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12月21日〜米国経済総括及び来週以降の米国市場について

【直近の米国株式市場】

12月21〜25日の米国株式市場では、主要3指数が前週末比で小動きとなった。18日にFRB(連邦準備制度理事会)は米銀に対する今年2回目のストレステスト結果を発表し、条件付きで自社株買い再開を認めるとした。感染力が強いとされる新型コロナウイルスの変異種が英国を中心に広がっているが、この変異種について独ビオンテック社は、現在のワクチンで対応できる可能性が「非常に高い」としつつ、開発が必要な場合には「6週間ほどで」可能との認識を示した。
米国では21 日、追加の経済対策法案が議会で可決されたが、トランプ米大統領はこれに署名せず、議会に現金給付額引き上げなどの修正を要求した。米国の新型コロナ新規ー感染者数の増加ペースは足元で頭打ちの兆しがみられるが、クリスマス後の動きについては予断を許さない状況にある。


【追加経済対策成立の有無に注目】

米国の経済対策については、28日に下院で現金給付額を引き上げる新法案の採決が行われる見通しとなっている。また、現行の政府の暫定予算は28日に切れる予定であり、下院は28日に新たな暫定予算案を通過させようとする可能性がある。なお、トランプ氏が経済対策法案に拒否権を行使しても、上下両院で3分の2 以上の賛成で再可決すれば法案は成立する。1月3日の新議会発足までに法案が成立しなければ、関連法案は廃案となり、次期体制で審議し直すことになるリスクもある。1月5日のジョージア州上院選にも絡むこのイベントが、当面の市場における焦点となろう。


来週以降直近スケジュール

12月28日(月)
2021会計年度の暫定予算期限

12月30日(水)
米12月シカゴ購買部協会景況指数
米11月中古住宅販売成約指数

12月31日(木)
米新規失業保険申請件数

1月1日(金)
米国市場休場

1月3日(日)
米国第117議会第1会期開会

1月5日(火)
米12月ISM製造業景況指数
米連邦議会上院選ジョージア州決選投票

1月6日(水)
米12月ADP雇用統計
米大統領選選挙人投票の結果集計
FOMC (連邦公開市場委員会)議事要旨公表( 12月開催分)

1月7日(木)
米12月ISM非製造業景況指数
決算マイクロン・テクノロジー
米新規失業保険申請件数

1月8日金
米12月雇用統計


【激動の2020年】

2020年の米国株式市場は残すところ4営業日となったが、12月24日までの年初来上昇率は、s&P500が+14.6%、NYダウが+5.8%、ナスダック総合は+42.7%、フィラデルフィア半導体株指数(sox指数)は+48.6%、ラッセル2000種指数は+20.1 % と、総じて力強く上昇している。

2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大の深刻化、株式市場の急落、景気後退に見舞われるも、人々が在宅勤務への適応(相場では在宅関連銘柄、高成長銘柄へのシフト)を進める中、政府や中央銀行による巨額の政策対応を背景に米国株式市場は急反発し、史上最高値を奪還、景気は回復を始め、新型コロナワクチンが異例の速さで実用化に至り、相場ではゲノム診断や環境、電気自動車、セキュリティといったテーマ性の強い株だけでなく、景気敏感株等にも物色が広がりはじめた、というところで年末を迎えつつある。


【1月にかけての注目材料】

2021年1月は、年明け早々から注目材料が目白押しとなる。まずは5日にジョージア州で上院の残る2議席を争う決選投票が行われる。
民主党議員がこの2議席を勝ち取ると、民主党が上下両院の過半数を実質的に抑えることになる。そうなれば、民主党バイデン氏が掲げてきた増税や規制強化が実施される、との思惑が再浮上し得る。
現在、トランプ氏が修正を要求している経済対策法案について、共和党側の反対が障壁となり、法案成立が遅延する(あるいは大統領による署名に至らず廃案となる)展開は、ジョージア州の上院選挙において民主党側を有利にする可能性がある。そのため、年末年始のトランプ氏、議会の動向が及ぼす影響が注目される。

一方、同選挙で共和党議員が勝利すれば、議会はねじれ状態となる。これは現在の市場が期待する展開とみられ、極端な政策変更が抑制されやすい組み合わせとして好感されよう。
20日にはバイデン氏が第46代米国大統領に就任する見込み。同氏は就任後に更なる経済対策に取り組む意向を示しており、市場の政策期待はある程度続きそうだ。
また、中旬以降は2020年10-12月期の決算発表シーズンに入っていく。市場予想では、S&P500企業のEPS ( 1株当たり利益)が前年同期比△ 9.5 %となる見通し ( 12/ 18時点)。新型コロナの感染拡大に伴う経済活動の抑制等により、景気敏感業種を中心に軟調な決算が想定される。足元で発表されている雇用や消費関連の経済指標からは、10-12月の特に後半における事業環境の悪化が示唆されており、業績が一旦落ち込むことについては市場で織り込みが進んでいよう。
S&P500は11月から12月にかけて13.2%上昇し、一部銘柄の株価は上昇べースが加速した。こうした状況のもと、年末年始のイベント次第では相場が不安定化する恐れもある。ただ、後述するように2021年の展望は明るい。リスク回避的に動くことは、同時に機会損失のリスクをとることになる、という事実に注意したい。



【「サンタクロースラリー」の実績は?】

年末が近づく中、注目される相場の経験則が「サンタクロースラリー」です。サンタクロースラリーは、年末の5営業日から年明けの2営業日にかけて米国株式市場が上昇しやすい、という季節性を指す。サンタクロースラリーが起きる理由として、
①クリスマスや年末の休暇を過ごしたり、翌年の明るい見通しへの期待が強まることで投資家の気分が楽観的になる、
②年末のボーナスが投資資金に回る
③機関投資家の多くが休みに入ることで、強気見通しを持ちやすい個人投資家が中心の取引となる、といった説明がある。
あるいは、サンタクロースラリーを信じる投資家の買いが、自己実現的に相場上昇をもたらすのかもしれない。

1999年から2019年までに開始した21回のサンタクロースラリー期間のうち16回でS&P500は上昇し(勝率76%)、21回の騰落率平均は+0.7 %、中央値では+ 1.0%だった。概ね4回のうち3回は上昇した計算となる。一方、s&P500が下落した5回のケースでは、いずれも続く1月の月間騰落率がマイナスとなった。このうち、1999年や 2007年のケースでは、s&P500はその後弱気相場入りしていった。こうしたことから、サンタクロースラリーが発生しないことは、相場にとって悪い前兆ともいわれている。
この経験則は、勝率や平均的な上昇率が特別に良いというわけではないことから、これを当てにした短期売買は推奨されない。2021年に向けて明るい展開が期待される中、サンタクロースラリーの成否にかかわらず、中期的な強気見通しを保持することが妥当と考える。

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