12.The Hanged Man(吊るされた男)

物質主義からの脱却・それに至る試練

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「死刑囚」などとも呼ばれ、絵面自体もあまり縁起の良いものではないため、それ自体を恐れる人も多いカードですが、本来目的に到達するための「忍耐」及び、「修行」、「大きな物を得るための代償」などと認識されるシンボルです。

どの絵柄でも吊るされた男の顔はどこか平穏であり、イエスそのものとも言われることもあれば、イエスを裏切り、その処罰を正面から身に受けるユダの姿であるとか、或いは北欧の神話でルーンの知恵を授かるためにユグドラシルで首を吊ったオーディン神であるとか、不死なるバルデル、豊穣の神アッティス、エジプトの冥界の神オシリス、狂乱の神デュオニュソスなど、ともかく、何か大きなことを成すために何らかの苦難を引き受けた存在がシンボルとされています。いずれも共通するのは、彼らが「何か物質を手に入れるため」ではなく、「肉体を捨ててでも、形のない知識や、もっと崇高なものを求めた」存在である事です。

特徴としては「両方に対になった木に支えられた枝の中央で片足だけ宙ぶらりんになった男」が描かれることは共通しており、なぜか片足だけ逆さの4を表すように曲げているのが印象的です。頭上に円光が見える場合もあり、そうなるといっそう、その人物がなんらかの悟りを得た存在であることが窺えるでしょう。バランスが取れた姿勢であることも、彼が決して「間違ったことをして無理やり裁かれているわけではない」事を示しています。

彼はどこか他人を茶化す道化のように見えることがあるかもしれません。それは逆位置に出た時、いっそうそのように解釈しやすいでしょう。また、このカード自体を「逆転の発想をすることで良い転機を迎える」と解釈することで、よき事の前兆として見ることもできます。

ただし、いずれにしても試練のカードには違いなく、簡単に成功にありつける人が引くカードではありません。この先経験することから何を得るかによって、その人が「ただ不幸にも苦しい思いをする」に留まるか、「よき経験を得たことで次に繋がった」かが決まることでしょう。

また、占星術においては「牡羊座」「天秤座」「天王星」と関連するとされ、いずれも「変化」を示す天体です。ただし、このカードにおける「変化」とは大きなものであるため、時間をかけてゆっくり修行を積まねばならず、変化したと気づいた時にはずいぶん長い時間が経っていることも考えられます。ともかく、物事が早く展開することはないでしょうし、そのようになりそうな時は自分を制御する努力をすべきでしょう。

何か苦難があることを恐れるより、その先により好ましい、望んだ自分の姿があることを希望として見るべきカードであると思います。

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