nanoloop 3 memorandum

概要

nanoloopはOliver Wittchowの開発したステップ入力式の作曲ツール。nanoloop 3はヴァージョン表記3.xxでリリースされるiOS版およびAndroid版の同ツールを指す。なお、nanoloop one(version 1.xx)はGame Boy版、nanoloop 2(version 2.xx)はGame Boy Advance版である。プロジェクトはいずれも独自フォーマット.NANで編集されるが、相互に互換性はない。

nanoloop official site
nanoloop for iOS

nanoloop for Android

このnanoloop tipsは既存のマニュアルに詳細に記述されていない点を、気づいた限りでまとめる。iOS版とAndroid版のヴァージョンの表記は統一されていないが、双方の最新ヴァージョンで確認される事象を扱う。セクション名等、各用語は主に日本語マニュアルにならう。ただし、このマニュアルは旧ヴァージョン時のものであり、ここから追加あるいは削除された機能が多数存在する。

nanoloop iOS 日本語マニュアル

検証 version: nanoloop for iOS ver. 3.26
検証機種: iPhone 4S, OS ver. 7.1.2

仕様に関する備忘

音色(インストゥルメント)

・FMのmodulation frqは16段階で設定可能だが、これは実際には128段階の値(0~127)をマスクしている。したがって、modulation frqをスワイプで調整し直すと、同じ値であっても、他の音色タイプに切り替えた時、影響が出る場合がある

『modulationの値とpulse width, phase, fine tuneの値の相関』(modulation frq)…(pulse width, phase, fine tune)
1 … 0~7
2 … 8~15
3 … 16~23
4 … 24~31
5 … 32~39
6 … 40~47
7 … 48~55
8 … 56~63
9 … 64~71
10 … 72~79
11 … 80~87
12 … 88~95
13 … 96~103
14 … 104~111
15 … 112~119
16 … 120~127

(例:modulation = 3, pulse width =16の時、modulationを3から4に変更し、さらに3に戻す。その後音色タイプを矩形波に切り替えると、pulse widthが16~23の範囲内で偏差が生じる)

シーケンサー

・パラメータからは、音色の設定値をもとに、volumeは減算、それ以外は加算しかできない

・パラメータの最大値を音色の設定値を上回るものにすることができる。最大値はパラメータの種類によって異なる

『音色パラメータの最大値』
(パラメータの種類)…(最大値)
volume, attack, decay, cut off, loop length … 127
modulation frq … 143(16 + 127) *実質的には254(127 + 127)
lfo amount, lfo frequency, modulation, pulse width, phase, fine tune … 254(127 + 127)
offset … 154(127 + 27) *155以上はサンプル再生範囲外
base note … 15

・バンクなしからバンクありに変更した場合、パターン5~8に入力されていたステップは消去されず、バンクBにそのまま移行する。ただし音色は引き継がれない

・各パラメータのアイコンをタップすることによってランダマイズをおこなえる。pitchのランダマイズは必ず-c~bの範囲に安定する。1オクターヴ上の音階(+c~+b)はランダマイズ操作を繰り返すうちに下降する

『ランダマイズの対象』

(パラメータの種類)…(ランダマイズ対象)
pitch … 音階
それ以外のパラメータ … 値(0~127)

1チャンネルで最大2音もしくは3音同時発音可能。原則として、1パターン1ループのなかでは、実際の減衰量にかかわらず、新しいステップに出会うたび、同時発音可能なステップのセットは継時的に移行する
たとえば、c---d---e---f--g(-は空白)という配列において、cgやcfgといったポリフォニーは成立しない。前のディケイ値がいくら大きくても、継時的移行のなかで、セット(同時発音数が3の場合、cde、def、efgと移行する)から漏れる前のノートは強制的に休止するため
ただし、パターンとパターンの間(「パターン間」と呼ぶ)ではこの継時性の原則が崩れる(前後のパターンは同じである必要はない)。そしてパターン間の同時発音数は、休符を除いた直前のパターンの入力ステップ数に依存する(ポリフォニーバグ)
たとえば、同時発音数が3の場合、あるパターンのステップ数が1なら実際可能な同時発音数は1。よってパターン間のポリフォニーは絶対に成立しない。ステップ数が2なら同時発音数は2。前パターンの1ステップを引き継ぐ(ポリフォニーのセットに含まれる)可能性がある
ステップ数が3以上なら同時発音数は3(既定値)。前パターンの2ステップをパターン間で引き継ぐ可能性がある。したがってc---d---e---f--gという配列をループさせると、fgc、gcdという新たなポリフォニーのセットが生まれる可能性がある

同一チャンネルで音色を切り替えた場合、前後の音色の同時発音数によって同時発音の移行がいかに処理されるか
(*画像訂正必要あり)

https://app.box.com/s/f7jrnyvrnx9abzc3tazn69e1r7tz3aju

・ペースト機能でコピーされるのは、カットした時点でのパターンではなく、(場合によってはカット後変更を加えられた)現在のパターン。つまり、カットボタンはコピーするパターンの位置をセットするに過ぎない

ソングエディタ

・1チャンネルのなかで持つことのできるサイン波の周期は1種類、かつバンクの間で共有される。サイン波の周期の開始位置は、再生の実行後、最初の発音(音量1以上のステップの再生)時にランダムに選択され、ユーザー側が任意に指定することはできない。この選択は音色タイプおよびLFOの形状に関係なく発生する。プロジェクトのエクスポート(WAVの書き出し)時にも、このランダム性は適応される
サイン波の周期のタイミングは最初の決定以後変化せず、無音やバンクの切替でリセットされることはない。唯一、休符のみが周期をリセットし、開始位置を固定することができる。リセット後周期が開始するのは、先と同様、休符後の最初の発音時になる

・同一のチャンネルで音色を切り替えた場合、音色の実際の変化は音色変更後のパターンのステップで起こる(次のステップに出会うまで、前の音色の減衰音は持続する)

・再生範囲の選択は再生中にも変更することができる

・ソングエディタのカーソルはシーケンサーのチャンネルと関連づけられている。パターン番号自体に関しては、最後にいたシーケンサーの編集パターンがチャンネルごとに記憶される。したがって、ソングエディタからシーケンサーに切り替える時、カーソル下のパターン番号に必ずジャンプするわけではない

・プロジェクトの再生は、パターンが置かれているかどうかにかかわらず、最終的に最後尾256パターンまで進み、停止しない限り、ソングエディタ上の256番目のパターンがループする。WAVの書き出し時にはこのループが実行されることはないので、曲の再生時間はbpmと最後に置かれたパターンによってほぼ決まる

・2ページにまたがってパターンを範囲選択することはできない。ただし、ページ内に収まらなかったコピー・パターンは次ページにペーストされる

再生コントロール

・337049 bpmまで倍加可能。337050 bpm以上は倍加不可能だが、2分の1にすることはできる

ファイルメニュー

・プロジェクトのロード時に自動再生されるかどうかは、現在の再生状態(オン/オフの2通り)によって決まる。旧ヴァージョンのプロジェクトはロード時に自動的に「オン状態」に変わり、必ず再生される

・再生中のままWAVの書き出しをおこなうと、冒頭に残響音が混じることがある

既知のバグ

シーケンサー

・バンクなしからバンクありに変更した場合、バンクB~DがバンクAと異なる音色タイプだと、パラメータの表示が乱れる。乱れ方には規則性があり、バンクAの音色設定(矩形波/FM/ノイズ/サンプル)によって決まる

・volumeの初期値が128になっている。スワイプで調整し直すと最大値127に戻る

・swingの小数点の位置がおかしい場合がある(例:「.1」ではなく「..1」)

・(ポリフォニーバグ)音色パラメータの同時発音数が2以上にセットされていても、パターン内に1ステップしか入力されていない場合、本来持続するはずの減衰音は以降のパターンのステップで強制的に休止する。つまりパターン間でポリフォニーの無効化が生じる。該当ステップのディケイ値をいくら大きくしても、このリセットは起こる。これを回避するには、パターン内のどこかに音量1以上のステップを入力する必要がある。ただし音量0のステップ(休符)はこの「もう1つのステップ」にカウントされない

・swing factorが一部のパターンで正常に機能しなくなった時は、正常な.nanファイルを読込むしかない。ソングの新規作成やアプリの再起動は無意味

ソングエディタ

・1行のみをコピーできない(コピー&ペーストの範囲は2行以上である必要がある)

・枠内上部2行を個別に、またまとめて選択できない

・枠内下部1行をコピーできない

・範囲選択を再生しながらシーケンサーに切り替えた時、パターンが正しく表示されないことがある

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