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書評『モテないけど生きてます:苦悩する男たちの当事者研究』(青弓社)

「ぼくらの非モテ研究会」という一風変わった研究会があります。神戸大学 発達科学部の卒業生,西井 開さんが主宰されているのですが,その西井さんが,会のメンバーとともに『モテないけど生きてます:苦悩する男たちの当事者研究』を出版されました。​

いやー,ちょっとだけ読もうと思ったら,面白すぎて,各種締め切りをぶっちぎって,最後まで読んでしまいました…(関係各位申し訳ございません)。​

もしかすると一部のかたには,本書のタイトルを見て,「モテないだけでそこまで深刻にならんでもええやん。生きるとか生きないとかおおげさな」とか「四の五の言わんと,モテる努力すればいいやん」と思われるかもしれません。私も,自分のモテなさを棚に上げて,ちょっと思ってました。​

ただ,本書に出てくる当事者の悩みやそこから自分たちを研究する様子を見ると,そんな生易しいものではないことがわかります。「モテない」ことからくる劣等感・被害感を一心に背負いながらのたうちまっている様子がよくわかります。すさまじいです。​

読んでいくと「モテない」とはきわめて個人の問題であるとともに,「普通」の「男らしさ」から外れると,即,社会から排除されてしまう,きわめて社会的な問題であることに気づかされます。​

…と,まぁ深刻ではあるのですが,そんな「非モテ」に悩む男たちが集まって語る様子を見ると,なんだか,ほっとする読後感があります。ちょっとくすっともしますし。不思議。​

文章を通して,競争的男らしさの渦中にいた当事者が,その問題を認識し,かつ,そこから距離をとっていける様子が伝わるからでしょうか。そして,その距離をとれる背景に,彼らの共同性やユーモアを感じられるからかなぁ。​

~~さて~~

20歳の青年がつきあったり,コンパしたり,深夜まで酒を飲むのは「定型的」な青春です。そういう映画や漫画が多い,というかほとんどです。でも,それだけを「青春」としていいのかな?​

本書に出てくる平均30歳の男性たちは,自分のモテなさ・苦しさをそろりそろりと語り合ったり,かたや,壮大な理屈でモテない理由を分析したり…。研究会が終わってもうどん屋で21時まで語りあいます。酒も飲まずに。​

私(たち)のイメージする「青春」とは違います。でも,そこには,共同性・ユーモアがあふれ,希望を一緒に手探りでさぐろうとする「もう1つの青春」が確かにあります。そして,このオルタナティブにこそ,私たちにも通じる「生きやすさ」のかたちがみえてくるように思います。​

「男らしさ」が主題ですが,そこを窓口に様々な社会の問題,自分のありかたを考えることができます。​
みなさま,ぜひ。​

それにしても,西井さんのように,大学で教えていた学生たちが次々と世に出るようになってきました。感慨深さと同時に,そら歳もとるわなぁ,としみじみします。​

そういえば,最近,リングフィットをはじめましたが,年甲斐もなくはりきりすぎたせいか,腰をいためました笑。シップがかかせません。「英雄1のポーズ」がまずかったな…。「ももあげ」とか10年以上してなかったしな…。

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