キングオブコメディをみて
ジョーカーをみて、キングオブコメディのオマージュシーンがあるとのことで、この映画をみてみる。
ところどころで流れる
レイチャールズの曲が、心地よい。
マーシャの服や髪型がかわいかった。
レイチャールズのほかにも
ヴァン・モリソンとか
トーキングヘッズとかも。
収録曲としては
レイチャールズの
Come rain or come shineがすき。
映画のタイトルに
コメディ
とあるのに
まったく笑えない
という感想をどこかでみかけて
あ、そうそう、そう思った。
なんで笑えないか。
脚本、演出、デニーロの演技の妙。
妙というのは
絶妙
奇妙
など。
わたしたち鑑賞者はいったい何を見ているのか。
見させられているのか。
気持ちのざわつき。
芸能の世界(に限らず、何か)に憧れるある若者にはありがちの妄想エピソードのようにも思える。
オタク気質の痛い感じ。
恥ずかしさ、みじめさ、思い込み、非常識さ、そして狂気。
タクシードライバーのときも最後の20分が恐ろしかったが、
キングオブコメディも最後、別の恐ろしさ、信じられなさがあった。
クライマックス。
え?
本当に?
という腑に落ちないきもち。
できそこないの主人公が最後に何かを成し遂げる、ありがちのエピソード、になりきれない、
表面的にはハッピーエンドのようにみえるが
これは映画というフィクションである、とわかりきっているにも関わらず
デニーロ演じるパプキンの成功を
にわかに信じることができない。
この物語に没入しきることができないのはなぜか?
映画の中で
何が現実で
何が幻か。
そこが釈然としないからなのだと
「スコセッシによれば、パウエルの作品では現実と幻想は常に同一のものとして扱われ、幻想的なシーンも現実的に描かれていたという。スコセッシは本作の結末が現実であるか幻想であるかについて問われると回答を拒否したが、エンディングをめぐる論争はそれぞれの観客がどのように本作を観ているかを示すものであり、「幻想は現実よりも現実的なものだ」と話している」
を読んで
ようやく納得できたような気がする。
「幻想は現実よりも現実的なものだ」
今の私にはこの言葉は特におそろしさを感じる。
幻想とか何か。
現実とは何か。
現実的とはどういうことか。
生きていくなかで
どこに確かさを感じていけるのか。
地に足がついていない。つけられない。
何を信じればいいのか?
そういったおそろしさを感じる。
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