窓を開けること

窓を開けるのにいい季節だ。

開けていても寒くないし、暑くない。湿っていないし、風もそんなに強くない。春よりも秋の方が開けやすい。

夜の間、もやもやとなにかが部屋を巡ったあとの色付きの空気みたいなものを入れ替えるために、朝、窓を開ける。そして、忘れる。家にいる時は、そうだそうだと思い出し夕方に閉めるが、出かけてしまったりしては一日中窓を開放していることになる。不用心だが、秋晴れの日にはそれが許される。誰か入ってきたとしても、なんだか仕方ないな、と思える。

雨の日には少しだけ窓を開ける。雨が降る街の音が聞こえる。雨の日は音が沈むような気がする。それが妙に落ち着く。外はびしょ濡れなのに、部屋の中にいる私だけちっとも濡れていないのもよい。優越感。雨の日は家で静かに過ごしていれば、いつもより数段、小上がった気持ちになれる。

窓を開けるには、いい季節。

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