最終実作提出

一年弱、SF講座もいよいよ最終。
後半の何回かはエンジンがかかるのが遅くて、締切一週間前に本腰を入れて書きはじめる、みたいなことが続いたので、けっきょく執筆を習慣化するまでには至らず。
最終実作はというと、取り掛かる前に梗概通りに書くかちょっと迷ったのだけれど、他にいい案もすぐには浮かばなさそうだったので、ひとまず書き出すことに。
その前に、梗概で取り上げたくせに生成AIというものをあまりよくしらなかったので、無料で使えるChatGPTをとりあえず少し触ってみようと思い立った。
実作の登場人物である「須山七房」という作家のプロフィールについて訊いてみると、架空の作家の情報をどんどん捏造してくれたので、面白くなっていろいろと質問を重ねて、それなりの設定を作ってみる。
で、書きはじめてみたのだけれど、出だしの3000字くらいが何回書きなおしてもしっくりこなくて、半月ぐらい行き詰ってしまった。
ChatGPTが出力した設定も多少は盛り込みながら、年表などもつくり、いろいろ準備して臨んだはずなのだけれど、出だしのところで情報が渋滞するというか、書いていて面白くもないし、読んでみても面白くない、という状態がずっと続く。
一度、この梗概はやめてまったく別のものに切り替えたほうがいいのではないかと思い、丸一日ほど考えて設定や簡単なストーリーを作ってみたけれど、そちらはどこか既視感のあるものになってしまい、あまり書く意義を感じられず。
けっきょくもとの梗概に戻って改めて頭から書きはじめて、などとやっていたらいつの間にか3月20日になっていた。

これはまずい、という焦りを覚えたとき、とても単純な切り替え方に気がついた。提出した梗概もそうなのだけれど、ここ数回、一人称に近い形で書いていて、それなりに手ごたえを感じていたので、最終実作も一人称で書くつもりでいた。
しかし3月21日に、三人称にすれば書けるのでは? と気がついて書きはじめてみたら、ようやくエンジンがかかった。それでも別にそこから順調なペースで進んだわけでもなく、30日の時点で18000字ほどだったのだけれど、追いつめられると力を発揮するといういつものパターンで何とか4月2日に完成。
何となく分量の感覚はつかめていたので、書きあがったものをとりあえず提出用のサイトにプレビューしてみたところ39961字ということで、ジャスト。ただ、ところどころ調整が必要だと考えていた部分があったので、思ったよりも若干多くなってしまった。今回最大風速で3時間ちょっとで9000字くらいは書けたので、まだ頑張れば馬力は出る。若くはないので出るうちにいろいろ書いて出さないとな……。
で、翌日(3日)に読み返したところ大筋での修正はほぼなく、細かい部分で、必要な情報を加えたり、不要な情報を削除したりという程度で済んだ。大幅な入れ替えや書きなおしがなかったのはよかった。基本的に文字数では200字程度のところで増減して微調整くらい。
そこでいったん赤字を反映させて、出力。4日に時系列の最終確認をしながらもう一度読み返して、ここでも細かい言い回しなどを修正して完成。といったところ。

今期は、前半の何回かは書き終わった後に分量調整などに相当手間取って何回も直した記憶があるけれど、後半は最初に書きあがったものをちょっと直して完成、というのが多くなってきて、最初にできあがったものと自分のイメージのブレが少なくて助かる。
ChatGPTを少し使ってみて、結果的に自分には合わない(つかいこなせない)かな~という印象だった。いろいろと出力してくれるのは単純に面白かったのだけれど、それに引っ張られてしまうというか、いざ書きはじめると想像力をスポイルされてしまうような感覚がつきまとって、全然面白いイメージが湧いてこなくてきつかった。
で、ChatGPTで作った設定をすべて放り出して、梗概だけを頼りに仕切り直して書きはじめて、ようやく動いたし、書きはじめたときはまったく考えてもいなかった「弟」がとつぜん現れて結果的に話の中心になった。これだよこれ、創作の醍醐味は、という感じで書いていても久々に面白かった。
やはり自分が思いもよらない方向に転がっていくのがいい。

基本的には梗概に書いてあるストーリーラインに沿ってすすめるというのは変えないと決めていた。分量のボリューム感ということもあるし(感覚的にあの梗概ならちょうど40000字くらいに納まるという確信があった)、収拾がつかなくなると困るので。ただ、その過程でどれだけ梗概にない要素を盛り込めるかというのは遊びながら書けた気がする。
ようするに梗概は「チェックポイント」ではあるけれど、そこさえ通れば途中は寄り道してもOKみたいな感じで、間に思い付きの要素を入れて、そこで多少SF的な飛距離や、読者の関心を引けるような謎の要素をちりばめていければいいな、という感じで書いていて「弟」だったり「ドーナツ広場」が出てきて、それが梗概に無理なく馴染んだというか、梗概をブーストさせるのに一役買った、と個人的には思っている。
そういえばドーナツ広場の仕掛けは4月1日に通勤経路を歩いていたときに思いついて、そこでアブダクションっぽいことが使えないかなと思って、そのまま帰宅後に導入したのだった。

今回、登場人物がほぼ40代以上みたいな感じだったので、なるべく落ち着いた雰囲気で進めたいなと思いつつ、読者の興味をなるべく引っ張れるように、ある程度のスパンで「*」を入れて話を切りながら、次のエピソードへの引きを後半に置く、みたいなことをやってみた。
文章としてはハードボイルドまではいかないけれど、なるべく描写や比喩表現みたいなものは抑えめにして、淡々と、それでいてテンポよくストーリーを駆動させていくことを意識した。余計な表現を入れるとたぶん分量的に厳しいだろうな、というのもあって。
それと前回の実作で、書き出しに少し力を入れたら、大森さんと藤井さんに上手くいっていないと言われたこともあり、あまり凝った文章は使わずにエンタメなのだから、読ませる(前に進ませる)ことが第一という気持ち。
個人的には風景描写だったり、感情表現だったり、好きなのだけれど、そこに凝り始めると、自分は「それっぽい」の罠にはまってしまう気がして、とにかく今期はシンプルな文章、読みやすい文章、というのを割と徹底して書いてみた。
いわゆる「エモさ」みたいなものを、あからさまにエモく書かずにどうやって滲み出させることができるか、みたいなところをうまくできるようになりたい。(シンプルにわかりやすくとか言っているくせに、ストレートな表現にはいかないというひねくれが自分らしい、のか。)

書き終えて、提出の準備も終わったところで、どうせなら縦書きのPDFを作っておこうと思い、作業を初めて、冒頭に挿入したのだけれど、いろいろと入手先がわかりやすいように調整していたら、そこに1文字誤植が残ってしまった。最後の最後で、関係ないところで余計な気を回してミスる、というのもいかにも自分らしいのでまぁいいかと思う。作業していたのが夜中の3時過ぎだった(次の日仕事だ……)から、まぁ、仕方ない、と思いたい。

提出のアピール文にも書いたのだけれど、SFに馴染みのない人でも楽しんで読める、ということは今期を通して本当に意識的に取り組んだ。SFをSFと思わせずに読ませるというか、読んでいて驚いたり、面白いと思う瞬間があったとして、それが結果としてSF的な仕掛けとして機能している、というのが理想。
一つには、自分のまわりで本を読む人で、SFを読む人がいない、けれどその人たちにも楽しんで読んでもらいたい、というのがある。もう一つは、やはり自分はガチのSFで勝負できるほどのSFマインドはもっていないという自覚があるので、これまでに講座で学んできたSFの仕掛けを、どうやって自分の書ける小説に落とし込んでいくか、というところをいろいろ工夫したり挑戦したりする方がメリットがあると考えた。

また、今期ひさしぶりに小説を書いてみて、だいぶこだわりの部分が減ったというか、憑き物が落ちたというか、柔軟に向き合えるようになったような気がする。それは講座を通じてというよりは、その他の様々な要因も含めて、自分の小説観が変化したというような感覚に近いのだけれど。
たとえば「最初と最後で主人公が何らかの変化をしていなければならない」みたいなことを考えたりしていたときもあったけれど、こういった類の「なければならない」みたいなものが、だいぶ抜けてきてよかった。書いてみて、結果的に変わることもあれば変わらないこともある。でも面白ければいいや、みたいな。
梗概からのはみ出し方も、後半戦では少しずつできるようになってきて、最終でも挑戦できたし、適当さというか、転がる楽しさを取り戻せたような感じで、そこに時間がかかった分のスキルが乗っかってきたので、以前よりすこしは面白いものが書けるようになっているのではと期待したい。

この4月からはまったく新しいことに取り組むことにしたので、小説も書きつつ、自分の表現というものの幅をもうすこし広げられるようなことを学んでいくつもり。寄り道ではあるかもしれないけれど、基本的に自分がやっていることややろうとしていることは、すべて小説にフィードバックするためにしていることなので、もっと創作のためのマインドを広げたいという一心で、これからもあちこちに手を出していく。

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