他人と比べること

私は自分と他人をよく比べたがる、らしい。ある人からそう言われた。もっとあなたらしくていいのに、とも言われた。なに言ってんだこいつ、と思った。

私らしい、ってなんだろう。私が私らしく思うことと、他人が私を私らしく思うことは違う。その人は、その人の思う私らしさを求めているのではないか。私という確固たる(さらに言えばその人が求める姿に近い)何かを見せて欲しかったのだろうか。

私は確かに他人と比べることがよくある。自分の起こした行動に「あれ、これってみんなやってること?」と確かめてみたり。それは基準や安全のようなものが欲しいから他人と比べたがるだけなのだ。そういうものは自分自身の中に答えがある、とか、自分らしく生きることが健やかだ、みたいな論を言われるが、そんなの簡単に見つけられるのなら、とっくに人生順風満帆だ。だいいち、その論たちにはいつでも他人が存在している。必ずいちどは他人と比べているのだ。その論をふりかざせるのは、他人と比べる苦しみを通って達観したか、見て見ぬ振りをして調子よくスルーした人間だけだ。その人たちを、他人と比べてしまう渦の中で足掻いている私からみると、羨ましいを通り過ぎて憎らしい。

憎らしいと同時に、私はもうこれでいいか、とも思う。だって1人で生きて行くのではない。人間社会と共に私は生きて行くのだ。だとしたら他人と比べることは悪いことではない。それが確固たる何かではないかもしれないが、比べたがることだって立派な個性だと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?