第424回 < ウェアラブル端末の効用について >
最近のスマートウォッチの機能・性能の多様さには驚かされます。健康管理、スポーツの記録、決済、通信等の多様な機能自体も重宝しますが、高度なセンサー、正確な位置情報の記録、豊富なアプリ、長時間のバッテリー等のデバイスやソフトの高性能化によって、この数年でユーザーの満足度が大きく飛躍したように感じます。フォーチュンビジネスインサイトによれば、グローバルのウェアラブルの市場規模は2022年に932億ドルと評価されており、2015年の約80億ドルから10倍以上になっています。これは、当時の市場予測をはるかに上回るペースでの成長であり、2030年までには9000億ドルを超えて、更に10倍の成長が期待されているようです。
これまで、ウェアラブル端末の中ではスマートウォッチが市場の成長を牽引してきました。2022年時点で、ウェアラブルがどのような用途に使われているかの分布をみると、健康、フィットネス、決済、ファッションが過半を占めています。実際、私も睡眠の質や運動量等の健康、フィットネスの管理をスマートウォッチで行うようになってから、生活の質自体が多少向上したような印象を持っています。同じように感じるユーザーが急速に増加したことが市場の成長を牽引したのではないかと思います。また、デバイス自体の成長は技術進歩によって後押しされてきました。特に、MEMS(数mm以下の微小なチップ)の技術が高度化、小型化したことで、小型のウェアラブルに組み込まれる各種の機能、センサーの性能が向上したことが大きいようです。
コロナ禍では、外出や屋外フィットネス活動が制限されたため、一時的にスマートウォッチやフィットネストラッカーのようなデバイスの伸びが低迷しました。その一方で、逆に需要が伸び、今後も市場を牽引するデバイスとして、例えば仮想現実(バーチャル)領域で主にゲームを楽しむためのVRウェアラブルであるヘッドセットが登場しました。今後はゲーム以外の分野でもAR(拡張現実)の領域の整備が進むと考えられています。それにより、衣服、ベルト、靴などにデバイスが組み込まれるなど、様々な用途に対応する製品が登場することが考えられます。
スマートウォッチの健康管理機能を使うことで、どの程度自身の健康が改善したかは把握していませんが、これまで可視化できていなかった生活習慣を見直すきっかけになったと思います。また、私の使っているデバイスは充電なしでも1週間程度は利用できますが、将来的には継続利用時間も増えていくものと思われ、そうなれば利便性はさらに増します。残念ながら、ヘッドセットを使ってゲームを楽しむことはありませんが、善し悪しは別として、10代のころにこのようなデバイスやゲームが存在していれば、相当はまっていたように思います。1980年代から90年代にかけて、パーソナル・コンピュータが高度化したことで、ゲームしたさにプログラミングを学習し、2000年以降、インターネットの普及によってECでの買い物が一般化する等、ウェアラブル端末の高度化は確実に私たちの行動様式や生活様式に影響を与えるものです。
ウェアラブル端末そのものの進化や変化は、異なる業界の発展や変化に大きな影響をもたらすと考え、この変化を敏感に感じ取って私たちの投資運用の領域にも活かしていこうと考えています。
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