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【スマブラ Advent Calendar 2023】 スマブラ界隈で通訳した話


はじめに

初めまして!スマブラやってるかさうぃと申します。後程詳しく自己紹介はするとして、スマブラ界隈でプレイヤーとして、翻訳通訳担当として活動しています。

今年は非常に貴重な経験をさせてもらい、感じたことがあったのでこれをシェア出来たらなと思い、寝椅子さん(https://x.com/newenwere)主催のスマブラ Advent Calendar 2023にて執筆することにしました!

海外渡航の自由度が上がり、日本で海外勢を、日本勢が海外へという頻度が増加した昨今で、より海外プレイヤーや海外大会に興味を持った方、もしくは英語や外国語に興味がある方は是非一読いただければと思います。

自己紹介

改めまして、かさうぃと申します。
初めましての方も多いと思うので、私がどういう人かをスマブラ視点と一般人視点で以下に記します。

スマブラー視点↓↓↓

  • メイン:ヨッシー

  • スマブラ歴:64、DXは友達と乱闘、XとForは触ってない、SPから競技シーンを知り、競技的に取り組む

  • 実力:篝火やウメブラの大型大会の予選を通過できるくらい

  • スタッフ:色々な大会のスタッフ、VGBCでの英語実況

一般人視点↓↓↓

  • 帰国子女(小3~中3でアメリカ西海岸)

  • 社会人

  • 資格:英検1級、国連英検A級

端的に言うと「そこそこスマブラが出来て、英語しゃべれる人」です。

どこで通訳した人なの?

今年は海外渡航がここ数年と比べるとしやすくなったことや様々な人の尽力により、多くの海外勢が日本に来て、篝火#10や多くの大会やイベントに参加するという素晴らしい出来事を目の当たりにすることが出来ました。

そして、多くの海外勢が来るということはそれだけコミュニケーションを取れる人が必要になるということで元々VGBCで英語実況として参加していたのもあり、篝火#10, #11, Tokyo Smash Boot Camp等で通訳をしました。

5月開催 Tokyo Smash Boot Camp (https://www.youtube.com/watch?v=loC0buAeErw)より
篝火#10にて配信台での機械トラブルを通訳する私
by うってぃー(https://twitter.com/kamera_k_rool)
10月開催 Tokyo Smash Boot Camp (https://www.youtube.com/watch?v=VVwwDfrUxG8)より

仕事で海外のチームとミーティングするなどで通訳をしたり、文章を翻訳したりはやっていましたが、配信で多くの人が見る中でやるのはこれが初めての体験でした。
しかも、通訳する相手が世界で活躍するトッププレイヤーたち!実際に配信を見てたり、動画を見たりしていた憧れのプレイヤーたちだったわけです。
緊張こそしましたが、色々と学ばせてもらったのでこれらをシェアしようと思います。

通訳は共同作業

映像の字幕を作成したり、文章を翻訳するのと違い、通訳は(ほぼ)リアルタイムで行われます。
この時、いくら通訳者の英語(もしくはその他外国語)が堪能であっても対応が非常に難しいことがいくつかあります。

  • 一回で通訳する内容が長い

  • 固有名詞が頻発する

  • その国特有の文化や価値観に関する用語や慣用句を用いる

いらすとやより (https://www.irasutoya.com/2014/09/blog-post_849.html)

それぞれについては後述しますが、通訳は通訳される側も「通訳され慣れてるか」がかなり大事です。
伝えたいことはいくらでもあるはずですが、そんな中で如何に簡潔にまとめられるか、どのくらいの長さが会話のテンポを崩さないか、などわかっているかで同じ内容でも大きく印象が異なります。
通訳者の技量ももちろん大事なのですが、信頼関係を築き、お互い空気を読みながら言葉を交わす必要があるので、私は「通訳は共同作業」だと思います。
それでは前述した点を具体的に解説します。

いらすとやより 初めての共同作業 (https://www.irasutoya.com/2016/07/blog-post_41.html)

一回で通訳する内容が長い
これはもはや言わずもがなですが、単純に覚えられません。通訳をする場合、話し手の区切りがついたところで入って通訳するという流れになるのですが、この区切りが中々来ないことがあります。日本人同士の会話でも長い話の内容を1回聞いてすべて覚えるのはかなり難易度が高いです。「あれ?最初の方なんて言ってたっけ?」ってなっちゃいます。

固有名詞が頻発する
スマブラゲーム内の用語などであれば覚えていなくてもまだ話している内容から推測などできるのですが、人の名前や場所の名前はかなり難しいです。特に知らない人や場所だった場合は、一回聞いて綴りや発音がピンと来ないので覚えるのがかなり大変です。
例えば、

「この前、AさんとXってとこで遊んでて、そこにたまたまBさんとCさんが居てたんだよ!あ、Cさんは私の同僚でBさんの後輩なんだけどね。結局、人が増えたからそのあとYで電車に乗って、Zに移動して飲み会したんだ!」

と内容としてはそんなに複雑じゃないのですが、ここまで多くの人の名前や場所を言われると難易度が跳ね上がります。
固有名詞で難易度が上がるのは知らないと覚えにくいということに加えて「ミスが許されない」からです。仕事は言わずもがなですが、雑談でも固有名詞を間違えて通訳した場合、話のオチや大事な部分がまったく伝わらなかったり、間違って伝わってしまいます。

その国特有の文化や価値観に関する用語や慣用句を用いる
慣用句やことわざなどは言語が違っても似たようなものが大抵存在するのでそこまで大きな問題ではないのですが、国特有の文化や価値観を表現するような用語は通訳するのが難しいです。ある意味固有名詞ではあるのですが、一つの言葉に含まれる意味や背景を受け手が理解していないと会話が途切れてしまいます。
特に、宗教周りのことは日本人の場合触れる機会が少ないので、説明するのが難しいです。しかも、同じ宗教や文化であっても度合いが個人で異なります。
例えば、以下のようなものがあります(もっと細かく条件や例外などもあります)
・キリスト教の人は日曜日朝に教会に行く
・イスラム教では豚肉を用いた料理は食べられない
・ヒンドゥー教では牛肉を用いた料理は食べられない

雑談でご飯の話というシンプルに見える話題でもこのような背景があると、通訳で説明を要する場合もあります。

ちなみに、上記のような現象はインターネットミームが無数に誕生している現在、同様に起きます。
ネットミームは地域性が高くて、同じ漫画やアニメが流行っていても異なる形でネットミームになることがあります。

スマブラ界隈で使われることがある漫画アニメ系のネットミームの一例として
・「勝ったなガハハ」ーガーリッシュナンバー
・「逆だったかもしれねぇ・・・」ーナルト
・「判断が遅い!!!」ー鬼滅の刃
などがありますが、これらをどう訳すのか、ニュアンスをどの程度伝えるのかの判断を即座に求められるのが通訳の腕の見せどころではあります。
しかもこれらはとんでもないスピードで消費され、新たなミームがどんどん誕生します。

日本語は割と便利な言語(※個人の感想)

個人的に日本語はかなり便利な言語だと思っています。フォーマルな場でもインフォーマルな場であってもそれぞれに適した言い回し、文法、語尾や人称の使い分けることが出来ます。これによって一文に内包される多種多様な状況、人間関係やその一文に至るまでの背景を演出出来ます。

いらすとやより (https://www.irasutoya.com/2015/08/blog-post_26.html)

例えば、英語で「very ○○」「so ○○」「super ○○」を日本語に訳す場合は以下のように状況に応じて訳すことが出来ます。
・「非常に○○」・・・丁寧な表現。真面目な雰囲気の場。
・「めっちゃ○○」・・・くだけた表現。親しい間柄での会話、もしくはフランクな表現が許されるような場
・「とても○○」・・・真面目よりな表現。「とっっっても」というように促音を強調することでお笑い要素を入れた誇張表現として使うことも出来、くだけた表現に出来る。

さらに日本語はほぼ同じような意味を持たせつつ、語尾を変えることによってニュアンスを変化させることが可能です(ちゃんとした文法用語的には終助詞というそうです)。

例えば、以下の英文の場合、
"I will do it if I need to"

丁寧めで無難に訳したい場合:
「もしやらなければならないのなら、私がやりますよ」

目上からの依頼や頼み事をこなす部下や後輩のニュアンスを乗せたい場合:
「必要とあらば、私がやりましょう」

自信に満ち溢れたニュアンスを乗せたい場合:
「必要ならやるぜ、任せな」

あくまで一例ですが、上記のように同じ英文でも
・誰が誰に対して言ったのか
・やり取りしてる間柄や信頼関係
・直前までのやり取り
等を加味して、大きく元の意味を変えずに様々なニュアンスを付与できます。

おしゃれな英語

日本語の利便性を前述しましたが、今度は日本語に比べて英語でおしゃれになってる例を紹介します。
スマブラ界隈の誰でも伝わる非常にわかりやすい例が新規キャラの参戦ムービーです。

日本語ではすべて「○○参戦!!」となっていますが、英語版は実はかなり粋でおしゃれな言い回しになっています。
スマブラSPの最初のDLCコンテンツとして参戦したジョーカーの場合、

スマブラSPアップデート情報より (https://youtu.be/zKhnQ7ZYgQI?si=2tnILxpzh4gxgcj8)

日本語ではいつもの「○○参戦!!」の形式ですが、英語版の場合、

英語版スマブラSPアップデート情報より (https://youtu.be/FmuTGcbu4Kc?si=npkmx5oZ6TW0CJIr)

"Joker steals the show!"となっています。
「参戦!!」を訳したというよりはジョーカーというキャラを活かしてのフレーズとなります。
これは、ジョーカーが怪盗であることと英語の言い回しにある"○○ steals the show" かけての表現になります。
"steals the show"は
・話題をさらう
・主役の座を奪う
という意味になっていて、訳すとすれば
「ジョーカーが話題をさらいに来た!」
という感じになります。

もう一例をあげるとするとDLC第一弾の3キャラ目として参戦したバンジョー&カズーイを紹介します。

バンジョー&カズーイ参戦ムービーより (https://youtu.be/YRufE4nxn08?si=FQG2Kfc5pwnvf8zl)

日本語ではもちろん「○○参戦!!」ですが、英語版だと

英語版バンジョー&カズーイ参戦ムービーより (https://youtu.be/qyJ4djjQOr0?si=LD9AMNKQx2y7gXji)

これはちょっと複雑です。
to rare: 今か今かと待ちきれない、うずうずしている
という動詞とバンジョー&カズーイの開発会社であるレア社(Rare Limited)をかけてます。
参戦ムービーにもある通り、ドンキーコングシリーズと縁が深く、久しぶりの再会ということでこのような表現になっています。
非常に凝っててほんの数ワードに色々な意味があるようになっているのは本当に上手いなーと思います。
考えてる人天才すぎる。

通訳と信頼関係

これらを正しく実行するには話し手と聞き手の関係性や過去のやり取りなどを詳細に知る必要があります。
通訳するにあたり、自分でそのような情報をあらかじめ収集する必要もありますし、何よりも通訳する相手との信頼関係が大切だと思います。
通訳される側は「正しく翻訳されているかどうか、自分が伝えたいことが伝えられてるかどうか」を確認する術がほとんどありません。
その時の聞き手のリアクションなどで推察することは出来ますが、それもあくまで雰囲気を読み取る程度でしかありません。
よって「この人は信用して大丈夫。ちゃんと伝えたいことを伝えてくれる」という信頼関係を構築することが非常に重要だと思います。

fun2smashさん(@fun2smash)のnote記事でわっちさん(@watch_ssbm)を取り上げた記事でもおっしゃっていましたが、やはり信頼関係は大事です。

実際の通訳をする場以外でも
・時差大丈夫?寝れた?
・日本の電車難しかったでしょ?笑 迷わずに会場来れた?
・自分のプールの場所わかる?案内するよ!
といったような些細な雑談から信頼関係を構築していくとお互い気持ちよく通訳する側とされる側になれると思っています。

英語に触れる、英語を学ぶには

日本で一般的な生活をしていると英語を学びたいと思っても正直英語に触れる機会は非常に少ないと思います。
いくら学ぼうとしてもいきなり勉強机に座って教科書開くのも大変です。とりあえず「英語に触れる」ということに取り組むのが良いと思います。
今では色んな人が英語でどのように言えばいいかを説明してる方がいらっしゃいます。
彼らも非常に丁寧にわかりやすく紹介していて、勉強にもなるので興味ある方は是非チェックしてください。

・エイゴスマッシュさん(https://twitter.com/eigos_mash
動画付きでスマブラ界隈頻出のフレーズなどを紹介しています。

・fobさん(https://twitter.com/funeoritabakka)
普段はスマブラ界隈での出来事を翻訳していますが、ひと昔前にスマブラ用語を英訳し、まとめてくださっています。ツリーにたくさんあるので是非見てほしいです。

・Naruさん(https://twitter.com/naruinvegas
fobさんと同様にスマブラ界隈での出来事を翻訳し、日本のものを海外へ、海外のものを日本へ届けてくれています。
また、最近字幕付きのpodcastをSydさん(https://twitter.com/tinysyd)と始動していて、英語の勉強にもなるので是非見てみてください

・Kevin's English Room
知ってる方も多いかもしれませんが、英語系youtuberの方です。
真面目なものからyoutuberらしい企画まで幅広く扱ってて真面目なやつはちゃんと丁寧で真面目な解説があるので非常に勉強になります。

・サイモンのイキれる英語教室
こちらも有名なチャンネルになりますが、英語系youtuberの方です。
非常に簡潔に英語を学習する上でよくある疑問を解決してくれます。細かいニュアンスの違いやよく聞く英単語が実際にはどのように使われるかなどを知ることが出来ます。

最後に

外国語、特に英語は人の視野を広げ、異なる文化や考え方を知ることが出来る非常に便利なものです。私はたまたま機会があり、英語を学ぶことが出来ましたが、個人的には文法や発音のことは気にせず、応援したい海外選手を見つけたら是非声かけてみてほしいです(勿論、タイミングは選ぶ必要がありますが)。
彼らも異国の地で応援してくれてる人がいるということがネット上で何となくわかっててもやっぱり直接言われるに越したことはありません。そして、彼らも日本人が英語はあまり得意ではないことも知っています。シンプルでいいので
・めっちゃファンです!応援してます!ーI am a big fan! I am cheering for you!
・あなたの○○(キャラ名)が大好きです!ーI am a big fan of your ○○ / I love your ○○.
・トナメ頑張ってください!ーGood Luck on your bracket!
って是非言ってあげてください。喜んでくれるはずです!

カタコトな英語でオッケーです。上手く発音できなくてオッケーです。笑顔で一言いわれるだけで嬉しいものです。
日本人の立場になっても、外国人が一生懸命日本語使ってくれたらそれだけでも嬉しいのがわかると思います。しかも応援してくれてるならなおさらです。

ここまで読んでくださりありがとうございました!
どこかで私が通訳してる場面を見かけたら是非温かい目で見守っていただければと思います。

それではまた次の記事でお会いしましょう!

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