生存報告(2023/03/19)(ジンカーズ企画ライブ『プロト』、大崎洋『居場所。』、東京どんぐりボーイズ・トークライブ(その4))

ジンカーズ企画ライブ『プロト』

3/13、新宿Fu-。ジンカーズが久々にお笑いをやってくれるというので行ってきた。新ネタの初めての読み合わせを舞台上で見せる、という趣旨のライブで皆さん面白かったのだが、モダンタイムスのとしみつさんとエルシャラカーニのしろうさんの二人による奇跡的なまでに面白くならないやり取りが延々続くくだりがあまりにも面白すぎて体を折り曲げてしまった。マジで最高だった。

としみつさんが上、しろうさんが下という関係性で、としみつさんがしろうさんに「この中で何々(悪いこと)をしたのは誰なのか一人ずつ聞いてみろ」と命じる。しろうさんがその指示を聞いて舞台上の全員に一人ずつ聞いていき、全員がいいえと答える。結局最後まで何々(悪いこと)をした人が誰なのかは分からず、しろうさんがとしみつさんに困った顔を見せて、としみつさんが絶妙に弱々しい声で「なんだお前」と言う。という一連。

いわゆるスベリ笑いというのとも違っていて、面白くならなさが本当に絶妙というか、面白くなりそうさはあるんだけど絶対に面白くならないという。それがずっと続くものだから最後にはこれで笑っている自分のことも可笑しくなってしまうという。いやちょっと凄いものを観た。そしてこの面白さはたぶん配信では伝わらないんだろうなとも思う。最近はどうしても配信に手が伸びがちだけど、やっぱりライブ会場でしか出来ない笑いってあるんだなと改めて。

あとモダンタイムスはネタをエクセルで書いてそれをプリントアウトして練習してるっていう事実、意味の分からない凄みがあって最高でした。

大崎洋『居場所。』

著者は「三人目のダウンタウン」としても知られる吉本興業ホールディングス代表取締役会長。とは言えいわゆる業界裏話や芸人とのエピソードがページの多くを占めているわけではない。むしろ今年で70歳を迎える著者の人生哲学や仕事観が主に書かれているのだが、個人的にはむちゃくちゃ面白く読んだ。というかまあ、この半世紀近く吉本のど真ん中にい続けた人の人生哲学なんだから、そりゃ読み応えあるよなという。面白すぎる人生を送った人の人生哲学なんて面白くないわけがない。

個人的にはここ最近、精神疾患の予防としての認知行動療法やマインドフルネスについて勉強していたりもするのだが、その辺りでシンクロする部分も少なくなかった。「すること」ではなく「しないこと」を決めるという未来の設計方法もなるほどなあと。過去に関して「やれなかったこと」ではなく「やれたこと」を見つめるのが大事だというのは多くの精神療法の本に書かれているけど、未来に対して「しないこと」を決めるとその時点で「やれなかったこと」が原理的に減る(その時点で「やれなかったこと」ではなく「やらなかったこと」になるから)ので理屈として正しいよな、とか。

あとやっぱり、本格的にやばくなる前にケアをする、って大事なんだよなと。肉体に関してはそれってまあまあ常識というか、みんな気にして生きていくわけだけど、心に対してはわりとそうでもないところがあって。しんどくなってからどうにかするんじゃなくて、しんどくなる前に自分をケアしてあげる、っていうと大袈裟だけどそれこそ週何回か銭湯行くとかなじみの大衆居酒屋でカレーコロッケ食べるとかそんなんで良いんだけど、でもそれってすごい大事なんだよなと強く思う。特に40歳超えてからは。意外と人生まだ先あるぞっていう。あと肉体と一緒で精神の回復力も落ちてるから、重いのやっちゃうとなかなか戻れないんだよな。週一で軽くジョギングするとか、夜中にラーメン食べないとかぐらいの軽いノリで、ちょっと自分のメンタル気にしてあげるみたいなのはわりと大事なんだろうなと思う。

そういう意味で付箋貼るところも多かったけど、特に以下の一節は心にがっつりと響いてしまった。

そもそも風に舞い、漂うタンポポの綿毛には、綿毛なりの幸せがある気がします。「花になる」のが最終目的でなくてもいいんです。
ふらふら漂う綿毛はまだ何者でもないから、これから何者にだってなれます。そういう宙ぶらりんの自由さって、あるんじゃないでしょうか。
どこの土俵にも上がらず、どこにもしがみつかない。
(略)
たとえ芸人が漫才の道をあきらめても、人生の中で笑うことや笑わせることを続ければいい。ふわふわとしながら、でも”それぞれのやり方”で続けること、あきらめないことが大事だと思います。

自分も20年ぐらいどこかの誰かを笑わせるという仕事をずっとしてきて、それをやめて医学の道に進もうとしているわけで。それでも勿論笑うことや笑わせることを嫌いになったわけではないから、毎日後ろ髪をがっつり引っ張られてるし、悔しさとか後悔とか嫉妬とかの感情をおぼえなかった日はこの五年間ぐらいで一日もない。でもこの一節を読んで、背中を押してもらえたっていうとさすがに言い過ぎなんだけど、背中に手のひらを当ててもらったぐらいの感じはあった。悔しさとか後悔とか嫉妬とかを忘れて次に進めるってことではなくて、それはお笑いを好きでいる限り自分には出来ないことなんだけど、でももしかしたら、悔しさとか後悔とか嫉妬とかと一緒に暮らしていくことは出来るかもしれない。もうちょっとしんどくない形で。たぶんそのやり方は探せばどこかにあるんじゃないか、もしくは作ることが出来るんじゃないかって、そこまでは思えた。だからそれが見つかる日まで、もうちょっとふわふわしていて良いんじゃないかなと、そんなことを思った。

あと、読んでてこんなに「銭湯行きてえな」って思える本ってあんまり読んだことないので、BSよしもとさんかFANY Magazineさんは「大崎洋会長の日本全国銭湯めぐり」的な企画をやるべきだと思いました。真剣に。

東京どんぐりボーイズ・トークライブ(その4)

3/14、配信で視聴。出演は大谷ノブ彦(ダイノジ)、田崎健太(ノンフィクション作家)、立川談慶(真打)、アル北郷(多分70番目ぐらいのビートたけしの弟子)。配信は以下から。3月28日 23:59までアーカイブ視聴可能。

某師匠のすすきのエピソードが最高すぎるのでこれだけでも観る価値あるだろと自分なんかは思うんだけどそれはそれとして、九州に拠点を移すと先日発表したダイノジの大谷ノブ彦さんの話が聞けたのはとても良かった。この3年ぐらいの価値観の変化の話、独立したいというか何かに依存しない生き方をしたいという話、ファンを交えた打ち上げの席が待ち合わせや出会いの場所になっているという話など。大崎洋『居場所。』とも繋がる話があって、というかまあ2023年の日本に生きていたら良くも悪くも繋がらざるを得ないということなんだと思うけど、笑いながら共感する。

あと、同じ九州に今年になって活動拠点を移したTAJIRI選手が語っていることとも、色々と繋がっていると勝手に感じた。自分としては「(東京に対しての)地方」というよりはむしろ「(都市に対しての)地域」に良くも悪くも焦点が当たらざるを得ない時代に少なくともこの国はなっていくと思っていて、なので自分の医師としての専攻は地域医療になるんだろうなとか、そこでどう個人の特性を活かしていけるのかとか、そんなことばかり最近は考えている。

【九州プロレス】<TAJIRIインタビュー>プロレスラーになりたい若者に『世界に一番近いのは九州プロレス』と伝えたい | プロレスTODAY

そのほか(箇条書きで)

・『夜衝2』配信で。ラブレターズ溜口氏が演じる「ものまねパブの芸人さん」があまりにも秀逸で、鳥肌を立てながら笑い、自分が書いたコントをこんなすごい人に演ってもらってたんだなと感動してしまった。あの謎のスター感。溜口佑太朗の身長があと20センチ高かったら日本のショウビズ界の歴史は変わっていたはずだと真剣に思っている。
・”I am sorry but I am not sorry.”って言い回しを思いついた。申し訳ないですが反省していません。何かしらで使いたい。
・自分がある人のことを嫌いなのだとしても、だからと言ってその人の不幸を自分が望まないといけないかというとそんなことはない。感情に思考や行動を縛り付けるのは自分の首を絞めているのと同じだ。自分はあの人が嫌いだ。それだけで良い。

ネット記事など

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第9回 思い出の医師・看護師たち(1) – 晶文社スクラップブック

(2023/03/12〜2023/03/19)

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