生存報告(2022/12/25)(M-1グランプリ2022、寺田寛明「アイドル版M-1」、2022-2023)

M-1グランプリ2022

配信で準決勝、敗者復活戦と本戦、打ち上げ、月曜The Night、博多大吉振り返りポッドキャスト、岩崎う大note、などを視聴&読了。以下、思うところをつらつらと。

ウエストランドの漫才が「人を傷つけない笑い」へのアンチテーゼなのかどうかというのは結構難しいところなので置いておくけど、今年の大会は全体として「共感の笑い」ではなく「共感できない(という事実に対しての)笑い」が一つ隠れた軸としてあったんじゃないかなと感じた。それはたぶんこの日の出演者や観客や審査員がたまたまそれを求めていたというよりは、それを求める雰囲気が少なくとも今この場所では熟成されているというほうが近い気がする。

ウエストランドの漫才を見て「みんなが心の中で思っていたことを代弁している」と評価する人もいるけどちょっとそこには納得出来なくて、例えばお笑いの単独ライブでのメッセージ性が云々なんていうのはそもそもその事象自体を知っているというほうが少数派なわけで。月曜The Nightで小沢さんが「思想」と言うキーワードを口にしていた(そこでかもめんたるとブラックマヨネーズの名前を一緒に出してたのが凄いと思った)けど、そっちのほうがしっくりくるし、そしてそれは「共感の笑い」ではなく「共感できない(という事実に対しての)笑い」というのが近いような気がする。この両者がまったく別物あるいは逆向きのものではなかったりするのでそこはそこでややこしいのだけど。

ただ、笑いというのが怖いなと改めて思うのは、その漫才を観るまで事象として知らなかったようなことでさえ、観客によっては「心の中で思っていたこと」にすり替わってしまう。観客にそう思わせるのが芸だと言われればその通りなんだけど、その騙し方っていうのは本質として宗教に近いし、その使い方によっては例えば辺野古への冷笑を誘導することも出来てしまうわけで、そういう意味でウエストランドの優勝っていうのはすごく令和4年を感じるし、優勝すべくしてしたんだろうなという感もあるし、そして繰り返すけど、お笑いってやっぱり怖いなと思ったのだった。怖いからこんなに好きなんだよなって。

以下は箇条書きで。

・上で書いたような、「共感の笑い」に対する不信感、とは言わないまでも、伝わりづらいことを恐れない態度というのは今後も鍵になってくるんじゃないかと思う。特に令和ロマンが「USJに下着で行く人」や「MOROHA」といったかなり狭いワードを使ったあの漫才で敗者復活戦の2位になったというのは、来年の準々決勝以降の審査にかなり影響を与えそうな気がする。
・漫才が全組面白いというのはもう当然そうなのだが、審査員、特に松本人志のボケの入ったコメントに対して一切ビビらずにやり返す組が何組もいて、そこに時代の進みを感じるとともにちょっと感動してしまった。特にカベポスター、真空ジェシカ、ダイヤモンド。かっこよかったです。
・千鳥MCの打ち上げでのヨネダ2000誠さん、「『M-1』は『もち-1』の略だと思ってた」の流れから、1組目のカベポスターを見て「メガネがアリなんて聞いてなかった」と思ったっていうウソ、めちゃめちゃ笑った。全般的にナメてる感じが石野卓球をちょっと思わせて、ちょっと調べたら親御さんの影響でYMOから入ってテクノが好きということで、好きな音楽と芸風ってどれぐらい親和性あるんだろうなということを思ったりもした。「テクノ大好き芸人」とか、どこかラジオでやってほしい。
・男性ブランコの音符運びがバカリズムの都道府県の持ち方を思わせるというのは博多大吉さんも指摘していて自分もそこは気になったんだけど、と同時に、似ているものが前例としてあったら絶対に笑えないのかっていうとそんなこともないよなとは思う。言われてみればあれと似てるけど笑いのほうが先に来る、ということはよくあるわけで。ただ、そこで笑いよりもあれと似てるが先に来てしまうのってどういう場合によるんだろう、というのは自分への宿題としてメモ。
・あまりネガティブなことを書くのもどうかと思いつつそれでもやはり、さや香の2本目、「モヒカンは坊主」(石井)に対しての「価値観が違う方でした。海外の方です」(新山)っていうのはかなりないのではと思ってしまった。特にこの漫才は価値観の相違をまさにネタの主軸に置いているわけで、つまり似ている立場の二人であっても価値観が大きく異なることがあるというそのおかしみをまさに描いているのだから、そこでの「海外の方です」という言葉は観客からの聞かれ方として強すぎるし、これだけお互いの言葉尻を捕まえようとしている二人なのだからこの新山さんの(短絡的な)結論は石井さんが捕まえないとおかしいのではないか。少なくともこの漫才の中でするっと出てきて良い言葉ではないのではないかと、自分はどうしても思ってしまう。

最後に、M-1の振り返り系のコンテンツは有料無料含めて本当に山ほどある中、群を抜いて素晴らしいのが「月曜The Night」だというのは間違いないので、来年以降も特番として復活してくれることを心から願ってやまない。ウエストランドの漫才への小沢さんの感想「友達だなーと思って観てたらじーんとしちゃって」が今年のコメント-1グランプリでした。

「アイドル版M-1」(寺田寛明)

この記事、すごく面白かったです。自分もこのネタ(アイデア)で書きたい、と思わせてくれる良記事。

もしも、「アイドル版M-1」があったら? “ライブアイドル大好き芸人”寺田寛明が完全妄想! 「志らくさんが高得点つけるグループ」「ジャルジャルの『国名分けっこ』くらい中毒性のある楽曲」 | 集英社オンライン | 毎日が、あたらしい

自分はR-1でしか知らないので寺田寛明さんのことを「塾講師」「バカリズムのファン」ぐらいしかイメージがなかったのだけど、この記事でアイドル好きだということを知った。これって実はすごく大きいと思っていて、「塾講師」かつ「バカリズムのファン」というキャラクターがやりそうなネタってまあまあ予想がついてしまう、ということは逆に言うとその予想と大きく異なる方向性のネタってかなりウケづらくなる(少なくとも例えばアイドルに絡んだネタをやるなら「塾講師なのにアイドル好きなんです」みたいな一言を頭にいれてほしいという観客の欲求が発生する)けど、ここに「アイドル好き」というのが前提としてあると、かなりネタの自由度が高くなる。少なくとも賞レースやテレビのネタ番組では。

今年のウエストランドや最近だとヒコロヒーもそうだけど、この人が大体どういう人なのかっていうのが前提としてあるかどうかっていうのは、少なくとも賞レースやあるいは「売れる」という点においては大きいんだと思う。良くも悪くも。よく分からないもの、っていうのが自分は好きだしそういうのをずっと手に取ってきたし、よく分からない人、になろうと思ってずっと頑張ってきたんだけど、本当に需要ないんだよな、よく分からないものとかよく分からない人って。大抵の人は何を言うかより誰が言うかのほうしか見ていないので。そう考えると、ネタをちゃんと作るっていうのも大事だけど、自分がどういう人間なのかを日々周知させていくっていうのは同じくらい大事なことで、そういう意味でこの寺田寛明さんの記事はすごく勉強になりました。

2022-2023

おそらく今年はこのnoteが最後の更新です。今年もお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。2022年は個人的には二度と思い出したくないくらい深刻にしんどい時期もありましたが、わりと長いこと応援してくださっている方も何人かはいて、その方たちの存在は本当に励みになりました。ありがとうございます。こいつ面白くなくなったなと思ったらいつでも行っていただいて構いませんので、とは言えまだちょっと面白いかもなと思っていただいている限りは、多少は気にかけていただければありがたいです。

来年は何本かコント書けたら良いなと思います、というか書きますので、よろしくお願いします。

そのほか(箇条書きで)

・公園で見たジャグリング、失敗する前提で非常に難易度の高いネタに挑むというスタイルだったんだけど、それは芸人というよりはむしろアスリートに近いのではないかと思った。すごくないことをすごいと思わせるのが芸人であり、すごいことを本当にやるのはアスリートという分類であれば。
・「それゆけ!メッセンジャー」でのパラちゃんによるぎっしゃん評、「人の祭りやのにがーっと行って自分の祭りのようにふるまう人」っていうのが最高すぎた。いけずの天才。

ネット記事など

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(2022/12/18〜2022/12/25)

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