生存報告(2024/03/17)(『稲葉貴子バースデーライブ’24〜Ultra Attchu Fes!〜』(アッチュフェス)、『夜明けのすべて』

『稲葉貴子バースデーライブ’24〜Ultra Attchu Fes!』(アッチュフェス)

稲葉貴子さんの50歳のお誕生日ということでかなり久々に現場に行ったわけだが、やはりあまりにも最高すぎた。小湊さんが明日以降の稲葉さんの燃え尽き症候群を心配されていたがそれはこちらも同様である。こんな素晴らしいものを観せられて明日からどうしろと言うのか。お願いだから毎年やってほしい、というかもういっそ稲葉貴子さんのお誕生日だけは3ヶ月に一度やってくるという特例にして、3ヶ月に一度ぐらいのペースでやってほしい。そんな奇跡をうっかり願ってしまう程には素晴らしい夜だった。
語り出すとキリがないので一つだけお伝えしておくと、令和6年に聴く本人歌唱(with 仲間たち)の『Magic of Love』は完全に歴代最強だった。全員が全員、カッコよすぎだしキュートすぎる。そして「♪どうしようはぐれちゃった」「♪どうしよう何処にいるの」を受けて客席からの「ここだよあっちゅ」コール。太陽とシスコムーンから名曲を引き継いだJuice=Juiceのライブで発生したコールが令和6年に太陽とシスコムーンに帰ってくるという大河ドラマ的なヤバさ。そしてその流れでラスト直前の「♪あなたが好きよ」が続くパートの歌詞を「あなた」を順に変えて「♪あっちゃんが好きよ」(OPD)「♪あっちゅが好きよ」(前田有紀&斉藤瞳&柴田あゆみ)「♪あつこが好きよ」(太陽とシスコムーン)って歌われた日にはもうっていう。稲葉さんがこれ歌われながら一切ステージ上で動じずそのまま歌い続けるので、あ、これ他のメンバーがサプライズ仕掛けたんじゃなくてもともと稲葉さんがそうやって演出してたってこと? それはそれで逆にめちゃめちゃ面白いなー、って一瞬思ったけど、曲終わりのMC聞いたらやっぱりみんなからのサプライズだったそうで、いやこれいきなり当てられてステージ上でまったく動じないあっちゅのプロフェッショナリズムがやっぱ一番すごいんかい!つって。それでまたもう一回泣いちゃうっていう。ちょっとこの日の『Magic of Love』は記憶に残しておきたいと心から思う。
この場所にいるために自分は生まれてきたんだな、って感じさせてくれるものっていうのは人生でそんなには多くはないけど、メロン記念日やハロー!プロジェクトのライブではいつもそう思う。それで、今までだったらそう感じさせてくれるものと出会えて自分は良かったなんて思ってたけど、この日はそれよりも先に、そう感じさせてくれるものと出会える人生でありますようにって二人の娘のことをまず思ったから、やっぱり年をとったんだろう。ステージの上も客席も。でも稲葉貴子さんのように正しく年をとってれば、こんな景色がまたいつか見られるだろう。それは間違いなく、50歳の稲葉貴子さんだからこそ作り上げられたものだ。本当に良いものを観させてもらって感謝するばかりです。お誕生日、本当におめでとうございます。
あとやっぱり、メロン記念日はいつだって最高すぎて、あの四人を今でもずっと追いかけている。「愛してるー!」ってまたどこかで叫べる日が来ますように。ってそれよりももっと強く、メロン記念日のあの四人が、いつまでも笑顔で暮らせてますように。

映画『夜明けのすべて』

医大生も早いもので6年目、来年の今ごろは医師国家試験にも合格している予定でもあり、いわゆる医療モノと呼ばれるような映像作品に触れておくのも良い機会かと思うので今月は映画『夜明けのすべて』を観る。PMS(月経前症候群)に悩む藤沢さん(上白石萌音)と、パニック障害を抱えた山添くん(松村北斗)の二人を中心に描いた作品。三宅唱監督のインタビューがおしなべて良かった。あとは鈴木涼美さんの文章も。

PMSとパニック障害。メンタルヘルスと真摯に向き合った、映画『夜明けのすべて』三宅唱監督インタビュー|Pen Online
https://www.pen-online.jp/article/015104.html

『夜明けのすべて』三宅唱監督インタビュー | 【GINZA】東京発信の最新ファッション&カルチャー情報
https://ginzamag.com/categories/interview/439748

三宅唱監督『夜明けのすべて』インタビュー。「恋愛」ではない人同士のつながり、ふたりを見守る人々 | CINRA
https://www.cinra.net/article/202402-yoakenosubete_iktay

【鈴木涼美コラム】映画『夜明けのすべて』レビュー:月経について男に、理解しないでいいからやって欲しいこと|エスクァイア日本版
https://www.esquire.com/jp/entertainment/movies/g46804894/suzuki-suzumi-yoakenosubete/

以下、雑感など。
PMSもパニック障害も医師国家試験に大きく取り上げられる疾患ではない。特にPMSに関してはそういった疾患があるということは学んではいるがその実態については深く学んできてはいないし、おそらく初期研修を終えた段階でも婦人科について深く学ぼうとしなければほとんど知る機会はないだろう。作中の言葉を借りればPMSは「ランク」が高い疾患だとは言えないが、しかしもちろん患者さん(や近い人たち)にとっては「ランク」云々などと関わりなく自分が体験している疾患はそれそのものであるのだから、医師にとって知らなくて良い疾患など存在しない。
とは言え医学生の学年が上がり医療現場に近づけば近づくほど、疾患の「ランク」というものがある、この「ある」というのは実際にモノとして存在しているわけではないんだけれど、その概念にふと引っ張られていることに気づくことはままある。例えば「面白い疾患」という言葉を耳にする機会は少なくはなく、もちろんこの「面白い」というのはfunnyという意味ではない、interestingとも少し違っていて、訳すならworth to studyとかもっとシンプルにrareということになるんだろうけど、この感覚はかなり意識して唾棄しない限りは医師という職業について回るものなのだとも思う。医師に限定せず、研究をしながら実践をするという種類の職業ならおそらく全てがそうで、医師が人の健康を扱っている職業であるから「面白い」という言葉が不謹慎に思えるし自分もあまり積極的に使いたい言葉ではないのだが、しかし根源的にこの概念を避けることは難しい。というかこの感覚がどこかにないと、職業人としては駄目なのではないかとも思う。
ただ、いま現在の自分としてやはり大切にしたいと思うのは、疾患の「ランク」が一般的に存在していて(それはつまり例えば、死なない病気は大したことではない、というような考え方のことだが)、同じようにそれは医師の側にも異なった形では存在し得る(し、実際に存在している場所がある)のだが、そういったバイアスの可能性を検討したうえで、それを可能な限り排除あるいは保留して、目の前の患者さんに向かうということだ。というか、まあ、そうするしかないだろうと思う。
あるいは、医師としての自分の中で疾患に「ランク」があろうがなかろうが、また一般的な見方として疾患に「ランク」があろうがなかろうが、目の前の患者さんが苦しんでいる疾患や病態がいま実際にあるのであればそれはその患者さんにとっての「ランク」では第一位なのだから、そちらに寄せた対応が必要だということに過ぎない。それはおそらく「自分の娘だと思ったら出来ないことはしない」っていうのが根本的なハラスメントの解決になるはずはなくて、いつどこで誰に対しても「その人が嫌だと言ったことはやめる」ってことをずっとやり続けるしかない、というのと一緒だ。「話し合いましょう」が解決策になるっていうのは時代としてたぶんもう終わっていて、というかそれを言うこと自体がやっぱりあまりにも強い側(とされていた側)からの言い分すぎていて、少なくとも医療の現場ではそういうことじゃないんだろうなとは思う。対話をあきらめる、っていうわけじゃないけど、対話してる余裕がない人、対話してる場合じゃない人っていうのはそこにはいて、そういう人と対話じゃなくてじゃあ何が出来る?というのを、そのやり方の一つの可能性を、映画『夜明けのすべて』はおそらく描こうとして、そして実際に描けている。
藤沢さんと山添くんはめったに向き合わない。職場でデスクを隣り合わせているときのほとんどがそうであるように、向き合わずに同じ方向を向いている。その点で夜空はとても良い。見るものが遠くにあればあるほど、同じ方向で座れるから。そして人は、お互い向き合って理解し合うことが出来なくても、なんとなくそばにいることは出来る。なんたって、そばにいるだけで良いのだ。熱烈な言葉もSMSもいらない。絆とか言わなくて良いし別にエモくなくて良い。ただそばにいるだけで良い。コスパが良すぎて詐欺なんじゃないかと疑うほどだけど、実際、それ以上に出来ることなんてほとんどの人にはあまりない。
映画『夜明けのすべて』で自分が一番好きだったシーンは、藤沢さんが体調を悪くして早退してしまい、山添くんが忘れ物を届けに行く一連の流れだ。このシークエンスの中で、二人は同じ画面に映らない。二人はここで(映画上)出会わない。それでも、山添くんは忘れ物を届けたあとであることを会社のみんなにするのだけれど、それは藤沢さんが存在しなければ絶対に山添くんには出来なかったはずのことだと自分は思った。山添くんが会社のみんなにしたこと自体は、本当に些細なことだ。それこそ「ランク」で言ったら大したことじゃない。それでも、山添くんにとっては、というか山添くんに感情移入している自分にとっては些細なことではもうなかった。「ランク」がどうこうでなく、その体験それこそが、何よりも大切なことなんじゃないか。何か大きな事件が起こったわけではないけれど、少なくとも自分にとってはあの場面は確かに救いそのものだったし、理屈のつかない涙がやってきてなかなかに困った。
決して派手な映画ではない。だけどいま、令和6年の少なくとも日本にはこういう映画があってほしいという、そんな映画でした。素晴らしかったです。

観たものなど

2/12 映画『夜明けのすべて』(TOHOシネマズ府中)
2/12 『R-1グランプリ2024 準決勝』(配信)
3/2 『芸人藝術』(東京・Gallery Conceal Shibuya スペースCD)
3/6 『シュート〜ク2!! エンセン井上×朝日昇×や団本間×エル上田』(配信)
3/8 『天才バカボンのパパなのだ』(配信)
3/16 『稲葉貴子 バースデーライブ’24〜Ultra Attchu Fes!〜【2部】』(目黒 BLUES ALLEY JAPAN)

そのほか(箇条書きで)

・名言その1。「住みます芸人はそれ(直の営業)で成り立ってるんで」(ファミリーレストラン原田さん)(『マルコポロリ!』2/25放送・月亭八光特集回)
・名言その2。「(若い子の活躍が苦しくて)見てられへん」(COWCOW多田さん)(『チャンスの時間』2/18配信回)

ネット記事など

「美談にしちゃいけない」ボクサー・穴口一輝の逝去前日に、青木真也がインタビューで語っていたこと「格闘技がメジャーになる必要はない」 - ボクシング - Number Web - ナンバー
https://number.bunshun.jp/articles/-/860648

TBS外山惠理アナ「ピンチだらけでしたよ」今だから笑って話せる、テレビから外された不遇の時代と転機となった永六輔さんのラジオ番組出演|概要|インタビューサイト 双葉社 THE CHANGE
https://futabasha-change.com/articles/-/597

「ザ・プラン9」ヤナギブソン、元プラマイ岩橋に「契約解除でスッキリなら最悪の結果よりマシ。人命第一」:中日スポーツ・東京中日スポーツ
https://www.chunichi.co.jp/article/857982

【越中詩郎連載#28】ケンコバのおかげで女性ファンが増えて…11年ぶりのIWGP戦は号泣入場  | 東スポWEB
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/293598#google_vignette

蝶野正洋が回顧「大仁田戦は俺の歴史の中でベストテンに入る試合」…シン・大仁田厚 涙のカリスマ50年目の真実(40) - スポーツ報知
https://hochi.news/articles/20240222-OHT1T51153.html

日本の同性愛史を紐解く、心震えるドキュメンタリー。映画『94歳のゲイ』予告編&ポスタービジュアル&場面写真一挙解禁
https://eigachannel.jp/j-movie/53757/

【ケーシー高峰の生き方】「グラッツェ、アミーゴ、やってるか、母ちゃん」…本人が語っていた独特な漫談の秘密 | デイリー新潮
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/03021045/

うつ病になりやすい体質が遺伝する仕組みを世界で初めて解明―メンデル遺伝を覆す新たな遺伝メカニズムの発見―|医学部・学会情報|医・歯学部を知る|時事メディカル|時事通信の医療ニュースサイト
https://medical.jiji.com/topics/3360

オカダ・カズチカが新日本の米国単独興行で〝想定外〟の取材オファー「見てもらわないと意味がない」 | 東スポWEB
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/294659

杉咲花×ミヤタ廉×浅田智穂による『52ヘルツのクジラたち』鼎談。トランスジェンダーの表象と、日本映画界の課題 | CINRA
https://www.cinra.net/article/202403-52hz_iktay

【判決要旨全文】札幌高裁が「違憲」と判断した理由は?(結婚の平等裁判) | ハフポスト NEWS
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_65f17930e4b01707c6d2759b

ADHDの症状を改善するゲームアプリ、日本の製薬会社からも発売 | ギズモード・ジャパン
https://www.gizmodo.jp/2024/03/shionogi-group-vision-endeavor-rx.html

戦後初 PTSD・心的外傷後ストレス障害とみられる旧日本軍兵士について国が実態調査へ|YBC NEWS NNN
https://news.ntv.co.jp/n/ybc/category/society/yb32b7e00ced7045c28f151177298bf57a

(2024/2/11〜2024/03/17)

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