さらば青春の光単独LIVE「すご六」全コント感想。
さらば青春の光単独LIVE 2023「すご六」の感想です。
○日程・会場
全国6都市24公演を巡った今回のツアー、2万枚あったというチケットは完売。
「会心の一撃」~「五穀豊穣」とツアーの規模を更新し続けてきましたが、今回も例に漏れずさらば史上最大規模となりました。
では、今回披露されたコントの感想です。一本ずつ順に。
①オープニングコント「すご六」
最新版の人生ゲーム(2021年製の設定でした)ゆえに、新型コロナウイルス関連の事柄が出てくるコント。一度聞いただけでは頭に入らない複雑な名称の補助金たち、アベノマスク、「34.2℃」といった有り得ない人間の体温、PCR検査/抗原検査、ワクチン接種、などなど…。あった、あった、ありましたと共感しながら観ていましたが、こうしてコロナを笑いにできるようになったことが感慨深くもありました。人生ゲームの中で2人が辿る道筋が、この3年ほど自分たちが歩んできた日々と重なりました。でも、だからこそオチでは考えさせられました。
バーの入口にアルコール消毒のセットが置かれていたのも、きっとこれらのご時世ネタに説得力を持たせるため。今回のライブもただ笑わせるだけでなく、こうした細かいところにもこだわって完成度を高めにきている気概を感じられました。
②イエスマン
実は、自分がこのコントを観たのは2回目でした。昨年11月に開催された、さらば、相席スタート、ハライチの合同ネタライブ「デルタホース」にて観たことがありました。当時のことは遠い記憶ですが、それでも単独ライブ向けにさらにブラッシュアップされていたことはわかりました。
このコントの中では終始
この掛け合いが何度も続きます。同じようなやり取りを何度も繰り返しているとダレそうですが、合間にマネジャーのぼやきを入れるなどして、ダレないような工夫がなされています。そして、そのやり取りの中でRYUJIと先生の関係も徐々に見えてきます。こういうのってコントの醍醐味な気がしますね。
あとは、終盤でRYUJIが先生を求めて喚き叫ぶシーンでは、「芸術家」のコントで演じていた絵描きの発狂ぶりを思い出しました。
また、次のコントまでの幕間でRYUJIの楽曲が流れました。このライブのDVDが発売されたら、ぜひミュージックビデオを特典収録してほしいです。個人的には、あの時間は笑っていいのか黙って聴くべきか判断できずソワソワしていましたが、それはそれで面白かったです。
③それでもボクはやってない
アダルトビデオ(AV)の世界観を、現実だと信じ込んでいる大学生の独白。シンプルな設定ですが、シンプルゆえに終始一辺倒にならないストーリーを構築するのも難しかっただろうなと想像します。東ブクロさんが演じる、「フィクションを現実だと信じている人」のキャラに対して、こういう人いるよなと共感することで生まれる面白さがあります。ただ、その面白さに頼り切らず、駅員役の森田さんとの掛け合いでも笑わせにくるところに手数の多さを感じました。終盤の掛け合いのヒートアップぶりは必見です!
あと、個人的には、風俗好きを公言していてセクシー女優の方々とのレギュラーも持っている森田さんが、「AVに疎そうな人」を演じているギャップがすごく面白かったです。俯瞰して観ることで「中の人」の面白さも感じられる、一粒で二度美味しいネタでした。
④ガンジスのしらべ
序盤は、ヘビが出そうで出ない…というシンプルな展開が続きます。それと同時に、これだけで終わらないよねと少し不安にもなってきます。
しかし、そこは流石チーム森東。ヘビ使い風の男が実はストリートミュージシャンで、ひたすら演奏を続けることで生まれる面白さを乗っけてきました。インドの笛吹きの音楽が、曲としてじっくり聴かせるために演奏されていると思うと、何を見せられているんだろうと思えてきて、東ブクロさん演じる男の挙動がいちいち面白くなってきます。よく考えたら、CDの山も最初から置いてあるのに、旅人が見つけた途端に目につき始めるのも不思議ですよね。
比較的緩やかな進行で、今回の公演の中では少し大人しいコントだと思って観ていたら終盤で一気にラッシュがきました。印象が化けるコントです!
⑤パリヴィ
笑いを生む方法として、よく「常識を裏切る」ことが挙げられますが、その常識が日頃意識していないモノであればあるほど、新鮮な面白さが感じられるように思います。今回だと、ヴィーガン=どこか物静かで賢い人たちの集まりというイメージ(常識)を、知らず知らずのうちに持っていたと気づかされました。だからこそ、東ブクロさんのつかみのセリフ「今日って、ヴィーガンの集まりですよね…?」が、非常に痛快でした。
あとは、森田さんが演じるちょっとイタいパリピキャラも絶妙な塩梅でした。イタいけど「見ていられない」という共感性羞恥は無く、そのキャラをフリにして中盤で発せられるまともな意見にも説得力があって、次の笑いにもしっかりと繋がっていたと思います。振り切って演じているのが面白かったですが、これも先程の「それでもボクはやってない」と同じように、中の人と照らし合わせることによる面白さだと思いました。
他にも、クラブの雰囲気を再現するための映像や音のつくり込みも凝っていました。このコント前の幕間にて流れていたAdoの「踊」も、深夜のクラブに漂う妖艶な雰囲気を思い出す曲選でしたし、セットの一部にだけ映像を映してモニターのように見せる演出も芸術点高かったです。あとは、DJが流している曲の遠近感が緻密で、別のフロアでも曲が流れるように思えて臨場感がありました。そんな中で、あれだけ笑い所のあるネタが繰り広げられたので余計に面白く感じてしまいました。
⑥野球人生
個人的に、一番ツボにハマってしまったコントです。序盤で、明らかに東ブクロさんの声だけ出どころが違うとは感じたのですが、音響の都合だろうと思って流していました。まさか、それがこのコントにおける核の部分を担っていたなんて…。『お笑いライブの観客』の目線で見るとそう思うのは確かですが、『ステージ上の登場人物』の目線で見ると、広いグラウンドの中で一人だけ至近距離から掛け声が聞こえるなんて有り得ないよな、と思えて、わざわざスピーカーを仕込んでまで監督に掛け声を届けたい三浦の執念や、それに気づかず檄を飛ばし続ける監督のことが面白くなってきてしまって、こみ上げてくる笑いを抑えられませんでした。
ピンマイクの扱いも同様で、「三浦役の東ブクロさん」として見るとつけているのは当たり前ですが、「ステージ上の世界の中にいる三浦」として見ると、野球の練習中にピンマイクをつけているのは不自然ですよね。これも、ステージ上の登場人物の目線を持つことで気づけることだと思います。
あとは、「デシベル勝ち」といったパワーワードや、ピンマイクとスピーカーを使いこなしたボケも多く、手数の多さでも魅せてくれました。
⑦タネ飛ばし
小さな村のさくらんぼタネ飛ばし大会に賞金10億円を出されて、巨額の賞金に目がくらんでおかしくなった村人たち。なんとなく情景が目に浮かびそうなのですが、常に想定外の展開が続いて、自分の想像を裏切られ続ける感覚が爽快でした。村が徐々におかしくなっていった様子を語る部分でも、次にどんなエピソードが出るのか想像するのですが、やっぱり想定外の話が出てきました。
そのうち、富豪風の男が青春の熱さに欲情する「アオハル中毒」であることが判り、賞金10億円を出すために自らの命を落とそうと考えているという、なんともサイコな展開へと突入していきます。ただ、2人のキャラクターや見た目、大量のさくらんぼのタネが舞台両袖から飛んでくる画がマンガのようにコミカルで、怖くなりすぎずに観られるのが絶妙です。オチはド下ネタ。このコントのみならず、「すご六」公演の全体がその一言で〆られるけどそれでいいの!?と思いましたが、きっとそれがチーム森東らしさなのでしょう。
○おわりに
今回観てきたコントですが、まずは…どれも凄く面白かったです。
年々仕事も増えて売れっ子になって、コントを考えたり練習したりする時間をどこから捻出しているのだろうと少し心配にもなる中で、これだけ質の高いコントを7本も揃えられるのが凄いと思いました。
個人的には、「目線を変えることで楽しめる笑い」が印象的でした。先述の「野球人生」が代表的ですね。あとは、「それでもボクはやってない」の駅員さんや、「パリヴィ」のモモタのように、「登場人物」としてだけでなく「演じている人そのもの」として観ることで生まれる笑いも当てはまると思います。今回の公演、ひいてはお笑いのみならず、あらゆる物事をこうした目線で観ることで深掘りできると改めて感じました。
また、演出の部分でも楽しめる部分が多かったです。テトリスのブロックのように組まれた3×6の白いボードが、コントごとに形を変えていました。「ガンジスのしらべ」では一匹のヘビが横たわっているように見える形になったり、「パリヴィ」ではステージ中央にゲートのようなものが形成され、両脇のボードにはクラブのスクリーン映像が投影されてクラブのVIPルームを再現したりして、コントごとに異なる画を届けてくれました。
来年は、タイトルに「七」がつくライブツアーでお会いできますかね?「七福神」とかおめでたいタイトルを想像してしまうけど、きっとチーム森東のことだからまた異なるタイトルになるのだと思います。
また来年もお会いできることを楽しみにしています!そして、今ツアーもお疲れ様でした。
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