黒マント総選挙新人賞狐さん文章化「紺野今子の妖怪遭遇記」

紺野今子(こんのいまこ)

この物語の中心となる人物だ。
19歳学生。
好奇心旺盛かつ行動力が凄まじく1人でどこへでも行くようなそんな人物である。

幼少期から今に至るまで「コンコンちゃん」というあだ名で特に幼少期はからかわれたりした。
しかし当の本人はそのあだ名を気に入っていた。
なぜなら




「はああああああ今日も可愛いねぇええええ!!モフりたい~顔うずめたい~!!」

とある動物園のキツネの檻の前で尋常ではないほど興奮している女性。紺野今子である

そう彼女は極度のキツネ好きである。

それが元で獣医大学へ入学。将来は言わずもがなキツネの飼育員になる事が夢である。
キツネ、キツネ、キツネ。
彼女の生活の中心はキツネでできていると言っても過言ではない。
そんな今子が数奇な運命を辿るとは誰にも予想はできなかった。


キャンパス内研究所

ここでは野生動物の生態を研究している。最近は近隣の野山へ入り主に調査を行っていた。

「あ~みんな聞いてくれ。明日の調査は中止になった。」

教授の一言にやったー!ラッキーなどの学生の言葉が飛び交う中1人異を唱える人物がいた。

「教授!!??何故なんですか!!??何故山に入ってはダメなんですかああああ!!?」

「また君か紺野くん。何やら登山道の工事が延期になったみたいで通れないんだよ。諦めてくれ。」

「そんなあああ私のキツネちゃんがあぁぁぁぁ!!」

また始まったよなどの言われている通り今子のキツネ好きは学生の間では有名である。

「動物園にでも行け。以上だ。」

「動物園もいいけど野生のキツネちゃんに会いたいんだよ~。」

今子が膝をつき、orzの様な格好で項垂れている。これもこの大学の名物ではある。

「コンコンちゃん!じゃあ明日は私の家のニャコを見においでよ!」

「お猫様では私のキツネ愛は覆らないわよ!!」

「とか言って前会った時めちゃくちゃモフっていたのはどこの誰よ!」

相川雫(あいかわしずく)
小学生からの幼なじみで今子の親友である。
今子がキツネ好きに対してそれに負けず劣らずの猫好きである。家には高齢のニャコという猫がいる。

「それにしてもしずちゃんちのニャコ長生きだよね?何歳?」

「それが正確な歳はわかんないんだよね。私が産まれる前からいるみたいだけど。」

「ひゃあああもうそれ長老だよ長老!」

「そうかな?今でも元気だから歳を感じないんだよね!それでどうする?ウチくる?」

「ん~キツネに会いたい気分だから動物園行くよ。その後連絡するね!」

「わかった!じゃあまたあしたね!」




明くる日
今子は早起きをすると身支度をして動物園へ向かった。開園と同時に入るためだ。

しかし動物園に向かう道中なにやら呼ばれているような不思議な感覚に襲われた。

(なんだろう?どこから?誰?)

動物園へ向かう前にいつもとは違う道路を通り何かに導かれるようにどんどんと山の方へ進んだ。

(ここはいつも調査に来る野山じゃない・・・。ん?・・・あれは・・・祠?)

山の入り口には祠があり中にはさまざまな形をした小さい像が所狭しと並べられていた。その中心にはキツネの像が鎮座している。

(お稲荷様かな?山へ入ります。お邪魔致します。っと。)

今子は祠に手を合わせ入山を心の中で伝えた。


山に入ると昼前だと言うのに薄暗く木々が鬱蒼としていた。
しばらく山道を歩くと森の奥の方に何かが動いたのを見つけた。

(なんだろ?)

山道から外れ、茂みをかき分けどんどん奥へと進むとそこに居たのはぐったりとして所々血に濡れた狐であった。

「大変!!」

今子はすぐさま狐に近づき容態を確認、息はしているけども弱々しい、そしてよく見ると狐同士の喧嘩ではなく何かに切りつけられたような傷が無数に付いていた。

(ああどうしよう!何も予防しなかったらエキノコックスの危険とかもあるしそもそも人間の匂いをつけたら野生に戻れなくなるしぃ!)

「くぅ~ん。」

「知るかああああ!!絶対助けるからね!」

弱々しい狐の鳴き声にエキノコックスやその他の心配事が消し飛んだ。ただ助けたいその一心で狐を抱き上げた時不思議な感覚に襲われた。

「あ、あれ?」

軽い立ちくらみのように一瞬ふらついてしまいペタンとその場に尻もちを着いた。しかしそれだけで特に具合が悪いとかはないので再び立ち上がり山を降った。

(大学に運べば治療が出来る!!それにしてもなんて酷いことを!!)

そう思い狐の傷を見ると


その傷は全て塞がっていた。

「あれ?なんで?」

しかし狐は弱々しく呼吸をしているだけである。

大学のキャンパス内に入ろうとした時にふと気付いた。

(今入れば検疫やらなんやらで治療が遅れてしまう。ああああどうしよう!!)

「くぅ~ん。」

「家に連れてくからね~!!!!」

その後の今子の対応は早かった。
猛ダッシュで家まで帰ると傷の有無を再確認。
無くなっている事を確認すると体温を下げないように毛布にくるめた。

「あとは水とご飯だよね!狐が食べても大丈夫なのは・・・。やっぱりこれかな?」

以前ペットショップへ行った時にサンプルとして貰っていた缶詰タイプのドックフードを開け、水と一緒に狐の目の前に置いた。

すると狐は水をちろちろと飲みドックフードの匂いを嗅ぐと物凄い勢いで食べ始めた。

「よかった~。ご飯食べる元気があるなら大丈夫そうだね。」

今子は一安心したのか一息つくと椅子に腰かけ狐を見守った。


「ふふふ、おいしい??」

「そうでもないのぉ。」

「そう?新製品でも必ず美味しいわけじゃないのかな~。」

「まあ食えん味ではないからの。おかわりはあるかえ?」

「今それしかないんだぁ。ごめんよ~。・・・って、喋ったああああああああぁぁぁ!!!!????」

狐が喋る。
そんな事はありえない。頭ではわかっているが現実に目の前の保護した狐は喋り出したのだ。

「えっ!?はあ!?なんで!?ちょっとわかんない!!怖い怖い怖い!!」

「まあまあ落ち着くがよい。まずは妾を救ってもらったことを感謝する。」

そう言うと口の周りをドックフードで汚した狐が丁寧にお辞儀をした。

「えっ、いや、おかまいなく?」

「さて褒美に妾の名前を知る名誉をさずけよう。」

「は、はぁ・・・。」

「妾の名は玉藻の前(たまものまえ)。巷では九尾の狐でまかり通っておるわ。」

目の前の狐は九尾の狐、玉藻の前と名乗った。

「じゃあたまちゃん?」

「は?」

「だって玉藻の前って確か平安時代にいたって伝説だし九尾の狐ってたまちゃん尾っぽひとつしかないじゃない。」

「ぐっ!」

「それになんだろ?なんかそんな威圧感がないってか親近感が沸くっていうか。だから親しみを込めてたまちゃん!」

「はぅ!」

玉藻の前と名乗った狐は今子の言葉に項垂れた。

「ああああ!王の威厳すら失われたかぁああああ!!ちくしょおおお!!」

「ど、どうしたの?なんかよくわかんないけど悩みなら聞くよ?」

「おぉ!ほんに優しい人間よの~。名を聞いておらなんだ、名を名乗ることを許そうぞ!」

「私?私は今子!紺野今子っていうの!よろしくたまちゃん!」

「そ、そのたまちゃんって呼ぶの辞めてくれんかの~。」

「え?なんで?可愛いじゃん。」

「妾可愛さとか求めてないもん!威厳大好きだもん!」

「えぇ・・・。」

この狐だいぶ情緒不安定である。
今子もだいぶ喋る狐に慣れて来たのか普通に会話するあたりだいぶ肝が据わっている。

「それで?何があったの?」

「聞いてくれるか。どこから語ろうかの~。」


妾はそなたの言う通り今から1000年以上前1人の人間に恋をした。
人間で言う所の平安時代かの~。あの時は周りの野次など気にならぬくらい互いに愛し合っておった。
だが人間側が陰陽師を派遣しての。あっさり見破られてしまった。

逃げた妾を討伐しようと人間が大勢迫ってきての。あの時は流石に恐怖したが妾の術で作りだした身代わりを殺させ事なきを得た。

それから妾は人間には手出しをしないと誓い、妖(あやかし)の類を統べる事となった。

詳しい事は省くが数百年後に妖の王となったのだ。

それからさらに数百年、安泰だったんだがの~。先日の月食の時じゃった。月食は妾の妖力が一時的に弱まるからそこを信頼していた側近に裏切られ隙を突かれた。

八本の尾を斬られ、命からがら逃げてる時にそなたに助けられた。そんな感じかの~。




「ぐす、ぐす。」

「なんじゃ泣いておるのか?」

「だっでだまぢゃんがわいぞうだもん~!」

「えぇ・・・。」

感情移入し号泣してる今子が泣き止むのをしばらくドン引きした顔で待つ玉藻の前であった。

「ぐず、それで?これからどうするの?」

「まあまずは鼻をかめ。」

チーン!

「ふぅ、たまちゃんが回復するまで家にいていいよ?」

「本当かえ?」

「うん!」

「いや、ありがたいがやめておこう。妾が生きてる事は他の妖にバレている。ここが突き止められると今子にも危害が加わるぞ?」

「大丈夫!!たまちゃんは私が守ってあげるから!!」


『そなたの命!この宗仁(むねひと)の諱に誓い、生涯守り通そうぞ!!』


(まったく、人間というのはほんに優しき者よのぉ。)


「それじゃあ」


ドガーン!!!

「きゃあああ!」

けたたましい破壊音と共に今子の家の玄関が破壊された。

「ミツケタ、カリノジカンデス。タマモノマエサマ。」

破壊された玄関の先にいたのは見た目はイタチに近いが体長が明らかに普通のイタチとは違い身の丈3m程、腕の部分は変形し、鋭利なカマを思わせる。そんな化け物が禍々しいオーラを放ちながらゆっくりと近づいてくる。

「もう見つかってしもうたか!!今子!!礼を言う!ここで別れじゃ!」

そう言うと玉藻の前は窓から飛び降り、全速力で駆け出して行った。

「ニガサナイ!!」

それに反応し化け物も巨大な図体に似合わぬスピードで追従した。






玉藻の前は今子の家を飛び出した後被害が広がらないよう人気を避け、倒れていた山の麓までたどり着いた。

「オイカケッコハオワリデス!」

「ふん!妾の尾を手に入れた位で随分と生意気を言うようになったな鎌鼬よ!!」

「コノチカラガアレバ、ツギノオウハワタシダアアアア!!」

両腕のカマを左右に広げ鎌鼬は玉藻の前に迫るがそれをひらりと躱し鎌鼬に妖術で作り出した火球を当てた。

「どうじゃ!?」

「ヌルイナァ。ヤハリアナタハヨワクナッテイル。」

「ならば当て続けるまでよ!」

玉藻の前は10数個の火球を創り出すと一斉に鎌鼬に向け射出した。
しかし全弾命中したにもかかわらず鎌鼬に傷1つ着いてはいなかった。

「くっ!」

)

「オワリデスカナ?ナラバイサギヨクシンデイタダコウ!」

鎌鼬は両腕のカマを振るい風刃を創り出し玉藻の前に放った。

「ちぃ!」

玉藻の前は回避するが回避した先に鎌鼬が腕を振り上げ待ち構えていた。

「なっ!?」

「オワリダ!」

「どりゃあぁぁぁ!!」

鎌鼬のカマが玉藻の前に当たる直前、原付に乗った今子が玉藻の前を抱き抱え既のところで回避した。
しかし無理体制のままのキャッチだった為原付諸共滑り、転倒してしまう。

「けほ、けほ、たまちゃん大丈夫!?」

「今子!?なぜ来た!?そなたには関係ない事じゃ!?」

「関係ない事あるかぁ!!」

よろよろと立ち上がる今子は玉藻の前に激を飛ばす。

「身の上話を聞いた上で助けなくていいとか自分勝手も大概にしてよね!」

「しかし、」

「しかしもカカシもなあああああい!!そんでそこのあんた!!」

「ワタシカ?」

「あんた以外いるかこのガ〇ガンみたいな化け物め!」

「ガイ〇ン?」

「たまちゃんがあんた達の王様だったんでしょ!?お世話になってたんでしょ!?それを裏切るとか何様だああああ!!」

「ダマレニンゲン!コレハアヤカシドウシノアラソイ!ブガイシャハクチヲハサムナ!」

「黙ってられるか!たまちゃんを助けた時点で助け通すって決めたんだ!!何故なら私は狐を愛しているから!!」


こいつは何を言ってるんだろう
そんな共通認識を持ってしまった玉藻の前と鎌鼬だがすぐに立ち直る。

「今子!気持ちは嬉しいが鎌鼬の言う通りこれは妖の戦じゃ!」

「じゃあなんで話したのさ!!本当は助けて欲しかったんでしょ!?悲しかったんでしょ!?」

「そ、それは、」

「私は助けるって決めたら助けるの!!私が勝手に決めました!だから助けられろ!たまちゃん!」

しかし無常にも玉藻の前に激を飛ばしている隙を逃さず鎌鼬は2人に接近した。

「フタリマトメテシネ!!」

「たまちゃん!!」

それを察した今子は玉藻の前を突き飛ばし、背後をバッサリと斬られてしまう。

「ああああ!!痛い!!痛い!!」

「ああ今子!?しっかりするんじゃ!!」

「たまちゃん?私の背中どうなってる?めちゃくちゃ痛いんだけど!」

今子の背中は切り傷により露出されているが傷口は赤黒く、どくどくと血が溢れ出て止まらない。

「約束は守るからね?たまちゃんを助けるんだから。」

「何故そこまで・・・。」

「だって、たまちゃんに呼ばれた時すごく寂しそうだったから。」

「あれは無意識で、」

「無意識でも関係ないよ。あれ?なんかすごく寒くなってきたんだけど私死ぬのかな?」

すると今子はガタガタ震え始めた。
背中の出血がより酷くなってきたのだ。

「・・・背に腹はかえられぬ。妾も覚悟を決めた。今子!!そなたの意思!有難くちょうだいいたすぞ!!」

「なんかよくわかんないけどいいよ。」

今子が弱々しく同意すると玉藻の前と今子は光に包まれた。

「ナンダ!?ナニガオコッテイル!?」

鎌鼬が見えない圧により近付けないでいると光が収まりそこには黒い和装のような立ち姿の今子が立っていた。しかし様子がおかしい。

「あれ?痛くない!なんで!?」

『どうやら成功したみたいじゃな!』

「ん?たまちゃん!?どこ!?」

『細かい説明は後じゃが簡単に言うとそなたと妾は『同化』したのじゃ!』

「同化!?えっ!?待って!?」

今子は焦りながら倒れた原付のサイドミラーを覗いた。

「ちょおおおおお!!!狐になってるの私!?」

今子が自分の顔をペタペタ触ると目の当たりは今までの自分ではあるが鼻から口にかけては尖り、完全な狐である。そしてペタペタ触っている手もよく見ると狐色の毛が生えている。
まさに狐人間と呼称した方がいい姿である。

「それにこの格好なによ!?」

『それは妾の戦闘衣じゃ、そなたに貸すから存分に使ってくれ!!』

「何が何だか!?」

「ウオオオオ!!」

1人あたふたしていた中鎌鼬が接近し、腕を振り下ろしてきた。

「わああああ!!」

しかし今子がサイドステップで攻撃を躱したが自身の想定以上に跳躍してしまう。

「なんか力が凄いんですけど!!」

『同化の法は人間の体に妖の妖力を掛け合わせる秘術じゃ!しかも弱ってるとは言え妾の妖力じゃ!今なら鎌鼬なぞワンパンよ!』

「ワンパンってどこでそんな言葉覚えたのよ・・・ま、まあとりあえずあいつ殴る!!」

そう言うと今子は鎌鼬に向かって駆け出した。
人間には到底出せないスピードで接近すると鎌鼬のボディに右ストレートを叩き込んだ。

「グフアアア!!」

「そい!」

くの字に折れ曲がり頭が下がった鎌鼬に左アッパーを繰り出す。

「ガハァ!」

「まだまだぁ!」

更に跳躍しアッパーにより上がった頭を振り下ろしの拳で地面に叩きつけた。

「なんかすごい強くない私!?」

『妾の妖力のおかげじゃな!』

「ニンゲンノブンザイデェ!!」

鎌鼬は叩きつけられた体制から素早く起き上がると一旦距離を取る。
その顔からは煙のように妖気が溢れている。

「うるさい!降参するまでぶん殴る!」

今子が再び接近しようとした時であった。

「あれ?」

先程よりスピードが落ちている。
それでも人間を遥かに凌ぐスピードではあるが違和感が拭いきれない。

「ねぇたまちゃん?」

『なんじゃ?』

「今の姿って時間切れとかある?」

『あ、』

「今あって言ったよね。」

『手順をだいぶ飛ばした同化の法であるからの~。恐らくあと五分で強制解除じゃな。』

「先に言ってよ~!!」

今子は焦りのあまり接近と同時に出した右ストレートは大振りの為鎌鼬に躱され、さらに追い討ちで拳を振るうが全て躱される。

「ドウシタニンゲン?ツギハワタシノバンダアアア!」

鎌鼬は風刃を発生させながら自身のカマでも今子を攻撃してきた。

辛うじて躱す事はてまきるが徐々に攻撃が当たり始め、堪らずバックステップで距離をとる。

「たまちゃんどうする!!」

『・・・勝負を仕掛けるか。』

「策があるの!?」

『しくじればいよいよ解除され2人とも斬られてしまうがの。』

「でもこのままじゃ埒が明かない!やろう!」

『わかった!ならば妾に最後に残った尾の力を使おう!これを行えば10秒で同化が切れる。その前に決めるのじゃ!』

「わかった!私は何をすればいい!?」

『今子が1番強いと思う武器を想像しろ!!』

「えっ!?想像!?」

『いいから早く!』

「え~っとえ~っとぉ!これ!!」

『あいわかった!』

今子が強く念じると右手に一振の刀が握られていた。

「これは?」

『刀とはやるのぉ!妾も作りやすかったわ!さぁ!斬れ!』

「わかった!うおおおおぉ!」

「グオオオオ!!」

今子は再び鎌鼬に急速接近し刀を縦に一閃。
鎌鼬は両腕のカマをクロスし受け止めるが受け止めきれたのは一瞬。カマ事その体を両断されてしまった。
それを確認した今子がまたもや光に包まれ、光が晴れた時には人間の姿に戻った今子と横には玉藻の前がいた。

「たまちゃん、やったよね?」

「うむ、見事な一閃であったぞ?」

「あ、ありがとう。あっ!傷!?傷が無い!?」

「同化の法により妾の妖力で傷も治しておいたわ。」

「たまちゃんありがとぉおおお!!」

「こ、これ抱き着くでない!!」

「怖かったよおおおお!!!」

「まったくそなたは。」

泣く今子を前足を使って慰める玉藻の前であった。

「人間め・・・。」

2人は声の先を見ると斬られた事により致命傷をおった鎌鼬がいた。しかし体長は縮み、60cm程になっていた。

「力に溺れた哀れな妖よ。言い残すことはあるか?」

「ふん、玉藻の前様よ、この戦いは全ての妖が見ていた。人間と同化するなどという外法を行ったあなたを他の妖が許すかな?せいぜい足掻くがいい。」

そう言い残すと鎌鼬はチリになり消えていった。

「ふん、望む所よ。」

消えた鎌鼬のいた場所に残されていたは一房の尾であった。

「たまちゃんこれって。」

「妾の取られた尾じゃな。まずは1本目。」

玉藻の前はその尾を咥えると飲み込んだ。
すると徐々に尾が生え始め二尾の狐となった。

「鎌鼬が盗って行ったのは変化の尾じゃな!どれ!」

玉藻の前は念を込めるとバク宙をした。するとそこには狐耳を生やした絶世の美女が立っていた。

「綺麗、たまちゃんだよね?」

「そうじゃろう!そうじゃろ!妾は綺麗であろう?はっはっは!」

ボンっ

玉藻の前が高笑いをすると小さい破裂音と同時に煙に包まれ、そこには小学生くらいの女の子が立っていた。

「か、か、か、か、かわいいいいいいい!!!!」

今子はたまらず抱きつき頬を擦り寄せた。

「く、くそう!妖力がまだ戻っておらんかった!ええい!離さんか!!!」

「可愛い可愛い可愛いかわいいいいいいい!!!」

「妾は威厳が欲しいんだってば!可愛いって言うなあああああ!!」




この先さまざまな妖の襲撃に合うが紺野今子と玉藻の前のコンビが次々とそれを打ち破り、盗られた尾を取り戻し再び妖の王となるのはまだ先の話なのかもしれない。







「鎌鼬がやられたか。」

「そのようだな。」

「ふん、九尾の力を使いこなせぬ阿呆めが。」

「ふふふ、さも自分は使いこなしてるって言い草じゃなぁい?」

「僕は完璧だよ~!」

「ふぉっふぉっふぉっ。こりゃどの妖にも使いこなせんよ。せいぜい利用するまでじゃ。」

「俺ぁこんな力なぞ無くても無敵だがなぁ!」

山の奥、古い神社の社のような場所に7つの影が揺らめき、互いを牽制しながらも威嚇し合う奇妙な構図が出来上がっていた。

紺野今子と玉藻の前の災難はまだまだ続く。

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