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作品紹介14 『馬術で金メダル』 THE ART FUCHU

作品紹介14『馬術で金メダル』(by Jの先生)


塾の卒業生で現在、お馬の仕事をしている&馬術をしている女の子がいるのですが、その写真を題材に選びました。パリオリンピックで馬術が話題になっていたので、その子に絵をプレゼントすることにしました。

数年前に彼女は馬術で金メダルを獲ったので(しかも本人の誕生日に!)彼女の所属しているレーシングファームの過去ログを遡って写真を見つけてきました。馬蹄は最後に文字をカーブ上に描くときに、曲線定規の代わりに使います。1枚のすてきな写真を見ながら、たくさんの思い出で頭をいっぱいにした上で、まずは輪郭を描きました。

金色の板に金色で描いたら、見えにくくてなんのこっちゃわかりません。顔の表情や指先などの細部は、私の手法だと写真のように表現できないので、この絵にぜったいに必要と思われる主線だけをイメージして描きました。

老眼にこれはキツイ。

こう見るとお馬さんの顔って大きいですね。「こういう絵ってトレス(トレーシングペーパーやカーボン紙などで写す)するの?」と妻に聞かれましたが(完成した馬がリアルだったから)、それは絵を描く上で一番面白いところを放棄している作業なので、よっぽどの事情がない限り(そんな事情思いつかないけれど)やりたくないです。主題のお馬さん自体、競馬が好きだった時期があったし、今までに3回くらい描いたことがあるので慣れていたから、他の動物たちよりリアルになったんだと思います。

下手でもいいから自分の目と手で描きたいです。というより、下手とか上手いとかに囚われる状態が嫌です。「楽しい」とか「自分の想いを形にしたい」といった点に価値を置く場合、トレスは選択肢として完全に消えます。綺麗に形どるなら写真の方がいいわけだし、一本道で完成したら、あれこれ考える時間が無くなってしまう。

絵を描いている時間に相手のことを考えながら、なかなか思い通りにならない自分のマインドやフィジカルと向き合う。

「元気にしてるかな」「お馬さんとじゃれ合っているのかな」「ケガとかしてないかな」「あっちの夏も暑いだろうな」

さまざまなことを想像しながら、一発勝負で線を描いたり、色を塗ったりして何とか完成に近づける(塗りは、私の手法の場合、簡単に塗り直しができるけど、その緩さに頼ると作業が終わらなくなってしまう)。

最初から最後までどの段階、どの局面にも学びと楽しみがあるので、トレスして、つまり山頂付近まで車で移動しらくちんにゴールしたとしても、相手のことを考えたり、思わぬ何かを感じたり、今持っている技術を高めたりといったプロセスがなければ、私にとっては製作の意味がまったくないのです。

というわけで、1時間かけて完成した絵がこちら。

完成した絵とともに数年ぶりにLINEしたら思いがけない返信が――

「実はこの子、最近他のクラブに売れてしまって、もう会えなくなってしまったのですごく感動してます」

この絵を描いて本当によかったです。
製作過程に興味がある人は、こちらの1分動画をどうぞ。


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