私と頭虫と水曜日

今の職場の同僚たちは
私のマネジメントもしてくれて
私向けのメールをプリントアウトして机の上に出しておいてくれたり
残業しようとすると
その仕事は明日利用者のいる時間帯にもできるやつですよね
だったら今日はもう帰りましょうと促してくれる
うーん小さな事業所で一人で全部やるのに慣れてるから
ひとりで仕事したほうが捗るし
誰かがいると嬉しくなってついつい
ぜーんぜん関係ないこと
悟空よりピッコロに父性を感じませんかとか
優生保護法の違憲判断と出生前診断の違いについてどう思いますかとか
生まれる前の命でそれが実の親が判断することだから普通に行われてますけど
神の領域に踏み込む迷いのある行為だと思うんですって
ぶっ込み始めるから
ああそうですね今日のこれはもう仕事じゃないですね飲み屋でやるやつですね帰りますと

二人ともそれぞれのチャリに跨り
彼は国体選手どころか日本代表で球技で戦ったことのある人だから
ひとりならもっとサアッと颯爽と
風のようにペダルを踏んで消えていくのだろうに
ガニ股赤毛に合わせてノッタリ走ってくれる
けれどそれも数秒の門までの間で
私は左に
同僚は右に
じゃあお疲れ様でしたまた明日と別れて

暮れゆく空を横目に見ながら
娘のお下がりの未だ現役のiPodを小耳に
ユーミンの飛行機雲を絶唱して
南にチャリを走らせると
無数の小さ虫が丁度頭の辺りに群れて
私は勝手に頭虫って呼んでるんだけど
頭虫が鼻の穴から入り込む

グゲエエエ
フンフンッツと慌てて鼻息荒く虫を吹き出そうとする

全くもう失礼しちゃうわよ
勝手に鼻の穴から人の体ん中入んなっつーのとぶりぶり怒っても
ペダルは漕ぎ続けていると

ふわああ
1日の疲れか大欠伸
そしたら塞がらない空いた口で
次なる頭虫の大群を食べてしまい

ベエエッツ
ペッペッと
吐き出そうと悪戦苦闘する

なんだよ全くもうと
怒りが笑いに変わって
ふふふと目を細めたので

次の頭虫の大群に差し掛かったときには
目からは虫が入ってこなかった笑

笑う門には福来るとはよく言ったもんだなと
くだらないことを思いながら

異動して3ヶ月
ボケの赤毛と称号を頂いた
前の施設長の方がツッコミ担当の方だったので
やりにくいに違いないのに
心地よく盛り立ててくれる同僚に
心からの感謝を込めて水曜日を折り返す