ジャカランダ

ひたひたひたと忍び寄る、そうだ加齢の話をしよう。

本記事は、米国オレゴン州ポートランドを中心に毎月発行されている日系紙「夕焼け新聞」に連載中のコラム『第8スタジオ』からの転載(加筆含む)です。1記事150円。マガジンでご購入いただきますと600円買い切りとなり(これまでの記事もこれからの記事もすべて読めます)、お得です。

ジャカランダという紫の花をご存知だろうか。
今年もまた、この地で咲き始めている。
溜め息が出るほど美しい。
五月末の今、五分咲きというところか。

調べてみると、ジャカラン「ダ」ともジャカラン「タ」ともいうらしい。
ノウゼンカズラ科の低高木とある。

わたしがこの花を初めて意識したのは、去年の五月だったか。六月だったか。雨があまり降らないこの地では、咲いた花はなかなか散らない。

車で通るたび、街を歩くたび、ここかしこで、それはそれは美しい見事な紫色の花が目に飛び込んできた。見かけるときは意識しても、通り過ぎればきれいさっぱり忘れてしまうのが常なのに、この時ばかりは「この花は一体何の花?」「名前は何?」と知らずにはいられない衝動に駆られて、ネットで調べて行き着いたのが、ジャカランダだった。

それだけでは気持ちが収まらず、遠く日本にいる植物好きの母に「ジャカランダ知ってる?」と聞くと「知ってる知ってる、すごく綺麗だよね」と言われ、なんだ、有名な花なのか、と思ったりもした。世紀の大発見をしたような気がしていたのに。

ある場所に、ただ一本立つのでなく、ありとあらゆるところで見かけるので、この木はまるで桜のようだと感じる。まとうオーラ、受ける印象が似ているのだ。派手でなく、凛として、堂々としている。咲いている間はこちらに晴れやかな気分を与え、散り際はきゅんとさびしい。また来年ね、とつぶやきたくなるほどの。

と思ったら「紫の桜」ともいわれているそうで、なるほど、わたしだけでなく多くの人も同じ感想を抱くらしい。植物にさして詳しくないわたしでも虜にしてしまうジャカランダ。ぜひ見に行かれて下さい。あなたの暮らす街や、近くの場所に咲き誇っているといいのですが。
大丈夫です、桜みたいにすぐ散りませんから。

ここに書くかどうかをかなり悩んだのだが、やはり見つめるべきは見つめるべき、と思い直し、勇気をもって筆を進めます。

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