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たったそんな一言に

そこに、ポオンと置いてくださいと
アンダースローのソフトボールのピッチャーみたいな
ジェスチャーを交えて
燃えるゴミの日に、清掃員の方が声を掛けてくれる

おはようございます
よろしくお願いします

そういって、女三人ゴミなんかそんな出ない
小さな白いレジ袋に纏めたゴミを
ゴミの山にそっと置く

暑さにむせ返るような
オエっと餌付きたくなるような匂いの中
対価を払っているとはいえ
人のやりたがらない大変なお仕事を
母親のような年配の方がしておられると

自然と頭が下がる

けれども

そんな綺麗な話じゃない

私は毎週月曜と金曜日のゴミの日に
この方に、ここに捨てるようにと指差しされる度に
イラッとムカッと小さく泡立つ気持ちを抑えている
そんな小さなことで

情けない
けれど不快に感じてしまうのはどうしようもない
口角上げてご苦労様ですと
チャリを跨いで逃げるようにその場を去って
それを表に出さないようにするのが
精一杯

どこに捨てるかまで
どうやって捨てるかまで

それが些細な箸の上げ下げであればあるほど

人に言われたくない
決められたくないし
決め打ちしてくる人に対して腹が立つ

その方が山が崩れないとか
崩れながらゴミの山を積み上げた人にしか
わからないご苦労があるのかもしれない
崩れたら積むの大変なのよって

ああ、それはかつての自分の姿
今も隠している自分の一部
正しいからと
そうしたほうがいいと
人に指図して
その通りにしないと
なんでって苛立つ

世界を一色で塗ろうとする
善悪とか正負とか単純な世界への誘惑

多分ブーメラン自分に返ってくるのを見て
同族嫌悪
そこに自分を見て嫌になる

ってことを自転車をこいで職場に向かいながら思っていたのを
仕事をしていたらすっかり忘れてしまって
ああ何を思っていたんだ
今朝の自分と交信できない自分の海馬
最近怪しいなあと苦笑いするけど

大丈夫私には強力なフックがあるって
忘れたまま大船に乗って仕事してたら

さっき
夕焼けに職場が染まり行くのを見ていたら
真っ赤な空を見ただろうかとBUMPが聞こえてきて
西の空ではなくて
光る東の空を
朝日ではなくて夕日に東の空が桃色に光るのを
青い夜のカーテンが引かれるまでの短い時間を捉えて
写真に撮ったことを思い出して

ああブーメランのことだと
安心してください
思い出しました笑






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