習がありました。

儀式は、たっぷりと縫い付けられたミラー刺繍の着物を纏った赤ん坊が主役。

司祭が女神に祈り、与えられたトーテムによる名付けが決まるまで
子供が邪視に射抜かれ殺されぬよう、華護具の役目を果たしました。

さぁ想像してみてください。

物凄く煌びやかで壮大な色とりどりの布。
太陽燦々、草いきれ。
所狭しのご馳走は食べられたくてウズウズしている。
牛も今日はミルクを出すのを休んで、ご相伴に預かろう。

あらゆる人々がはち切れぬ程
“加護に幸あれ!“
そう祝福する中で

「私も赤ちゃんが産みたかった」
「うちの子は死んでしまった」
「あの人の子供を産むのは私だった」


「「「この子がうちの子なら良かったのに」」」


そう呟く、かつて母(になる予定)だった民の本心。

全てが赤ん坊に届かぬよう、何百も縫い付けられた小さな鏡のみキラキラと旺盛だ。
産まれたばかりの子供には知る由もない…………。

おお、なんと恐ろしくも美しい光景!

邪視は、このように反射光や浄化に弱いとされます。
一部の鳥や虫は光を嫌い、あるいは求め、生物は時に自ら火に飛び込み、身を焦がします。

エルワージは著書でこう述べます。
「さらに、強い光には対象となる生き物に応じて正の魅惑
強力な吸引作用と負の魅惑
すなわち抑止的な効果があることが経験的によく知られている」

明日は「不浄による浄化」についてお話しましょう。


この流れで新作を紹介。

『粘膜 -人寰-』
Cycle Mucous Membrane
‐The society «Shape of Spites»‐

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読みは[じんかん]、寰はクヮンと発音。
天下つまり世の中、人の流れを意味します。
私たちは日常において幾つもの視線から免れることは出来ません。

自らその魅惑の対象として務める者、
精神的支配権力者、
災いを取り去るべく奔走する者、
世を儚み、見ることも見られることも捨てる者。


みな、産まれた時の魂の重さは同じ。
生き方で質量や色を変えていく。
抵抗しても受け入れても、運命は平等に降り注ぐ。

弊害を乗り越えた先に宿る信念の形は

Heelでしょうか?
Heroでしょうか?

それも、邪視の取り方ひとつ。
どっちを生きますか。

問い合わせ先→乙画廊  https://otogarou.theshop.jp/

電話番号06-6311-3322

メールアドレスb-mitsou@kc5.so-net.ne

ご高覧お待ちしております。


参考文献・引用資料
「国立民族学博物館 展示物説明」
E.T.エルワージ「The Evil eye」

#南方熊楠 #赤木美奈 #粘菌画家

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