赤神 音羽というモノになる前に

僕は東北のある町で生まれ育ち、大願とやらを抱えて上京し、27歳で伝説になると繰り返しながらライブハウスを転がり続け、アルバイトはバックれ続け、気づけは26歳になっていた。

ふと立ち止まり、もう少し、バンド以外の時間を幸せに過ごしてもいいんじゃないかと魔が差して提出した履歴書が面白がられ、ソーシャルゲームの会社に入ってからは、水が合ったのか幾ばくかの才能があったのかで、トントン拍子に評価され、気づけば27歳になり、伝説の入り口にも立てなかったことに絶望した。

それでも、音楽以外の表現ができることに支えられて馬車馬のごとく働き、アルバイト時代と比べて給料が4倍位になったところで、ふとまた立ち止まり、会社を辞めた。

フリーランスとやらになり、すぐに会社を作って、気づけば今である。

2017年に、自分の集大成とも言えるかもしれない仕事に巡り会えたと思った。あんなに目立ちたがり屋で承認欲求の塊だった自分が裏方に回ることすらなんとも思わなかった。

でもまた、立ち止まったのであった。

何度目かはわからない。
伝説になりたくてバンドに心血を注いだつもりになったり、自分の作品を作ると言って会社を辞めたりしたが、結局まだ、僕は誰かの何かを作っている。

そして、何者にもなっていないのであった。

何者かになりたくてずっと転がり続けている気がするからこそ、また転がり始めようと思うのです。

赤神 音羽とは。
何者かになりたいと願い続けた男を依代とし、今から何者かになる、今はただ赤いだけの何かである。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

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