ハレの日とお財布と
ママ、私財布が欲しいな。小銭のところが壊れちゃって、お賽銭して歩いてるみたいなの。
日芸の文化祭帰り道、池袋西武前で次女が呟く。
ああ、私が最初にちゃんとしたお財布を両親に買ってもらったのも、確かこのくらいの年頃だった。横浜元町に行った時、キタムラで紺地に白のラインの入った水兵さんの制服を思わせるハマトラらしい財布を選んだ記憶が。
そうだね。丁度いいね。デパートで見てみようか。
デパートの一階と言うのは何処でも、節電もなんの笑照明もキラキラ、プンプン香る化粧品の匂いと、もっと若くもっと美しくあらんと競う店員さんお客さんの女の執念みたいなものに、チリチリとスパークル火の粉が飛び散るみたいで、数少ない女が主戦場の世界に目を細めてしまう。
私も女だけど、そこは私の川中島でも関ヶ原でもない笑
お財布は二階売り場に。
好きなものを選びなさい。長く使うものだから、ずっと使いたいと思うような自分が飽きない、本当に気に入ったものを選ぶんだよ。そしたら大切にするってことにもなるから。
次女は絶賛受験生。毎日毎日朝は5時起き6時半前には学校に向かい朝学習。からの夜は河合塾の椅子を温めて、夜8時過ぎに自宅に帰宅するまで、おそらく勉強に缶詰になっている。
ケの日常には時折ハレが必要。
人はパンのみにて生きるにあらず。時にはブリオッシュが必要だ。ちと違うか笑。アントワネットちゃんが混線笑。
デパートで綺麗なお姉さんに上げ膳据え膳で接客してもらい、美しい色、洗練されたデザイン、滑らかな手触りを確かめながら、自分の気に入ったものを選ぶ至福のとき。
ー内側のピンクがすごく可愛いから、これにします。
次女が選んだのはkate spade の黒の財布。内側の淡いピンクと表革の黒のコントラストが美しい。こういう時は一切正札を裏返さないで決めるのが我が家流笑
お値段はゼイコミサンマンニセンエン。その前の財布はベルシカで3000円くらいだったと思うからマルが一個増えた。二階級特進やな笑
ブランドのロゴが印刷された深い緑の箱と紙袋に、アジアの真珠のような嫋やかに美しいお姉さんが包装してくれる。エコバックに入れろなんて野暮なことはここじゃあ言わない笑
ありがとうございました。また何かありましたらお寄りくださいませ。
最敬礼で深々とお見送りしていただく。
いや、多分もう2度とは来ない。10年後かな笑。自分で自分の財布は買うんだよ。小さくてもいい。がま口だっていい。男に買ってもらおうなんて絶対思うな!
だいたい高い買い物をする時は、偶然その場に居合わせて、パッと思いついて、すごく気にいるものがあった時で、まあ、一言で言えば衝動買いなんだけど笑
次女に言わせるとこの前京都に行った時、画廊にふらっと寄って、イキナリ日本画気に入って抱えて買って帰った時と今日は似てるそうで笑
ママに言わせたら、それこそ一期一会だよ笑
毎日使うものだからそこに物語があった方が愛着も湧くし、何かの時に今日のことが自分を勇気づけてくれるかもしれない。
モノを買うときに物語も一緒に購入できたら、いい買い物だと私は思う。月が太りだした夜に。
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