「コンフィデンシャル」 『L.A.コンフィデンシャル』『スペンサー・コンフィデンシャル』『コンフィデンシャル/共助』:創作のためのボキャブラ講義48

本日のテーマ

題材

『L.A.コンフィデンシャル
(1997年の映画。ロス市警の活躍を描くサスペンス)

『スペンサー・コンフィデンシャル
(2020年のネットフリックスオリジナル映画。元ボストン警官の活躍を描く)

コンフィデンシャル/共助』
(2017年の韓国映画。韓国と北朝鮮の刑事が共闘し活躍する映画)

意味

コンフィデンシャル confidential
 秘密。特に国家秘密などの重大なもの。またそれら秘密を打ち明けるようなこと。


解説

作品解説

 さて普段の形式だとタイトルを題材にするのは少し難しいのだが……。映画を見ているとたびたび、邦題によく使われる語彙というのを目撃することになる。今回の「コンフィデンシャル」もその中のひとつだ。タイトルとして使われてはいるが、作中では特に言及がないというこういう言葉は、調べないと意味がよくわからないことがままある。

 『L.A.コンフィデンシャル』はアカデミー賞を取るなど評価の高い映画。50年代のロサンゼルスを舞台に、警官殺しを追う二人の対象的な警察官が活躍するサスペンスだ。しかし作品全体で警察官が普通に違法捜査に拷問、正当防衛の偽造などやりたい放題でいくら50年代でも誰か指摘しねえのかという有り様である。

 『スペンサー・コンフィデンシャル』は元ボストン警官の主人公スペンサーが活躍する映画。捜査を歪めた上司に怒り暴行をした罪で5年を服役したスペンサーが出所したところ、その上司が殺害される事件が発生。同時に別の警官が殺害されていたが警察はその警官に上司殺しの罪をかぶせ、我慢できなくなったスペンサーが動くという典型的な作品。

 『コンフィデンシャル/共助』は北朝鮮と韓国の刑事がタッグを組んで事件を追うという作品。北朝鮮を絡めたこういう作品普通に出せるのか……と思うところだが、そのへんは当事者の韓国の空気感はこっちには分からない。『鋼鉄の雨』とかも北朝鮮が普通に出てくるし、意外と韓国ではこういう話はポピュラーなのかもしれない。

原題との関係

 ざっと三作品を概観したが、時代や国が違えどいずれも警察官が活躍する映画なのが分かる。前者二作はいずれも原題から「confidential」の語が使われ、原題そのままの邦題なので特にどうということでもない。日本流の翻訳の趣味が出たという話でもなさそうだ。

 一方韓国映画の『コンフィデンシャル/共助』は原題が『공조』らしく、これはおおむね「コンジョ」という発音で「共助」を意味する。つまりこちらもほぼ原題通りの訳だが、そこに「コンフィデンシャル」を付け足した格好だ。まあ「共助」はあまり聞き馴染みのない語彙だし、それだけだと検索で引っかかりづらくもなるだろうから適切な判断だろう。

 しかし「コンフィデンシャル」と「共助」が組み合わさっているのでてっきり英単語にその意味があるのかと思ったが……。まあそれだと他の映画のタイトルと意味合いが噛み合わないので。警察官が活躍する特殊な任務の映画なので、それこそ『L.A.コンフィデンシャル』などから着想を得て付与されたのだろうか。

 というか今調べたが、続編が『コンフィデンシャル 国際共助捜査』というタイトルなのか。シリーズものにしたって、もう少しいいタイトルがないのだろうか。

型破りな

 「コンフィデンシャル」に「極秘」の意味合いがあることからなんとなく察する通り、これらの作品に出てくる刑事はいずれも型破りで破天荒、社会のルールや法律より自分の正義感を優先する人物だ。『L.A.コンフィデンシャル』のようにそれが空回りしてツッコミどころしかないパターンもあるが、『スペンサー・コンフィデンシャル』のように典型的ながらも好感の持てる正義漢に仕上がっていることもある。

 一方、北と南の合同捜査のように任務自体が破天荒ということもある。警察映画はえてしてこうした特殊で破天荒なものが多いので、必然「コンフィデンシャル」という「この作品は秘密裏の警察の作戦を描いています」というニュアンスのタイトルが付くのだろうか。

 こうした、あるジャンルに特有のタイトルに使われる語彙を調べてみるのも面白そうだ。

作品情報


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