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12月14日〜米国経済総括及び来週の米国市場について

【直近の米国株式市場】

12月14〜18日の米国株式市場では、主要3指数が前週末比で上昇し、いずれも史上最高値を更新。
米大統領選の選挙人投票では民主党バイデン氏の当選が確認された。新型コロナウイルス関連では、ニューヨーク市で14日より飲食店での屋内営業が再び禁止された。ニューヨーク州のクオモ知事は、現在の傾向が続けば2度目の全面的な経済活動の停止に向かうことになると警告した。11月の米小売売上高は、前月比1.1 %減と大きく減少し、10月分も速報値の0.3%増から0.1 %減に下方修正された。
内訳をみると、建材/ガーデニングや食料/飲料品は前月比で増加し、無店舗小売り(大半がオンライン販売から成る)も小幅に増加した。一方、衣料/アクセサリーや飲食店の売り上げが大幅に減少した。
FOMC(連邦公開市場委員会)では一部観測にあった追加緩和が実施されなかったが、量的緩和を巡るガイダンスの修正等が金融緩和長期化への期待を高めた。また、政府の追加経済対策の協議進展が連日伝えられ、協議の早期妥結観測が高まった。

【来週にかけての注目点】

来週にかけては、米国で政府の追加経済対策が成立するか否かが注目される。
経済指標では11月の米個人消費支出、個人所得が注目されるが、既に発表された小売売上高の弱い結果から、ある程度の減速は織り込まれたとみられる。
米国では新型コロナの感染急増に伴う病床や医師不足の深刻化が伝えられており、 FOMCや経済対策といったイベント通過後の市場がこうした状況をどこまで材料視するか注目される。ただ、週末にはクリスマス休暇を迎えるということもあり、イベント消化後は、余程の新規材料がない限り積極的な売買は手控えられるとみられる。



【追加経済対策成立への期待が再浮上】

今週は、米政府の追加経済対策成立への期待が再浮上した。14日には、米超党派議員グループが経済対策案の詳細を公表。15日には、米議会上院で現在過半数を占める共和党のマコネル上院院内総務が経済対策問題が決着するまで休会しないとの考えを示し、16日に同氏は協議を巡り「大きな前進」があったと表明した。複数の議員の話として報じられたところによれば、9,000億ドル規模の経済対策で合意に近づいているという。マコネル氏は17日、合意は「間近にみえる」とし、上下両院を通過させるため週末を通した作業が必要になりそうだとの見方を示した。法案成立に至れば、米経済や相場にとっての安心材料となろう。

【 FOMC結果は市場の失望につながらず】

一方、15、16両日に開催されたFOMC (連邦公開市場委員会)では、一部で予想されていた追加緩和(資産購入対象の年限構成の変更)がなかったものの、市場で失望感が強く意識される展開にはなっていない。上述の通り、市場では政府による追加経済対策への期待が高まっており、FOMCの相対的な注目度が低下していたとみられるほか、FOMC結果について大きなサプライズはなく、ハト派的な部分(後述する量的緩和ガイダンスの修正等)が前向きに捉えられたとみられる。


量的緩和
FOMCでは、量的緩和のガイダンスが修正され、雇用とインフレに関する目標に向けて「一段と顕著な進展」がみられるようになるまで、少なくとも現行ペース※2での資産購入を継続する旨が示された。パウエルFRB (連邦準備制度理事会)議長は会見で、この「一段と顕著な進展」が意味する具体的なインフレ率や失業率に関する数値の特定は避けた。ただ、少なくとも2021年は現行ペースでの資産購入が続けられることが示唆されたといえる。



政策金利と経済見通し
FOMC参加者の政策金利見通しでは、2023年の利上げを予想する参加者が前回9月の4名から5名に増えたものの(全17名中)、中央値では2023年まで事実上のゼロ金利を維持する旨が改めて示された。経済見通しでは2022年までの実質GDP成長率予想が上方修正されたほか、失業率は2023 年にかけて下方修正(良い方向)、インフレ率は2021年と2022年が上方修正された。米経済の不確実性は続いているが、財政出動が期待される中でFRBは追加緩和の手段を温存しつつ、市場の警戒や失望を抑えることにも成功したといえる。



【2021年の明るい話】

2021年は、緩やかな米長期金利やインフレ率の上昇、米経済の堅調な回復(過熱とまではいかず)が想定される中、「ゴルデイロックス(適温)」と呼ばれる株式市場にとって心地の良い環境のもと、ボラティリティの低下とともに株式市場が堅調に推移すると期待される。
また、政策面では議会がねじれ状態となれば政策の振れ幅が抑制されるとみられるほか、需給面では事業環境が改善する中での自社株買いの再開・増加、業績面ではコロナ禍でコスト削減を進めた企業における、売上高回復に伴う利益率の上昇が期待されるなど、複数の明るい話が想定される。
基本的に2021年の米国株式市場については強気にみることができよう。当面の相場において調整局面があったとしても、中長期的な目線をもとに冷静さを維持したい。

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