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青色クラブというバーチャルにある埃っぽい場所について(演出編)

こんばんは、藍上アオイです!
年の瀬、2023年も後少しですね。

前編の記事からだいぶ時間が空いてしましましたが後編記事です。

↑こちら前編記事です。長めです。と言いつつ後編も長いです。

今回の記事ではVRChatで毎月第一金曜日と第三金曜日に営業している「青色クラブ」のバージョン2.0の演出面について記録を残しておきたいと思います。2.0も来年には終わって消えるので備忘録的な感じです。前回触れたことについては端折ったりもう一回書いたりします。

以下で記載することは基本的にVRHMDの装着を前提に記述します。青色クラブはデスクトップの人でも楽しめるようにしていますが、VRの魅力に惹かれてはじめた場でもあるので演出面もその前提で考えています。

バーチャル空間における場づくり

いつもバーチャル空間における場作りについて考えながら青色クラブを構築しています。3D空間にはスタート時点ではただただ開かれた三次元空間のみ存在し、あとは何を作り何を置くか、どの順番で見せるか、何を意図してギミックを設置するか、人がそこにいるか、コミュニケーションをさせるかさせないかどうかで「様々な場」になると思っています。

色んな要素を織り交ぜて目指している場は「バーチャル上に存在する手触りのある居場所」です。

手触りと表現していますが、聴覚だったり嗅覚だったり…我々が現実で得た経験則に則った(たまにそれを敢えて外しつつ)まるでそこにあるような手触りのあるようなという意です。これは完全なフォトリアルな疑似現実をつくりたいということではなく、表現したいことにとって有用性の高い要素だけを現実の体験からピックアップして組み込んでいます。

これはあくまでも自分の理想とする居場所のイメージですが、手触りがあるからこそ、より居場所になれるかなみたいな感覚があります。ネタで青色クラブのことを地下駐車場の埃っぽい場所とよく言いますが、それもまあそのひとつです。記憶や体験にとって手触り感が大きな助けになるかなと。現実での居場所(お気に入りのカフェ・映画館・バーとか、昔よく遊んでた秘密基地やともだちの家、落ち着く実家とか)と同等にはなれないかもしれないけど、それに近い人生における居場所になれたらいいな、っていうのが一番の想いです。

青色クラブはなるべくポイントで狙った印象を持ってほしいので、ワールドにジョンしてからメインフロアまでの文脈(アプローチ)を意識して要素を散りばめています。

意識している演出も紹介していきたいと思います。使用アセットなんかも紹介していきたいのでぜひ参考にしていただけると嬉しいです。

基本的にジョインしてからメインフロアに進む順番で紹介していきます。

その前に…

自分は青色クラブをはじめたのをキッカケにBlenderを触るようになってまだまだ日々勉強している身です。

Unityはいまだによくわかってないです。何もわからんは嘘かもしれないですが、全然わからん助けて〜、くらいではあります。
間違ったことは書かないように気をつけますが、初心者がなんか足掻いてがんばってるね、くらいの目で見てもらえると嬉しいです。これからもがんばって勉強します!




ジョイン時のノイズ

青色クラブにジョインすると暗転してノイズがのってフェードアウトします。このエフェクトには世界設定上の理由があり、青色クラブの存在自体に関わる部分でゆくゆくのアップデートでもっと表現していきたいと思っています。

※一人目のジョイン以降がこのエフェクトが乗っていないことを最近指摘されました。Unityに詳しいフレンドさんに相談したけど原因はちょっとわからずじまいです。3.0では作り直すし表現も変えるからきっと大丈夫。

使っているアセットはこちら

眼の前に落ちる自分の影

公開当初、素通りされるかなと思っていたのですが結構色んな人に気がついてもらえて嬉しいです。ジョイン時のノイズが乗った後、目の前には自分のアバターの影が見えます。

上の投稿のような意図があります。青色クラブとしてはとても重要な演出でありツカミでもあります。ファーストビューはワールドの世界観を伝える上で大事だと思います。ジョイン場所は(意図した設計にしない限り)固定なのでVRChatに於いて最も能動的に働きかけることができる環境ストーリーテリングと言えそうです。

やってることとしては外からリアルタイムライトを当ててるだけです。また、光量(影の濃さ)は時間経過で変化します。雲が流れて日光が強くなったり弱くなったりしているってイメージですね。これは気づく人あんまりいないけどいいんですそれで。そういう機微がすきです。

置いてある電気事業者からのお知らせ

影が落ちている場所の側には電気事業者からのお知らせの紙があります。軌道エレベーターに関連することのようですね。こういうのをもっと散りばめると前のめりで楽しんでくれる参加者さんにはより一層世界観を楽しんでもらえそうです。強制するものでもないのでほどよいナラティブかなと思います。

建物の外の存在

目の前に自分の影があるということは背後に光源がある、と思う人は思うのではないでしょうか。影はプレイヤーに後ろを向かせるための布石でもあります。また、背後から環境音も聴こえてきます。踵を返し、扉を覗き込むと、外に世界があることがわかります。

どんより薄暗いこともわかります。鳥の声も聴こえます。見上げると鳥が飛んでます。

ただそれだけですが、影で自分の輪郭を知る⇒後ろに光源があり環境音が聞こえる⇒振り返る⇒覗き込んで外の世界の存在を認知⇒鳥の声も聞こえるから更に見上げる⇒鳥がいる + 世界観に関するお知らせの紙がある という一連のアクションを意図して設計しています。

大きな出来事ではないかもしれませんが、導入を作っている、のは確かです。

このあとになって欲しい気持ちは「この建物はなんなんだろう」「ここはどんな世界なんだろう」です。強制力のある流れではないですが、聞いた感じ狙った動きをしてくれている人が多いみたいで嬉しいです。

鳥で使っているシェーダーはnoribenさんのこちらです

真っ暗な階段

建物を進むとすぐに現れるのはエレベーターと階段です。

たまに見ているとここで行き詰まる人が意外と多いです。
一本道なので階段を降りるだけなのですが、こわいみたいです。
真っ暗なんでちょっとホラワなのかって思ってる人が意外といるみたいです。こわくないよ。

でも意図としてはこの下に何があるんだろうという気持になってほしいので明暗の差をつけています。更にここでメインフロアで流れている音楽の低音のみ微か…微かに聞こえるようになっています。気になっている地下にあるカフェだったりバーになかなか入れないみたいな経験があるのですが、その感じを出したいと思ってこのような演出になっています。

なぜかあるレーションのようなもの

フェンス裏にメタルギアソリッドシリーズでお馴染みのレーションのようなものが落ちています。

大好きなシリーズなのでただのパロディです。取っても回復しませんが「まずすぎる!」とか「まあまあだな」ってぜひ言ってください。

階段を降りていくと

階段を降りると暖色の照明が落ちています。

なんかこのあたりのケーブル配線だったり固定の仕方がリアルだと思うのですが、自分が普段そういうことやってたりしたからちょっとだけ拘りたかったってのもありますね。

寒色から暖色になるのは変化のリズムをつけたかったからです。ここもリアルタイムライトを多用しています。

地下二階に降りた先の廊下

階段を降り廊下を進んでいくと奥から聴こえる低音がどんどん大きくなっていきます。ライブハウスやクラブの階段/廊下みたい〜!いっちばん最初はこれがやりたくて青色クラブはじめたかもしれないです。

青色クラブの入り口

廊下を進むと曲がり角があります。
曲がり角って何があるか不安だったり期待しますよね。しないですか。
曲がり角を曲がると青色クラブのネオンサインとポスターとメッセージボードがあります。

ネオンサインは点滅してて、ジリジリ音が聴こえます。

ポスターは青色クラブのその日の営業のオリジナルポスターです。青色クラブは毎回フレンドさんにモデルをお願いして撮影させていただいています。今まで撮影させてくださったみなさん、ありがとうございます。青色クラブ3.0は別の表現にする可能性があります。

メッセージボードは青色クラブの簡単な説明と、自分の今日のひとことです。全然見なくていいのですが自分の近況とかそういうの書いてます。ポスターもそうですが毎回変わる要素って生感あってすきです。

あと、「今日は華青」看板もあります。華金ならぬ華青。詳しくは前回の記事にて。

また、投光器が設置してあるのですがここにもリアルタイムライト!影!好きだなおまえ。

バーエリアへ

ネオン下の扉をくぐるといよいよバーエリアです。このときリアルタイムライトがいい感じに自分の伸びた影を作ってくれます。

バーカウンターに自分が立ってるとき影が見えるようにしたかったんです。今入り口で撮影してるなーとか、お、誰かきた!とか。気配が欲しかった。

また、ここをくぐると一気に低音のボリュームがあがります。そういう調整をしています。最初に書いた「場」感は、細かいですがこういうところで空間を感じて物語を感じさせるところで作りたいなと思っています。

テーブルやカウンターのランタンの光

バー内はとても暗いです。また、テーブルやカウンターにはランタンが置いてあります。顔を近づけたり手を伸ばすと照らされます。

テーブルやソファーを置くだけではなく、暗くしてランタンを置くことでお話する空間を各所につくっています。光に人は集まりますもんね(いや、ハエとか動物も集まるんだけど)。光で照らされる範囲をすこし狭めにすることで、焚き火じゃないですが手をたまに伸ばしたりみたいな遊んで欲しいなと。話しながら何か意味のないことをするのって言語以外のコミュニケーションだったりしませんか。

ちなみのこのランタンの光量も1/N的に揺らいでる(1/Nではない)

ガラス越しに見える地下駐車場

ガラス越しにはメインフロアが見えます。

低音だけ聴こえるこのバーエリアでメインフロアをぼーっと眺めるもよし、お話するだけでもよし。このエリアがあることで青色クラブのゾーニングが自然と生まれて、グラデーションのある楽しみ方を作れてるかなと。

バーカウンター

最後までずっとではないですが前半はオーナーである藍上アオイがここでみなさんをお出迎えさせていただいております。ここで少し最近あったことを雑談したりしてから、そろそろ地下駐車場行くか〜って感じで散っていくのお見送りします。

初めてきた方をなるべくキャッチアップして一旦お声がけしたりも心がけてます。もちろんお話はいいやって方もいるので様子を眺めつつ。

ここにはいくつかの要素があります。

基底様相器

前回の記事でも紹介したので簡単に。
みなさんの家にありそうなコップやグラスやペットボトルの形をした様々な器を置いています。手元にある器に近しいものをお渡しすることで、なんとなく現実とのリンケージを取っています。

PCに映っているジョインリスト

アセットをPC画面のサイズにしてるだけです。
使っているアセットはこちら

フード&ドリンクメニューのQRコード

カウンターにQRコードがあります。
読み込むとここにいきます。
更新できてないけど3.0になるとき手を加えます。

隠し部屋

知ってましたか?暗くて見えないですがこんなところがあります。
個室みたいな感じですね。

ちなみにランタンはフレンドのねこみかんさんが作ってプレゼントしてくれました。

音の変化について

バーエリアを抜けてメインフロアである地下駐車場に向かうと、低音だけだったのが中高音も加わります。リバーブも掛かってます。

このあたりが一番のこだわりポイントなのですが、かなりのゴリ押しでやってます。Udon使えたらもっと良い方法があるのかもしれないのですが。

やっと(ゴリ押し)技術解説っぽいお話です。

AudioSourceを中心に円形であれば距離による音の変位をつけることは難しくないのですが、バーエリアと地下駐車場の間取り構成上あまり単純な話ではありませんでした。

バーエリアから地下駐車場(と音源)を一直線上にするのが一番簡単な解決方法だったのですが、バーエリアからガラス越しに眺めることができるようにしたかったので迂回するような間取りにしています。

少ない知識で検索したりして方法を探ったのですが、最終的に取った方法は上のポストの通りです。

音源の位置をとあるポイントで切り替えています。音源の位置が切り替わった際にボリュームやローパスの変位が同じであれば音源の位置が多少変化しても違和感ないだろうという判断でこの方法を取ってみました。結論違和感はないかなと思います。

このあたりはもっと深掘りしたいところではあるのですが、将来の自分に期待したいと思います。

音のエフェクトについて

特殊なことはしておらず、ローパスフィルターとリバーブを掛けています。

また、リバーブもプリセットの浴室なだけです。リバーブ具合はどうしてるって質問が結構多いのですがこれだけです。視覚情報に音の反響具合が適合していればその空間っぽさが出ると思います。色々リバーブを試した結果、「浴室」が一番あってました。空間の大きさや高さ次第なので色々試してみるといいかも…?

オーディオリンクの導入

オーディオリンクを使うと音の波長のデータを解析してワールドのライトやアバターギミックを動的に操作することができます。どの音域を拾うかは設定できるのですが、青色クラブでは低音を拾っています。

VCCになってからManagePackageで簡単に導入できるようになりましたね。

スクリーンの左右に設置しているライトはnoribenさんのビームライトシェーダーです。オーディオリンクに対応しているので使用させていただいております。


使っている動画プレイヤー

ここまで散々音のお話しをしてきましたが、青色クラブで使用している動画プレイヤーはiwasyncです。プレイリスト機能とかキュー機能とか多機能でとても助けられてます。親切なマニュアルもとても助かります。

モニターのLEDシェーダー

地下駐車場内には中央のスクリーンと左右のモニターがあるのですが、モニターは近づくとLEDのディティールが見えるようになります。


こちらもnoribenさんのシェーダーを使用させていただいております。

LTCGIを使って映像が環境を照らす

スクリーンやモニターに映った映像が地面や柱などを照らします。

こちらは最近だとお馴染みとLTCGIを使用させていただいております。セットアップにかなり手こずった記憶があります。

導入はnoribenさんのこちらの記事がとても参考になった。

地下駐車場のフロア

地下駐車場の空間全体のお話しです。

ア!ここにもリアルタイムライト!!
アバターの着地感があると一気に締まるなー(白目)

ちなみにリアルタイムライトばかりですが1Fとか階段降りた後の廊下とかはライトベイクです。もう少しいい感じに軽量化したいですね。

ちなみに車の輪留め、全部微妙にズレてたり回転したり、一部壊れてたりも。ただの機微です。

職人さんが手作業で設置したものだから、完全に揃ってることなんてないんだ!

地下駐車場内の中央はダンサーさんがよく踊ってくださっています。ダンサーさん専用ということではないのですが、ダンサーさんが遊びに来てくださるお陰で自然とそうなっています。ダンサーじゃなくったって音楽に酔いたくなったら中央に行ってゆらゆらしましょう。自分もよくやってます。

よく遊びに来てくれるすやみちゃん

逆に後方はダンサーさんをぼーっと眺めている人だったり、雑談してたり、お酒を飲んでたり、バーエリアや隠し部屋含め自然とゾーニングされてみなさんが各々好きな楽しみ方をしています。

くおんさんとしるきーさん!コンクリートで風邪ひかないでね!

ちなみに地下駐車場のとある場所に世界設定に関係する紙が落ちています。読みにくい場所にあるけどよかったら見つけてみてね。

埃を吸引する

地下駐車場内には埃のパーティクルが漂っています。よくある手法ではあるのですが、なんとなく埃っぽい鬱蒼とした雰囲気が加速されているんじゃないかなあと思います。みんなで埃を吸おう。

ライトベイクはBakeryのmonoSH

ワールド内のライトベイクはBakeryを使っています。monoSHモードでベイクしています。

monoSHモードについての説明はこちらの記事がとても参考になります。スペキュラの情報があるかないかでだいぶ質感が変わりますね。わかりやすい解説ありがとうございます。

オリジナル拡張メニュー

現在はVRCのアップデートの関係で表示されたりされなかったりしているのですが、フレンドのねこみかんさんに作っていただいた拡張メニューがあります。通常のメニューを開くとくっつく形で表示されて、現在流れている楽曲やアーティスト名、また、私の一言コメントが出てきます。今、改めてコードを組み直していただいていますので3.0では復活予定。

「青色」を「青色」でオーバーライド

最後となりましたが、一番開かれた演出はこれかなと思っています。日常の随所で登場する青という色を表す一般名詞の「青色」を、青色クラブの「青色」でオーバーライドしています。バーチャル世界の閉じた世界で完結しないで日常を侵食することで、青色クラブを少しだけ身近に感じる瞬間を作れているんじゃないかなと。青色という言葉を見たり発したときにちょっと思い浮かべて欲しい的な。

前回の記事でも書いた通り青色クラブの青色には物語上とても重要な意味があります。何を表す隠語かわかっても絶対に口に出さないでくださいね!


総まとめ

備忘録的な感じで細切れで記述させていただきました。ごっちゃまぜの部分も多いですが、青色クラブの演出意図や使用しているギミックなどの解説でした。目新しい革新的なギミックみたいなものはないのですが、「文脈」を意識した構成を目指しています。

普段なにかものづくりをするときに「文脈」「拡張」「共有」という3つのキーワードをいつも大切にしています。「拡張」や「共有」については前回の記事にも書いていますのでぜひ御覧ください。

3.0について

来年の2月に公開する予定だった新しいバージョンの青色クラブである「青色クラブ3.0」ですが、お仕事やプライベートでドタバタしていたので公開が怪しくなってきました。ごめんなさい。

本当は足並み揃えて二周年記念で公開したかったのですが、もう少しあとになりそうです。色々と考えていることがあるので今しばらくお待ちいただけると嬉しいです。

3.0は今回以上の「文脈」を考えていて、数年間かけて展開があるバージョンになると思うのでおたのしみに。なので忙しかったしわ寄せに焦らず時間を掛けて作りたいです。

また続報はXなどで投稿します。


時間が掛かってしまいましたが、前編・後編の長めのnote記事を読んでいただきありがとうございました。今後も何かしらnoteを書いていきたいなと思うので、よかったらフォローやスキをお願いします。励みになります。

2023年はありがとうございました。
来年もどうぞ宜しくお願いいたします。

最近アイコン変えました


Written by
藍上アオイ
https://twitter.com/aiue_aoi_


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