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なぜヘブバンのバトルシステムは崩壊したのか~開発のあり方から探る~

 こんにちは。初めましての方ははじめまして。りんねと申します。
 この記事では、ヘブバンを巡るWFSの開発環境を紐解きつつ、なぜ戦略も何もないようなバトルシステムが構築されてしまったのかを、一介のアナデン・ヘブバンファンが考察していきたいと思います。
 なお、この考察ではWFSが開発・運営を行っている別作品「アナザーエデン 時空を超える猫」(以下、アナデンと表記します)の仕様も深く関わってきますので、読み進める際にはご注意頂ければと思います。
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はじめに~自己紹介も添えて~

 私は普段はアナデンを中心にプレイしており、非公式の攻略wikiを作ってだいたい個人で運営する程度にはアナデンのシステムには慣れ親しんでいます。
 一方のヘブバンですが、こちらはサービス開始当初に少々課金してSSキャラを集めましたが、現在はまったり無課金でプレイしており、オーブボスLv1にひいひい言いながら毎日0.4%ずつオーブ経験値を貯める程度に遊んでいます。
 先日起きたAスタイル一千子のナーフ騒動をきっかけに、ヘブバンの戦闘システムの仕様などについて調べてみたところ、アナデンとの共通項が少なからず存在していることに気付きました。調査を進めると、ヘブバンとアナデンの類似性が生まれるのは必然であり、アナデンの課題点を超克しようとした結果、致命的な欠陥を抱えたシステムが誕生してしまったのではないかという推測に辿り着いたのです。
 余談ですが、私の推しキャラは蒼井えりかです。ビジュアルの時点で死ぬほど刺さりました。お願いだよだーまえ奇跡を起こしてくれ……

いつか奇跡が起こりますように…

アナザーエデンという先駆者にして反面教師

「ソーシャルゲームを、やめてみた」

アナザーエデン イメージイラスト

 アナデンがこんなキャッチコピーと共にリリースされたのは今からおよそ5年前のこと。当時では考えられなかったスマホゲーでの完全ソロプレイ専用RPGは、その世界観や心打たれる大小様々な物語、そして配布キャラだけで裏ボスを全て攻略出来るような絶妙なバランスなどが受け、現在も絶賛運営中のロングヒット作品となっています。
 一方で、長期間運営を行っていると避けられないのがキャラクターのパワーバランスの崩壊とインフレ、そしてシステムの複雑化です。アナデンの戦闘もこの例に漏れず、現在ではカンストダメージ(21.47億)を容易に出せるようになったり、仲間キャラやエネミーのギミックが過剰なまでに複雑になってしまい、初心者お断り状態のコンテンツがいくつも実装されるなど、様々な課題点が浮き彫りになったのも事実です。

アナデンのカンストダメージはこう出すのじゃ

アナデンの抱えた問題点たち

ここで、アナデンの戦闘が抱えた問題点を簡単に列挙してみます。

1. 「速度」と「行動順」
 アナデンにあってヘブバンに無い仕様の一つに、「速度」というステータスがあります。これは敵と味方の行動順を決めるためのステータスなのですが、速度は±10%の範囲で毎ターン変動します。この変動によって敵味方の行動順序が狂い、本来発動するはずだったバフ・デバフによる相乗効果を得られない、敵に先行されてパーティが全壊するなどの「速度事故」がよく発生します。ヘブバンをメインでプレイしている方に向けて言うなら、星羅のクリティカルバフが発動する前にアタッカーの月歌が行動するみたいな事故がまれによく発生すると考えれば、そのストレスはいかほどのものか想像しやすいはずです。

2. システムの複雑化とインフレの加速
 先述の通り、長期運営タイトルではシステムの複雑化と、それに伴うキャラクターのインフレという宿命から逃れるのは非常に難しいです。バフ・デバフの種類だけでも腕力・知性・速度・物理耐性・属性耐性・属性攻撃・武器種・クリティカル・クリティカル時ダメージなど、その数はざっと20種類以上にも登ります(属性や武器種を分ければ更に細分化されますがここでは割愛)。これだけバフ・デバフやダメージ補正の種類が多くなれば、当然基本ダメージ量に乗算される倍率もねずみ算式に増加し、数億程度のダメージなら簡単に出せるようになってしまったのです。
 また、各キャラやエネミーが持つ「蓄積」というシステムも厄介者で、キャラによって蓄積のシステムや恩恵が異なったり、エネミーの蓄積の仕様を把握しないと即詰みにつながるなど、システムの複雑化に拍車をかけています。現環境のヘブバンで喩えるなら、全キャラがそれぞれ固有のトークンを所持しており、運用も全部違うと言えばその複雑さが分かるでしょうか。

3. 多すぎる選択肢
 アナデンのキャラクターは基本的に1キャラ8種類のスキルを有しており、それぞれのスキルに様々な追加効果が付与されています。キャラによっては☆3スキル(ヘブバンで言うところのAスタイルで獲得できるスキル)が必須となるケースがあるなど、各キャラの運用に幅を持たせる要因となっています。その一方で、スキルの選択肢が多すぎること、セットに出来る仲間キャラが多すぎるせいで適切な運用が分かりにくいという弊害も発生しており、せっかく強キャラを引いても持て余してしまう……という状況に陥っているプレイヤーが多数発生しています。余談ですが、こうした現状に一石を投じたいと思ったのが、私がアナデン攻略wikiを作成した最大の経緯でした。

「引き算の発想」で生まれたヘブバン

まずはノウハウや技術の共有から

 WFSの公式HPでは、スタッフに対するインタビュー記事が公開されており、WFSのゲーム開発に携わる方々が自身や組織の役割、開発に当たってのプロセスや思考などが紹介されています。その中で、WFSの開発スキームが見え隠れするインタビュー記事がありました。

 このインタビュー記事では、WFSが「ヒットの確率を上げるためにも、セントラル型の組織にシフトし、各プロダクトで培ったノウハウや技術を共有できるように」したことが書かれています。私は一介のゲーム好きであり、ゲーム開発や運営に携わったことはこれまで一度たりともありませんし、そのようなスキルも持ち合わせていませんが、この記事で書かれているようなノウハウや技術、成果点や課題点の共有と継承というのは極めて合理的な選択でしょう。システムをゼロから作るよりも、既存のシステムを上手く活用するほうが開発時間やコストの削減につながりますし、とりわけ先駆者のいるシステムであれば「ユーザーはどういった点で不満を抱えており、何を改善すれば良いか」が明確ですからね。
 こうした「セントラル型の組織」による開発スキームが考案された結果、ある程度の成果と課題点が見えているアナデンの戦闘システムをベースとするというのは、ある意味当然の選択だったと言えるでしょう。以下の画像を見ると、アナデンとヘブバンのバトルUIやシステムが似通っていることに気付かされますが、これは先程述べた開発の流れから考えれば、必然的な帰結だったと言えます。

UIの設計、アナザーフォースとオーバードライブの類似性などなど。

ヘブバンのプレイヤー層向けに「引き算」する

 さて、ここでヘブバンをプレイするメインの層がどういった人々か考えてみましょう。keyの作品はADV(アドベンチャーゲーム。シナリオを読みつつ、所々にある選択肢を選んでルートが分岐する)がメインですし、CLANNADやリトバス、Angel Beatsなどのアニメからkey作品に触れたプレイヤーがRPGにどっぷりハマっていると想定するのは無理があるでしょう。アナデンの戦闘システムをそのままヘブバンに移植してしまうと、戦闘システムが複雑すぎて序盤で離脱するプレイヤーが多くなってしまうと想定されます。
 そこで、ヘブバンはアナデンの戦闘システムから様々な要素を簡略化、あるいは削除することにより、先述のアナデンの戦闘の問題点を解消したものと考えられます。具体的には以下のようなポイントが挙げられます。

1. 「速度」の撤廃
 ヘブバンではそもそも速度という概念を無くし、味方キャラのバフ・デバフの展開→味方キャラの左側から攻撃行動→敵行動というように、行動順が完全に固定化されるようにしました。行動順を調整するために速度を微調整する手間は無くなり、ライト層でも簡単にキャラ間のシナジーを発揮できるようになりました。

2. ステータスの簡素化
 アナデンでは攻撃ステータスに関わる数値が攻撃・腕力・魔力・知性と4種類あるため、ライト層には理解と運用が難しくなると言えるでしょう。これも「力」「器用さ」の2つに減らし、各々をHP攻撃・DP攻撃と紐づけるという引き算の発想で単純化を図ったのではないかと考えられます。また、スキル発動に必要なコストと威力の目安をSPで統一したことも単純化の要素の一つでしょう。

3. バフ・デバフなど、各種システムの単純化
 アナデンのバフ・デバフは敵のステータスを直接変動させるものもあれば、特定の条件を満たせばダメージを乗算するものなど、システム理解をそれなりに要求するものでした。一方で、ヘブバンのバフ・デバフはほぼ全てダメージをn倍するというものに単純化されています。他にも、状態異常種類の減少前衛後衛の入れ替えにターン数を消費しないオーバードライブゲージの溜まり方が「耐性」以外共通など、アナデンに見られた仕様がいくつも単純化されていることが伺えます。

4. スキル数の削減とキャラロール(役割)の明確化
 SSスタイルは固有技も含めると2種類、S・Aスタイルは1種類のスキルが習得でき、スキルの選択肢が単純化されました。さらに、各キャラのロール(役割)を明確化することで、ロールにあったスキルを実装すれば良いというようになりました。アナデンでは、アタッカーがサポーター(ヘブバンで言うところのバッファー、デバッファー)を兼ねることはごくごく普通のことです。

 恐らくヘブバンのバトル開発チームは、肥大化してしまったアナデンの戦闘システムを単純化するという発想の元、システムのスリム化を徹底していったのだと考えられます。そう、まるで積み木タワーから柱を一本ずつ抜くかのように……

おまけ:「足し算」されたもの

 一方で、アナデンの抱えていた問題点を解決するために、いくつかの仕様が追加されました。その中でも代表的なのが、スキル毎の基本ダメージ量上限の設定です。ヘブバンの各キャラが使うスキル(通常攻撃も含む)には、ダメージ上限が設定されており、敵のステータスを一定量上回った攻撃値となると、基本ダメージ量が上限に達します。3凸完凸キャラに力や器用さを盛ってもあまり意味がないと言われるのはこれが原因です。アナデンではダメージ量が青天井モードに突入してしまうので、上限を設けてインフレを防止したという意図は理解しやすいでしょう。

ダメージ計算式から仕様を分析してみる

 ここで、アナデンとヘブバンのダメージ計算式や計算の仕様を比較することで、両者のバトルの仕様や特性を明確にしてみましょう。まずはアナデンのダメージ計算式から見てみます。

アナデンのダメージ計算式(物理攻撃)

 上記の式を見るだけで頭が痛くなるかもしれませんが、重要なのは以下のポイントです。

  • 基本ダメージ量は、敵・味方共に「攻撃」・「腕力」・「防御」の数値で決まる。(物理攻撃限定の話。魔法攻撃は別のステータスを参照)

  • 「攻撃」の値はバフ・デバフで簡単に増減させられる。(1.3~1.5倍程度なら余裕で増減可能)

  • 元の「攻撃-防御÷2」の部分のダメージが少なくても、「腕力」を伸ばせばダメージも伸びやすい(腕力は装備で簡単に伸ばせる)

  • 属性攻撃は通常攻撃より無条件で威力が高い。

 アナデンにおいては、プレイヤーは強敵と戦う際、まず敵のステータスをデバフで下げて、耐えられる範囲のダメージに落とし込むという行動が取れます。また、こちらの与えるダメージを増やしたかったら、まずはバフをかけてステータスを伸ばすことで、基本ダメージ量を伸ばすという戦術を選択できます。下記の画像は「攻撃デバフ25%」を付与したか否かの違いですが、一撃あたりのダメージは3分の1程度まで低下したことが分かります。

左がデバフ未付与、右がデバフ付与時のダメージ
(引用元:『アナザーエデン 時空を超える猫』攻略wiki・データベース)

 一方のヘブバンですが、ダメージ計算式は以下のように定義できます。
(飽くまでも他の方が検証して下さった内容を自分でまとめたものです。計算式の正確性に関しては保証しかねます)

ヘブバンのダメージ計算式
(参考:カンタータ仮面@仮面の方さん)

 アナデンの計算式とは様変わりしていますが、重要なポイントは以下のとおりです。

  • 基本ダメージ量は原則として攻撃側の攻撃値(力・器用さの平均値)と防御側の防御値(体力・精神の平均値)が参照される。

  • スキルごとに最小ダメージ量が定められており、基本ダメージの最大量は各スキルの最小ダメージの5倍。

  • クリティカル時は敵の防御値が50減るため、少ない攻撃値でもダメージが通しやすくなる。

  • 敵のステータスを変動させることは原則不可能。

 さて、アナデンでは「敵の攻撃が痛ければとりあえずデバフでステータス下げとけ」という戦術を取ることが出来ましたが、ヘブバンではどうでしょうか。システムの「引き算」の項目で触れた通り、ヘブバンにはステータスを変動させるバフ・デバフはほぼ存在しないため、対抗する手段はこちらのステータスを上げることほぼ一択となります。アナデンの世界から腕力知性デバフが消えた世界線と言えば、アナデンプレイヤーにはその恐ろしさがよく分かると思います……
 話は脱線しますが、ヘブバンのダメージ計算式は「アルテリオス計算式」(ダメージ=攻撃-防御で算出される単純な計算式)であると言われがちですが、これは厳密には誤りです。実際はスキル定数によって「攻撃-防御」の結果が0以下になっても正のダメージが算出されるようになっています。もっとも、ステータスの影響が強すぎるという欠陥は否定できませんが。

【追記】
 4章前編で追加された新エネミーがステータスデバフ持ちの攻撃を行なってくるので、顔面受けしてきました。それがこちら。

おタマさん3凸、カレンと月歌は1凸でこのダメージ…

 いやあステータス補正って偉大ですね!!!
 精神デバフ抜きだとだいたい700〜800ダメージだったので、およそ5倍されていることが分かります。正確な原理は解明されていないですが、恐らくこちらの精神が減少し、1凸組は敵のスキルをダメージ上限に近い値で受けていると考えられます。味方側にステータスバフデバフが追加された時はこの逆が起こるだけに、今後が楽しみでありながらも、更に大味なバランスになりそうな雰囲気もしています……。

「引き算」の行き着いた先は……

 先程の項目で述べたように、ヘブバンにおいて有効なダメージコントロールを行うには、現状味方キャラのステータスを伸ばすこと(=そのために装備を用意し、スタイル強化を行う)くらいしか有効な手段がありません。更にキャラクターのスキル数が少なく、プレイヤーが取れる手段が限られてしまっている点もプレイヤーのストレス要因になっていると考えられます。
 その一方で、味方の発動するバフ・デバフ類は基本ダメージに乗算を行うものが主体となっており、アナデンでも見られるような「乗算関係のバフを重ねて高ダメージ化!」というインフレプレイだけは加速しています。
 アナデンのシステムを引き算したのはいいものの、引き算してはいけない部分まで引き算した結果、無課金・微課金プレイヤーのユーザーエクスペリエンスが大きく損なわれている、というのがヘブバンのバトルシステムの現状でしょう。

そしてシステムは崩壊した

木を見て森を見ず

 ここまで来れば、ヘブバンのバトルシステムが崩壊した原因は明確でしょう。「元になったシステムの意図やつながりを正しく理解せず、無闇なスリム化を行った結果、引き算してはいけない部分まで手を付けてしまった」ことが最大の原因です。積み木タワーから柱を抜きまくってバランスを崩し、盛大に瓦解してしまったという喩えがしっくりくるでしょうか。
 確かにアナデンのシステムを流用し、アナデンのバトルシステムの複雑さを解決するために各種仕様を単純化するという方向性そのものは素晴らしい発想だったと思います。しかし、元となったシステム全体の仕様や意図を見通さずに、個別のシステムを場当たり的に簡素化したため、全体のバランスが崩壊したのは、明らかに部分最適化を防ぐためのディレクションが不足していたと言わざるを得ません。本来であれば、元となったバトルシステム、つまりアナデンの戦闘システムに精通したスタッフが全体のバランスの舵取りを行うべきだったでしょう。

対策を行うもその場しのぎで……

 ヘブバンリリース後、第3章攻略時点で無課金・微課金勢が「何かしようとしても何も出来ない」というデッドロックに陥った際、ヘブバン運営もさすがにその問題点には気づいたはずで、キャラ育成キャンペーンを行うなどの施策を行いました。ただ、いつぞやの生放送で第3章クリアユーザーがアクティブの35%程度であったという発表がありましたが、その点も考えると運営側の施策が効果的に波及したとは言いにくいのが実情でした。本来ならば、「戦闘に行き詰まったらプリズムバトルで経験値稼いで、アリーナ周回やって素材集めて強化すればストーリーはクリア出来る」くらいのメッセージを運営は出すべきだったでしょう。
 また、個人的に運営の姿勢を悪い意味で一番感じたのがオーブボスに関する各種仕様でした。オーブボスは敵能力値の高さや全体攻撃スキルの倍率の高さから、オーブボス専用防具を装備することでダメージを低減する必要があります。少なくとも運営の想定プレイはそのようなものだったのでしょう。しかし、たかだか1エネミーにしか有効でない防具を実装するというのはいささかその場しのぎ的ではないかと、違和感を強く覚えました。また、例の一千子のダメージカットの仕様が発覚した際にも、オーブボス専用防具という使い捨てアイテムではなく、キャラやダメージ計算の仕様をいじるという選択に至ったのも、その後の波及規模の大きさを考えずにその場しのぎで決定したのではないかと考えてしまいます。

ヘブバンのバトルに未来はあるか?

 ここまで繰り返し説明してきたように、ヘブバンのダメージ計算の仕様上、敵と味方のステータス変動が大きな影響力を持ちます。一方で、ステータス変動に介入できる方法が現状「装備」「凸」「レベリング」「スタイル強化」の4つしかなく、このうち「レベリング」「スタイル強化」はほぼ終えてしまったプレイヤーが多いと思います。となると、キャラクターのステータスを伸ばすには、今後の新装備・新要素の追加か、SSキャラを引く運命力や金の力を使うしかなくなります。\さらば諭吉!!/
 そんな中、今後4章・5章と物語が進むにつれて、プレイヤー側のキャラクター強化手段は限定的、しかし敵のステータスは今後更に伸びていく……となれば、いよいよ無課金・微課金者がストーリーを進められなくなってしまう危険性が高くなります。一方で、敵のインフレを抑えつつメインストーリーコンテンツを実装し続ければ、延々ナーフ後3章クラスのエネミーが出続けるという感じになるでしょう。
 敢えて厳しい言い方をしますが、現状のヘブバンのバトルシステムでは今後の発展性を見込むことは非常に難しいです。ダメージ計算式やバフ・デバフの設計など、バトルシステムの根本的な改善を行わなければ、ライト層は延々とステータスの伸び悩みに苦しむ羽目になり、運営は相変わらずその場しのぎの対応策の連発をせざるを得ないでしょう。

【追記】
 4章前編をクリアしましたが、運営は更なる高難易度化を選択してきましたね。私の記憶が正しければ、戦力よりも戦略を重視すると言っていたと思うのですが、結局は敵の高火力攻撃をリカバーで回復する、エンハンス重ねてダメージ取りに行くなど、これまで通りのパワープレイからは特段変わらずといったところです。戦略とは。
 この高難易度化を促進しているのが何なのかは断言出来ませんが、可能性としてあり得るのは開発側自身がヘブバンの戦闘に慣れているということを見落として、開発にとっての少々難易度が高いもの(=無課金・微課金勢にはかなり厳しいもの)に調整していることが挙げられそうです。

おわりに~そこに哲学はあるか?~

 アナデンの初代プロデューサーである高大輔氏は、かつて何かのインタビューで、アナデンの戦闘に「攻め」と「受け」という将棋の要素を入れたと語っていたと記憶しています。自身も将棋を嗜んでいたようで、そこから着想を得たのでしょう。この「攻め」と「受け」を駆使していけば、格上の敵でも倒せる糸口があるというバトルの哲学は、時が経ち、スタッフが入れ替わり、インフレとシステムの複雑化という波に揉まれながらも、アナデンの戦闘に脈々と受け継がれているエッセンスだと思います。
 翻ってヘブバンの戦闘の哲学って何でしょうか?ガチャ引いてキャラのステータスを上げてバフを重ねて強烈な一撃を叩き込むことでしょうか?私は、今のヘブバンの戦闘に何ら哲学を見出すことが出来ません。
 ヘブバンの生放送では、様々なユーザーデータをスライドで示しながら、こういう施策を行うことが必要であるとしきりに力説しているのが印象的でした。悪い意味で。単に数値という指標だけと睨めっこして、その数値を改善することだけに汲々としていないでしょうか?運営の「施策」とやらを通じてプレイヤーに「面白い!」と思わせたいという理念は果たしてあるのでしょうか?必死の思いでダイヤモンドドロップしてアクセ錬成してみたらゴミみたいな数値のアクセしか出来ないのを、開発・運営は実際にプレイしてみて面白いと本気で思っていますか?難しいという概念と、面倒、理不尽という概念を取り違えていませんか?
 
ヘブバンの開発陣には、だーまえのシナリオという最強クラスのエンターテイメントに寄り掛かるのではなく、今一度、自分たちが面白いと思うものの開発に力を入れてほしいと、心から願っています。
 最後に、高大輔氏がアナデンの生放送で語った名言でこの記事をしめくくりたいと思います。

是非ね、会社や、もう上司とかに負けずにね、自分の「面白い!」と思ったアイデアをね、とにかくぶつけて、面白いゲームを作ってください!
KPIに負けるんじゃねえぞ!!!

「アナデンまつり2017夏」 アナザーエデン超爆釣大ヒット御礼生放送
(高Pのアツいメッセージは1:58:30から)

【追記】今更なあとがき

 当記事リリースから約1週間が経過しまして、どうやら自分の予想を遥かに超える反響を生み出していたようです。この場をお借りして、当記事を読んでいただいた方、ご意見や批判の声を下さった方々に感謝したいと思います。本当にありがとうございました。
 本編ではヘブバンのバトルの今後に関してかなり悲観的な見方をしていましたが、それはあくまでも「現状と変わらなければ」という前提付きのものです。ヘブバンのバトルがより楽しめるものへと変化を遂げていけるかは、ヘブバン運営の手腕、そして私達ユーザーのあげる声次第だと思っています。私自身の意見は本編でも述べたように、「開発陣の面白いと思ったアイデアをぶつけて欲しい」というものです。今のヘブバンのバトル周りのシステムに不満や意見を持っている人は、「こうして欲しい」という意見を運営にぶつけてみるのが良いと思います。運営タイトルだからこそ、私達の声が届けば何かしらの変化が生まれる可能性がそこにはあります。ちなみに私は4章のバランスに関して思うところがありまくったので運営に長文を投げつけてきました。
 余談ですが、Twitterで頂いた声は一つ一つ目を通したのですが、アナデン未プレイのヘブバンプレイヤーの多さに悲しみを覚えたので、近々RPG初心者向けの方に「アナデンのススメ」(仮題)という記事を作成しようと思います。期待せずゆるゆるとお待ち下さい。
 あと完全に宣伝になりますが、アナデンの生みの親である高Pと古屋Dが手掛けた最新作が11月に公開されます。彼らの手掛ける作品は面白いという確信があるので、気になった方は是非SwitchかSteamで予約をしましょう!


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