『禁止』という言葉

青崎有吾著「図書館の殺人」という本を読んでいます。内容は、高校生が主人公の推理小説です。

この中に「部活禁止」という言葉が出てきます。

わが家の子どもたちも、試験の1週間前や入試などで在校生が学校に立ち入ることができない時に、「今日は部活禁止なんだ」というように、この言葉を使います。

この「禁止」という言葉、Wikipediaで調べると、

禁止の態様としては、宗教・道徳などを通じてその価値観に反する行為を禁止することや、支配者・権力者がその目的を果たすために被支配者・権力に服する者に自身の意向・命令に反する行為を禁止することなどがある。明示的であれば黙示的であることもある。現在では、禁止とは法令違反のことをいうことが多い。

と記してあります。部活の場合、支配者・権力者は学校で、非支配者である生徒です。なので、学校の意向・命令に反する行為を生徒に対し禁止するというのがその概念になります。

試験前や入試などの行事は、学校による部活動への意向・命令に反する行為でしょうか?

なんだか変な言葉だといつも思っていましたが、一般の書籍にも登場したので、やはりフツウに使うのだろうか?

他方、国語辞典を調べてみると、

[名](スル)《古くは「きんじ」とも》ある行為を行わないように命令すること。「通行を―する」「外出―」

と、単に「行為を行わないように命令すること」との記述があります。

この2つの意味の違いは、支配が及ぶある一定の期間を対象としたものであるか、期間という考えを省いたものであるかです。

「部活禁止」という言葉は、支配が及ぶうちのある一定期間だけに適用する言葉なので、「禁止」というよりも、「部活一時中止」や「部活休み」のような言葉を用いる方が良いような気がする今日このごろ。

近頃、小説を読むと、こういうディティールがとても気になります。この本は、帯に「若き平成のエラリークイーンが贈る最新長編」と書かれているように、緻密な推理ロジックを持つ傑作です。その点も気にしながら、密度の濃い読書を楽しんでいます。



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