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「或る方」一人の為に 2話

自宅のように

娘さんには
家具は何でも持って来て下さいね
とお伝えしています。


「或る方」がお部屋で目を覚ました時に、
自分の家具や馴染みの物があれば、
自分の場所だと思ってくれると思うからです。


3人娘の長女で、お母様想いの娘さんは
「これも良いですか。あれも良いですか。」
と私に聞き、
何度も寸法を測ったりして、
タンス、鏡台、キッチンにあったポットとお茶台、チャブ台、ソファ、カーテンなど
家に有ったものを持って来てくれました。

住んでいた家と同じような部屋のできあがりです。

これなら「或る方」も納得してくれるかな…
少しホッとします。

「電気ポットも良いんですよね?」
もちろんです。
「家ではスリッパも履いていたので履いてもらっても良いですか?」
もちろんです。


介護施設に入る事で、
施設のルールに従わなければならず、
自由を奪われてしまうことは往々にあります。

生活習慣を守りたい。
お引越しくらいの気持ちでホームに入って欲しい。
そんな気持ちでした。


職員を説得

不安もあります。
今まで、電気ポットを置いていた方は居ませんでしたし
みんな靴下で統一されています。

絶対、職員に
「危険だから」
って言われるよなー。

職員に生活歴や自宅でのご様子などを詳しく説明します。
できる限り自宅での生活を継続して欲しい事も伝えます。

前のホーム長

わたしの前のホーム長は
職員を大切にする方で
利用者さんが「困った行動」をすると「職員が大変」という考え方の人で
利用者さんが「困った行動」をしない対策を取って
職員から信頼を得ようとする人でした。

利用者さんに「困った行動」をさせないようにする為に
今までホームがやってきたことは

出来るだけ利用者さんを動かなくさせる
という事です。

そのホーム長に育てられた職員達です。

不安…

でも、とりあえず、職員たちは話しを聞いてくれました。



後は「或る方」が来てから
「或る方」に合わせて考えていくしかない。
そう一人語ちました。


続く…


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