最期の晩餐?

祖父が亡くなってから数日。
連日ばたばたしながらも火葬から葬儀、納骨など大まかなものも終わり、ようやくひと段落し家に戻ってきた。

一晩経ち、朝起きてきた父がこんなことを言った。
「ジジの夢を見た」と。

それは自分の隣でジジが飯を食っていた、という内容のものだった。父含む親戚一同が仏壇の前で賑やかに話す横で、生前から比較的自由に動かせていた右手を使い豆腐や肉汁などを黙々と食べていたらしい。

前述の通り祖父は数年前に脳梗塞を起こして、左側がほぼ動かず寝たきりになっていた。そのせいで大好きな山登りにも行けず、後に悪化した白内障のせいで満足に好きな相撲や野球も観られなくなり、すっかり元気が無くなってしまった。
そんな祖父の唯一の楽しみだったのが、ご飯。
元々よく食べる人だった祖父は、入院してからも施設に入ってからも変わらずよく食べた。90代まで生きられたのは多分これのおかげだったのだろう。
ちなみに入院した当初は「おかあさんの肉汁が食べたい」と看護士や見舞いに来ていた母達の前で泣いたこともあったそうだ。(孫である自分や妹にはとても優しかったが)厳格な祖父が人前で涙を流したことに、母はとても驚いたそうだ。

そんな祖父は昨年末に肺炎を起こし、今まで入院していた。そしてそれが原因でご飯を上手く食べられなくなりそのまま亡くなった。
これはあくまでも個人的な意見だが、人間は飯が自力で食えなくなるか動けなくなると急激に弱る。身体的にも精神的にも。

父は「寝る前にジジの話を聞いてたから夢に見たのかも」とは言っていたが、あんなに食べるのが大好きだった祖父のことだし、あながち本当に夢を介して自分の望みを叶えに来たのかもしれない。

なんにせよ、どんな形であれできなかったことを叶えられたというのは悪いことではないだろう。

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