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Perfume「Reframe Tour 2021」感想。

2021年8月某日。
とある映画館の駐車場にて、スマートフォンを片手に熱狂している数人組がいた。

「Reframe Tour 2021 開催決定。」
彼らの手元のスマホには、そんな文字が躍っていた。


ほどなくして、2021年11月。
Perfumeのコンセプトライブである「Reframe」ツアーが、東京・LINE CUBE SHIBUYAを皮切りに開催した。
過去を再構築する、がキーワードとなり、最新鋭の演出テクノロジーを駆使し、過去のライブ映像や音源を要素ごとに分解し、再構築したショーのようなライブ。
普段の和気あいあいとしたMCや「P.T.A.のコーナー」なども無く、非常にストイックな空気が充満する空間となっている。

過去には2018年、2019年に開催されていたが、いずれも東京公演のみ。
今回、満を持して全国ツアーとなった。
東京、石川、愛知、兵庫、広島の5か所を、1か月ほどで巡る。
Perfume 3人の故郷である広島や、音楽プロデューサーであるCAPSULE・中田ヤスタカの出身地である石川が選ばれていることもあり、界隈はにわかに盛り上がった。
また、こんなご時世柄もあり、ライブ開催が危ぶまれもしたが、「Reframe」は着席して一切声を発さずに観ることが前提にあるため、感染拡大のリスクも極めて少ない。
ある意味、こんなご時世「だからこそ」開催できるライブだった。

そして、その開催地に自分もいた。
つい数か月前にも似たような光景を目にしたはずが、やはり各地で目の当たりにする「開演前の会場に人が行列をなしている光景」というのは圧巻だった。
その土地に住む人たちの熱気や喜び、自分の住む地でライブが開催されることへの感動といったプラスのエネルギーが、そこはかとなく一帯に充満しているのがわかる。

有難いことに、複数公演行くことができたが、どこに行っても同じくらいの雰囲気を感じた。
…自分が今、普段と違う世界に居るような高揚感と併せて。


会場に入り、席につく。
ほどなくして会場の照明が暗くなっていく。
いつものライブのように、手拍子での開演待ちはない。
厳かな雰囲気が流れる。


******
これは後から知ったことなのだが、今回は2019年に開催された「Reframe」の再演だった。
しかも、ずいぶん最初の方から公式からアナウンスされていたらしい。
どおりで、一度観たことある演目が繰り広げられていたわけだ、と腑に落ちた。

一度観たことがあるものでも、そこに何か新しい気づきや楽しみを見出したい。
そんなことを思いながら、あの日観た光景を頭の中で何度か反芻する。

一度観たことがあるのは確かだが、2019年と全く同じではなかった。
明確に違ったところ。1つ目は「最後の曲」。
2019年は、当時の最新曲「Challenger」だったが、今回は「ポリゴンウェイヴ」だった。
これも、その時の最新曲。
観客も、最初は黙って観ていたが、曲の途中であ~ちゃんが手拍子を煽り出すと、呼応するかのように手拍子を始める。勿論、自分含めて。
手拍手を浴びて踊る3人の表情は、心なしか輝きを増したように見えた。
手拍子の音だけではなく、そこに込められた想いも届いていたなら嬉しい。
やはり歓声、それが無理なら手拍手を受けながら踊れるというのは、アーティスト冥利に尽きることなんだな、と気づいた。

2019→2021で、世の中が変わったからこそ得られた気づき。
きっと、歓声も手拍子もガヤも出し放題な世の中が続いていたら、この気づきは無かったと思う。

2つ目は「kiseki - Visualization」の演出。
Perfumeのライブ、アルバムリリースの「軌跡」を、リミックスされた楽曲のメドレーにのせて振り返る。
背後の映像も、白黒の無機質な色合いながらもゴリゴリに拘っていて、この演目のことを心の中でこっそり「スタイリッシュ年表」と呼んでいる。
2019年は「Reframe2019」までの振り返りだったが、今回は2020年に開催された「P Cubed Dome Tour」と「POPFES」、2021年に開催された「Perfume LIVE 2021 [polygon wave]」の3つが追加されていた。
ライブの振り返りの時は、背後に開催日の表記と、開催地を地図上でクローズアップした絵が映されるのだが、「P Cubed Dome Tour」の振り返りの際に『2020/2/26』の表記があったのを見逃せなかった。

当時の感染者拡大の影響を受け、ライブ当日に中止を余儀なくされた日。
千秋楽を迎えられる喜びが、悲しみと絶望に変わった日。

そんな日でも、Perfumeの歴史の1ページに刻もう、受け入れて前に進もうという気概が感じ取れて、慌ただしい振り返りの中で思わずジーンときてしまった。
次の「POPFES」に移るギリギリのタイミングで日付が出たのも、様々な迷いや葛藤を経てその日も含めたように感じられた。
新たに追加された演出の中でも、特に印象に残っている部分。

明確に違う、と感じたところからの気づきはこんなところ。
他にも、2019年の公演から違いは無かったけれど、新たに気づいたことがある。

「Record」という演目。
その場で、3人の声を順番に録音して、どんどん新しい声を重ねたり、サンプリングしたりして1つの曲を完成させる。
前の人が4分のリズムに合わせて声を発すると、次の人は少しずらして(半拍ずらしている、って言い方でいいのだろうか…よく分からなかったのであえてぼかします)発声して…を繰り返すことで幾重ものリズムが重なっていき、曲が完成する。

演目の内容自体は2019年の公演と同じなのだが、今回新たに思ったことがある。
どうやって、3人はお互いのタイミングを合わせているのだろう。

というのも、この演目では、3人が同時に発声や振り付けをする部分もあるのだが、全員が立方体状のセットの中に入るため、お互いの姿が見えていない。
発声するタイミングでは、背後のスクリーンに「REC」の表示が出るため、観る側はそれでタイミングを把握できるが、スクリーンを背にして客席を向いている3人にはそれすらも見えていない。
傍らにはスマートフォンのようなデバイスも置かれていたが、タイミング把握のために頻繁に確認しているようには思えなかった。
もしかしたら、昨年公開された「Reframe 2019」の映画の中で語られていたのかもしれないが、もしそうだとすると自分はすっかり忘れてしまっていた。
いずれにせよ、改めて観ることで新たな気づきを得られたのだと思う。

他にも、今回は5階席からステージを見下ろすように観ることもあったのだが、そうなると、例えば片足を上げる動作のところで爪先が離れるタイミングが若干違うことに気づいたり…。
勿論、人間たるものそのくらいはあると思うけど、日頃からダンスのシンクロ率が高いこともあり、いつしか、3人が「人間である」認識が希薄になっていたと気づかされた。

人間が完璧を目指して臨むショーだからこそ、その凄みが伝わってくる。
きっと、その中に垣間見える「不完全さ」は、その凄みをさらに増幅してくれる。


ということで、2021年の「Reframe」は、2019年の再演と言われながらも、色々と新しい気づきや感動があった。
演目が同じでも、観る人の気づきや受け止め方、あとご時世の変化なんてもの次第でも見え方が変わる。
だから、観に行けてよかった、と締め括りたい。


そして、明日からは[polygon wave]の再演ライブ…。
前回から4か月ほどしか間を空けずの再演ですが、何か新たな気づきを得られたらいいなと楽しみにしている。
そうした気づきは、きっと「自分がどれだけ変わったか」も教えてくれる。


↓あわせて読みたい(Perfume LIVE 2021 [polygon wave] 感想)


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