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【経験した白血病の治療】

 白血病の治療は、抗がん剤の他に、造血幹細胞移植というものがある。
今回は、この治療のことについて書こうと思う。

 造血幹細胞移植の工程は、意外と少ない。
step1,免疫細胞の働きを弱くする
step2,造血幹細胞を移植する
step3,経過観察
簡単にまとめると、これだけだ。

step1,免疫細胞の働きを弱くする

 これは、自分の身体にある臓器たちが、移植した細胞を敵とみなし、攻撃しないようにするための処置である。
言葉で書くと簡単そうだが、そんな易しいものではない。
大量の化学薬品を体に入れ、放射線を全身にあてるのだ。
普通に暮らしていれば、ありえないほどの量を入れたり、あてたりするのだから、当然副作用がある。
私の場合は、吐き気、耳が聞こえづらくなる、エラのあたりが腫れている感覚、手足の痺れ、体のだるさ、があった。


step2,造血幹細胞を移植する

 この工程自体は、とても簡単だ。
輸血と同じように、造血幹細胞を点滴するだけである。
時間的にも、1時間もかからなかったと思う。

 しかし、私にとってこの時間は、とんでもなく辛かった。
点滴は、首に入れられたカテーテルから入れられる
造血幹細胞が入れられている最中、魚市場のような、濃い磯の香りがしてくるのだ。
【吐き気という地獄】という記事にも書いたが、香りがするだけで吐き気に襲われていた私にとって、その時間は、悪夢以外の何者でもなかった。


step3,経過観察

 step2を終えると、抗がん剤を入れたりすることはなく、経過観察のみを行う。
もちろん、輸血や点滴などはあるが。
移植した細胞が、私の細胞と入れ替わるまでには、約2週間かかった。
この2週間の体調は最悪だった。
1日中寝ていた。
というより、起きていられなかった。
誰とも会話したくない。スマホも見たくない。そんな状態だった。

 この期間中、最も気をつけなければならないのが、合併症と感染症だ。
自分の体内には、それらを引き起こす細菌と戦う免疫細胞がいないからだ。
もしかかってしまうと、簡単に重症化し、最悪の場合、死に至るらしい。
とは言っても、細心の注意がはらわれているため、そうそうかかることはないが。

 細胞がしっかり定着すると、徐々に免疫細胞が作られ始める。
増えていくにつれ、私の体調も良くなった。


 いかがだっただろうか。
移植がどのように行われるのか、イメージしていただけただろうか。
これから移植を行う方、そのご家族の方は、不安で仕方がないだろう。
確かに苦しかった。
全く楽なことではなかった。
だが、乗り越えられないわけではない。
必ず、乗り越えられるのだ。
"もう嫌だ。逃げ出したい。“
そう思うだろう。

 その苦しみを取り除いてあげることはできないけれど、その苦しみは、やがてあなたの人間としての厚みに変わります。
そして、その厚みは、必ずあなたの人生を豊かにします。
だから、今はどうか生きてください。

この記事が、暗く沈んだ心に少しでも届きますように。

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