見出し画像

熱量を

自分以外の身体で生きたことがないので
結局他人のことはわからない
それは血がつながっていようといまいと
親子だろうと兄弟だろうと
そもそも夫婦は他人だし

だから自分がそうなことは
自分にとっては
そうとしか生きられないので
何も特別なことではなくて

ただ、改めて
書くものがエネルギッシュだとか
勢いがある
というようなことを言っていただけると
そうなのかと自分では驚く

そうなのかと
自分の体しか知らないから
ある意味これが普通でデフォルト

でも自分が実際に
元来エネルギッシュだったか
またはプライベートでもそうかと問わば
実は必ずしもそうではない

この熱量は対人支援職に就いて
意図的に身に着けたものが大きいと思う

元々の自分はもっと冷めて
蜘蛛の糸を登る人を
自分さえ良ければと後ろ足で蹴落とすタイプの人間だ苦笑

ちょっと小指にささくれがあったって
気になるし
ちょっと針の孔くらいの火傷だって
ジンジンするし
気温は冬と夏とじゃ
実は二十度くらい乱高下しているけど
体温は二度上がったら
もうフウフウフラフラだ

身体は繊細で変化に弱い

なのに

ある朝突然
自分の身体半分が思うように動かなくなったり
ある夜を境に
大切な人の名前を思い出せなくなったり
ある日を境に
それまでの自分とは違和感だらけの
身体で生きていかざるを得なくなった方を

毎日おはようございますと
迎えるのが私の選んだ仕事だ

人の生死にかかわる仕事だから
熱量上げていかないと
その人を支えるなんて絶対にできやしない
てゆうか元々そんなことできやしない
ただ傍にいるだけだ

でも私がもっていかれて
その人を巻き込んだら
共倒れになってしまう

それじゃあ仕事失格

だから空元気さね
毎日
自分で自分の尻っペタひっぱたいて
スパンキングじゃないぜ笑
自分を鼓舞する
自作自演の発熱のチコ

生きていくのが簡単じゃないからこそ
生きるのに必死だからこそ
体温は36.5℃
熱量上げていかなかったら
生きられないんだ

同情は要らない
配慮は必要だ
でも病人扱いは要らない
不自由はある
でもそれ以外自分は自分で変わっていない

そう
教えられた

私がこの事業所に異動してきたその日に
具合が悪くなって
入院した利用者さんがおられて
翌日に、どうしたかしらなんて話題になって
ええ、心配ですね。
お見舞いに行きたいですって
しれっと口にした私に

何、いい人ぶっていってんじゃねえよ
優しい人だって思われたいのかよ
そんなの要らねえんだ、
同情するなら金をくれっていうだろ
あれだよ、あれ

と蔑むような眼で見られ
私は絶句してしまい
言葉を返すことが出来なかった

異動して初日
何の関係性も築けていない者が
命が懸かっているかもしれない病室で
何を口にするつもりでいたのか

こっちは死線を踏み越えてきてるんだ
社交辞令、お仕着せの言葉
そんなの要らねえって

私のお追従に怒りを表されたんだと
今ならわかる

あれから15年は経っていると思う
再び日常を奪われて
亡くなる方を何度も見送ってきたし
普通のお仕事をしている方に比べたら
圧倒的に多く
生と死が隣り合う場面に
少しだけそこにいさせてもらった

けど
決して慣れることはないし
慣れたくもない

毎回凹んで

ナニクソーって
誰に何を言ったらいいのか
わからんから
ジュウジュウ網に焼き付けて
やけくそみたいにホルモン食べて

なんだか勝手に復活して笑

そしてまた自分の持ち場に戻る

半紙一枚分ずつ
熱量を上げて
今の熱しやすく冷めにくい笑
自分がいると思ってる






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?