あのTENGAさんと、アートをやってみた。
男子の圧倒的支持を誇るTENGA。
そう、あのTENGA。
自慰行為をサポートするグッズ・・・
いや、ここはあえてはっきりと「オナホール」のTENGA。
そんなTENGAをテーマにしたアートを我々OVER ALLsで制作し、BAMBOO EXPOという商空間デザインの素材の展示会で発表した。
なぜTENGAさんとアートをしたのか。
そんなTENGAの担当者Yさんとは、弊社役員の旦那さんの紹介でお会いすることになった。一度、打ち合わせましょう、ということで麻布十番の綺麗なビルにあるTENGAさんの本社に伺い色々な話をした。
僕らは企業理念を壁画にしているということ。
企業理念アートとは本質を炙り出すことであり、その会社の最も根幹の部分を表現することが可能だということ。
TENGAさんはアダルトグッズとかジョークグッズの会社、という領域から少し出たいということ。
どうしても「TENGA(笑)」という感じで言われるが「(笑)」の部分をそろそろ無くしたいと考えている、ということ。
「愛と自由と」というテーマを真剣に世の中に訴えたくて、夏にロケットを飛ばそうとしているということ。
この辺りを語り合って「今度、面白いことしましょうね」と言って別れた。
この「今度、面白いことをしましょうね」という言葉は、
マラソン大会における「一緒にゴールしようね」、
ラブホテル前における「絶対に何もしないから」、
関西人の「行けたら行くわ」、
と並ぶほど実現されることのない言葉だ。
だが僕の言う「今度、面白いことしましょうね」は違う。
僕は必ずやる。絶対にやる。
今回もそのつもりだった。
そんな時にBAMBOO EXPOという商空間デザイン素材の展示会への出展のお誘いが来た。何回か展示ブースを出させて頂いており、非常に面白い展示会。展示会なのに16時以降は無料でお酒が出る、別名「展示のある飲み会」。
でもコロナ禍でBAMBOOさんも苦しんでいた。開催にはこぎつけられても、お酒は出せない状況になっていた。
逆境こそアートの出番。
僕は気付いたらTENGAのYさんに電話していた。
大きな会社なのに「声かけて下さって嬉しいです!面白そうですね!是非やりましょう!」とまさかの一発OKのお返事。そして、BAMBOOさんにも出展意思とTENGAさんとの合同出店の旨を電話。商空間デザインとTENGAはあまりにも無関係だ、断られてもそれはやむなし。
でも、BAMBOOさんからの回答も「面白そう!やばいね!是非!」だった。
TENGAをどんなアートにしたか。
こうして、TENGAさんと一緒にBAMBOO EXPOに出展する話が決まった。
僕の周りには「今度、面白いことしましょうね」を本気でやる馬鹿な大人が多いのだ。
とはいえ、その会話をしたのが展示会本番の2週間前。
急ピッチで話を詰めた。そこでテーマを決めた。
デザインとアートの境界線。
TENGAさんのデザインは素晴らしい。
そこから着想を得たアート作品、いわばデザインとアートの中間のような、
単純にカッコよさを目指した作品を作った。
TENGAの外装を破ると中には目眩くアートのような世界が広がっている、という作品群。
また、TENGAをそのまま擬人化ならぬ擬アート化させた作品群。
これらは「TENGA(笑)」の「(笑)」の部分を薄めるために、なるべくクールに仕上げた。
企業の「本質」をアートにするということ
そして、悩んだのはメインの作品。
デザイン的なものでは無く、本質に迫りたかった。
いつもOVER ALLsでやっている「企業理念を絵にする」という本質を突くようなアートにしたかった。
このために、何度も何度も見たのがこのムービー。
このムービーを何度も見た後に、感じたこと。
この人たちがTENGAを通じて実現したい世界は「誰しもが自分の『好き』を尊重し合える社会」だ、と。
そのために誰のためにロケットを飛ばすのだろうか。
それはきっと子供たちのためだ、と。
かつての松本少年のためだ、と。
本来、TENGAさんのビジュアルに子供を出すというのはご法度なのかもしれない。でもアートというコマーシャルを離れた表現だからこそ挑戦出来るのではないか。
そう考えて、人種も国境も性別も飛び越えるロケットを見上げる少年、という絵にしようと考えた。
そこに描くテーマは「A WHOLE NEW WORLD」。
差別も争いもないまるで新しい世界。世界に風穴を開けるという意味とオナ「ホール」を入れる遊び心。それを「ベルリンの壁」をほぼ実寸大でプリントした壁紙に描いた。
ここには最早「(笑)」など入る隙は微塵もない。
この絵から感じるイメージはジョンレノンのイマジンのような。そんな愛と希望のメッセージだ。これがTENGAさんのやりたいこと、そう考えてメインアートにした。
TENGAのYさんに見せた。
「ちょっと泣きそうです。鳥肌も立ってしまいました。」
最高の言葉を頂いた。
「正直、こんなに僕たちTENGAが受け入れられた展示会は初めてでした。『TENGA(笑)』の『(笑)』がとれて、心理的障壁がなくなった気がして。」
企業が表現する、ということ。
僕らが今回のTENGAさんとの合同展示会でチャレンジしたかったのは、
企業が素直に表現したい思いを実現する、ということだ。
企業は普段、商品やサービス、広告を通じて様々なメッセージを発している。だがそこには必ず経済合理性という壁というか要素がついて回る。
その中で純粋な企業の思い、法人も人なり、ということから出てくるものを、そのまま表現する、という機会はあまりにも少ない。
でも実は消費者はそれを求めている。
機能性や値段だけでは無く環境負荷の低い製品を選んだり、企業としての姿勢が好きなブランドの製品を選んだり。
就職活動なんかでもそうだ。
条件なんかより企業の考えに共感できるかどうかをポイントに選んでいる求職者も増えて来ている。
(事実、Wantedlyという人気の求人サイトは年収等の条件記載を禁止している)
そんな時代の中で、企業が商品や広告などでは表現しきれなかったメッセージを発する必要性が高まっている。
実はアートにこそ、いや、アートだけはそれが可能なのだ。
今後も企業がアーティストと組んでメッセージを発するための作品を作る事例、というのは増えていくに違いない。そうなると、広告の意味も大きく変化してくるし、企業という存在の意義すらもアップデートされていくような気がする。
そんな未来のために僕らは今日も企業理念を絵にしている。
「楽しい国、日本」を実現するために。
A WHOLE NEW WORLD!
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