日記

珍しく姉としっかり酔うまで飲んで、いろんな話をした。

母方の祖父が死んだ時、わたしはよく泣いたらしい。
らしい、と言っても、「おじいちゃんが死んだ時あんたワンワン泣いてさぁ〜」という話は我が家での定番昔話になっていたので知っていたし、わたしも、おじいちゃんのことはあまり覚えてないけれど訃報を聞いた日のことはよく覚えているので新情報というわけではない。

おじいちゃんは、確か72歳かそこらで、おばあちゃんや叔父叔母、当時中学生?の従兄弟と一緒に夕飯を食べた後、テレビを見ながらデザートの饅頭を食べ、歯を磨いて床について死んだ。脳卒中かなにかで即死だったらしい。
笑っちゃうくらい良い死に方である。

わたしはそれを家にかかってきた電話で知った。
夕飯時、母親が出て、電話口から漏れ出る叔母の声と母の応答で知った。
当時5歳だったわたしはその頃まだベビーチェアに座っていて(5歳でベビーチェア?と思うけど確かに座っていた)、あまりに急なことと未知の感情が怖くて泣いた。
ギャンギャン泣くわたしを見て、家族たちが笑っていたのを覚えている。
今思えば「自分より酔ってる人見ると酔い冷める」の法則であるが、当時もガキなりに「自分が泣いてるからみんな悲しまず笑えてるや」と思った記憶がある。このマセガキが。

それを見て、当時10歳の姉は「尊い涙だ」と思ったらしい。こいつも大概マセガキである。
まだベビーチェアに座っているようなガキ、おじいちゃんとの思い出といえば、彼が姉や従兄弟とオセロをするとき、まだルールのわからないわたしに「ここ」と指差した石をひっくり返す役を与えてくれていたことくらいのガキが、「知っている人と二度と会えない」という事実を認識して大きく泣いたことをとても尊く思ったらしい。

それを聞いた22歳のわたしはまた「なんて尊い」と思う。
ガキがガキの涙見て尊さを覚える。なんて綺麗な。
そしてそれは大人たちの泣き笑いのなかでひっそりと生まれた感情で、17年経って初めて言語化された。言葉にされずとも17年間覚えられていた。美しいでしょう。

今年のお盆こそはおばあちゃんちに帰れると思っていたのに台風でダメになってしまった。
おじいちゃん元気ですかね。おばあちゃんもよくやってますか。(おばあちゃんはおじいちゃんが死んだあとだいぶ落ち込んだけどなんだかんだ10年以上生き、ボケることもなく最後まで自分の足で歩いて、すごく可愛がっていた従兄弟たちに見守られながら自宅で死んだ。夫婦揃って大往生でワロタ)

死後の世界とか信じちゃいないけどまあこういう話ぐらい伝わったら良いなと思う
どうかお達者で。若干一名将来が不透明な孫がいるかと思いますが、あんたらの孫ですからちゃんと饅頭食ってから死にますよ

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