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2023年の外出 感想・記録・報告

2022年12月29日から2023年12月30日にかけて、足を運んだイベント(音楽系が多いが、それに限らない)について、Twitterやnoteに散発的に記録を残していた。備忘も兼ねて、直接的・間接的に言及した人名・グループ名から、投稿を索引できるようにした。私の関わった出来事は日付を太字にして、DJ MIXやインタヴューへのリンクを張ってある。イベント名の先頭の記号「◇」から、出演者が全員銘記された概要を知ることができるページに飛ぶことができる。以下、略号について改めて記す

    • 最後の間食

      わたしの実家で、母方の祖父母は一代限り、米屋を営んでおりまして、わたしが子供の頃は、土間で大きな時代遅れの精米機がまだ動いているのと、店のなかで天井まで充満するぬかの匂い、独特の粉っぽさを覚えております。あいにく実家の住所は商店街から離れていまして、客らしい客は来ず、お得意さんから注文があったときは、厚い紙袋に包まれた精米を、背丈の低い祖母が大人用の三輪車をのろのろ漕ぎながら配達していました。商売としては半分暖簾を下ろしているのが子供の目線からでさえわかりました。 米屋の店主

      • ひとつの声、ふたつの影 of a voice, its two shadows

        12月14日、男女共同参画センター横浜南フォーラム南太田・音楽室にて、「ひとつの声、ふたつの影 of a voice, its two shadows」。吉田アミの特異な発声パフォーマンスと、佐藤実 -m/s、ASUNAによる電子機器を用いたその解析に基づく検証=演奏が交互に繰り返される(前者の録音は累積していく)。二つの系列から、同一性と模倣(ミメーシス)の水準が問われる。最終日だけあって、前日の公演からブラッシュアップされている旨、予め告知があった。 まず消灯。後方のスク

        • 点「CHARAGRAMY」展

          11月4日の夕方、池尻大橋MANUAL+PREFAB presents "Platform"にて開催される、点(ten_do_ten)さんの個展「CHARAGRAMY」へ。今秋9月のSHIBUYA PIXEL ART 2023「HAKKO」において、後述する「CHARAGRAPHY」シリーズから一作品《m.i.c.k.e.y》を展示していたが、間を置かず作品に多く触れられる機会ということもあり、足を運んだ。 点さんは2001年、公式サイトの年表と照らし合わせるとデラウェアから

        2023年の外出 感想・記録・報告

          SHIBUYA PIXEL ART 2023 HAKKO

          2023年9月24日、MIYASHITA PARKに直結するホテル「sequence」の四階ラウンジで行われたクロージング・パーティをもって、「シブヤピクセルアート 2023」の十日間に及ぶ全体会期が終了した。2017年に始まり、七回(期)目を迎えた、渋谷界隈を舞台にオンラインを越えたピクセルアートの祭典(と言ってよいだろう)、「シブヤピクセルアート」。本年は『HAKKO』——開催主旨によれば、「発光」と「発酵」のダブルミーニング——をテーマに、古民家でのグループ展を含む九会

          SHIBUYA PIXEL ART 2023 HAKKO

          SIDミュージックをいかに辿るか

          最近、円秀さん、Rei8bitさんからそれぞれ、Commodore 64の音楽のディグの仕方について尋ねられたので、個人的経路――何を標識にしてきたか――をまとめてみました。雑誌メディアもディスクガイドも特集せず、DiscogsやShazamでも掴まえられない、ストリーミングサーヴィスもBandcampも全貌を伝えない音楽をどう追跡するか。 Rei8bitさん、円秀さんへ SIDミュージックのエコノミーを知る インターネット上でCommodore 64(以下、C64)の

          SIDミュージックをいかに辿るか

          later/alter――久保田翠『later』

           計画を立てることで、時間を組織化する。自分が再び生きられるようになるまで。 ――ドン・デリーロ『ボディ・アーティスト』上岡伸雄訳、ちくま文庫 このアルバムを聴いた者はきっと一度ならず「later, later」と反芻するにちがいない。少なくとも私は想像する。特に、あなたが一度でも「生き直す」ことを試みたことがあるなら。 「later」――先送り、遅刻、会合の約束、未知の承諾、再来或いは復活、事後の訪れ、余韻――「後で」、とは実に不思議な時の了解の仕方ではないだろうか。「

          later/alter――久保田翠『later』

          アメリカのスケッチ (2005)

          *2005年09月24日、mixiにアップした文章の再掲です。 Stranger In A Strange Land 1. Stranger In A Strange Land / Leon Russell '70 2. Dust Bowl Ballads / Woody Guthrie '40 3. 泰安洋行 / 細野晴臣 '76 4. Sun Song / SUN RA and his Arkestra '57 5. Trout Mask Replica / Capta

          アメリカのスケッチ (2005)

          鈴木志郎康『あじさいならい』『15日間』(2006)

          *多摩美術大学上野毛キャンパスにおいて、2006年3月17日から20日にかけておこなわれれた鈴木志郎康教授退職記念映像展「表に現す」で上映された作品について。私が赴いた日時を正確に特定できないが、17日か18日であったのは間違いない。ばるぼらさんの話から同大学の「夜間学校」(造形表現学部)の廃止を思い起こされ、かつてかいた小文を再掲する次第である。 参考URL http://www.catnet.ne.jp/srys/films/films-mokuji.html https

          鈴木志郎康『あじさいならい』『15日間』(2006)

          ”our uprising will remain with us,”――「蜂起/野戦攻城2017@駒場」に寄せて

          私たちが、なんであれ探し求めている瞬間には、私たちは至上権を持って(souverainement)生きてはいない、私たちは現在の瞬間を、あとに続くであろう未来に従属させている。[1] 来たか長さん待ってたホイ。 何の因果か、建設現場に出入りしていた時、土工の親方が私の顔を見るなりニマリと笑みを浮かべながら投げかけてきた言葉を、桃山邑氏の話から私はふいに思いだした。当時の私は肩書き上、零細ゼネコンの現場監督であったが、一日のほぼ全てを敷地に拵えられた仮設事務所の外で過ごす、末

          ”our uprising will remain with us,”――「蜂起/野戦攻城2017@駒場」に寄せて

          MODアーカイヴ手引 #1

          MODアーカイヴ手引 #0 私たちはアーカイヴとコレクションをいたずらに対立させてしまったかもしれない。また、私たちが見てきたのは、全てのファイルをダウンロードすることが意味をなさない――何も聴いたことにならない――、適宜利用するのが望ましいサイトばかりであった。今回とりあげるのは、その全貌がはっきりと見える、今後その内容がほとんど、あるいは全く変化しない十分に踏破可能な小規模なコレクションである。ここに収録されたMODはほぼ全て、前回紹介したアーカイヴ・サイトから入手可能

          MODアーカイヴ手引 #1

          MODアーカイヴ手引 #0

          偉大なアーカイヴは存在するが、それだけで探求する対象を包含できてしまうような、自己完結的な、完全無比のアーカイヴはおそらく存在しない。アーカイヴは必要な情報を入手する場所である以上に、知を自分なりに組み立て、育て、次の未知への手がかりを見つける一つの道具に過ぎない。それに対して、コレクションは自己完結的で鑑賞を主な目的として持つ、相対的に消費的な集合だと定義できるかもしれない。貴重なものを、つまりひょっとするとこの世から消失してしまうかもしれないものを保護するという使命を、コ

          MODアーカイヴ手引 #0

          夢みる権利――米本実氏の「錦糸町」をめぐって

          "Yesterday's weather - only better." - theweatherchazz *以下の小文は、米本実氏が2016年6月にブログに発表した「全ての音楽は「錦糸町」か、「錦糸町でない」かに分類できる」という文章を受けて書かれたもので、引用はすべてこの「錦糸町」論に依っている。 「ムード」とは、使用の度にやっかいな曖昧さにつきまとわれる言葉である。だが、CDやレコード、カセットテープといった記録媒体に「封印」された音楽には、たしかに、漠然とした情

          夢みる権利――米本実氏の「錦糸町」をめぐって

          Music of the Spectacle: Alienation, Irony and the Politics of Vaporwave

          Original Text: https://daily.bandcamp.com/2016/08/23/politics-and-vaporwave/ Author: Simon Chandler Published Date: 23/08/2016 一見、ヴェイパーウェイヴの政治学(ポリティクス)は政治学と呼べるほどのものではない。消費主義で感覚麻痺に陥った世界を連想させる『Floral Shoppe』や『Nu.wav Hallucinations』、『Deep Fan

          Music of the Spectacle: Alienation, Irony and the Politics of Vaporwave

          エキゾチック・アニマル (2007)

          Donkeys, Dogs, and Wolves 1. On the Corner / Miles Davis (1972) 2. A Piazzolla / Leopoldo Federico Trio (2001) [1995, 2001] 3. 野生の思考 / 菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール (2006) 4. Tito Puente and his Concert Orchestra / Tito Puente (1972) 5. Orfeu Negr

          エキゾチック・アニマル (2007)

          ジャスコテック・ノート

          ここでは、あれこれの楽曲をかかげ、「これがジャスコテック」であると早急に名指すことや弁別的特徴をあげることはひかえ、いかにジャスコテックが成り立つか、いくつかの構成要素を引き出したいと思います。 ジャスコは浸透する まず、ジャスコテックはその名の通り、場所の音楽です。ジャンルとしての音楽がこれまでも地名の名を冠してきたことはありました。フィラデルフィア、デトロイト、シカゴ等です。楽曲単位に視線を移すと、数えきれないほどになります。 一方、ジャスコはスーパーのブランド名です

          ジャスコテック・ノート